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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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93/142

第93話「全財産」


 鍛冶屋。

 熱気。

 鉄の匂い。

 グルガが腕を組む。

「で?」

「どんな刀が欲しい」

 アクア。

 少し考える。

 そして。

「偃月短刀」

 グルガ。

 片眉が上がる。

「ほぉ?」

 アクア。

 手で形を説明し始める。

「両手持ち」

「持ち手にガード付き」

「左手側の刃の裏はノコギリみたいにギザギザ」

 グルガ。

 ニヤニヤ。

「変態武器だな」

「忍者だからな」

「なるほど」

 アクア。

 さらに続ける。

「専用の鞘も欲しい」

「抜きやすく」

「頑丈で」

「軽く」

 グルガ。

 完全に職人の顔。

 ワクワクしていた。

「面白ぇ」

 そして。

 即答。

「金貨二十枚だな」

 静止。

 アクア。

「…………」

 ユウ。

「全財産!!」

 グルガ。

 鼻をほじりながら。

「手紙に書いてあったぞ」

「は?」

「“あぶく銭で金貨二十枚持ってる”ってな」

 アクア。

「え?」

 数秒後。

「服屋ぁぁぁぁ!!」

 グルガ。

 爆笑。

「グルだなぁ!」

 ユウ。

「グルガとグルか〜」

 グルガ。

 腹抱えて笑う。

「うまい!!」

 アクア。

「うまくねぇ!!」

 だが。

 欲しい。

 めちゃくちゃ欲しい。

 理想の武器。

 頭の中にずっとあった。

 アクア。

 ため息。

「……また稼げばいいか」

 ユウ。

「男前〜」

 グルガ。

 ニヤリ。

「毎度あり」

 金貨二十枚。

 全部消える。

 アクア。

 無一文。

 グルガが適当に紙を書く。

 受け取り表。

 ぐしゃぐしゃ文字。

 そして。

 なぜか。

 ミーちゃんへ渡す。

「ほれ」

 ミーちゃん。

 口にくわえる。

 アクアの肩へ。

 ぴょん。

 グルガ。

 指をさす。

「必ず猫ちゃんと取りに来いよ!」

 アクア。

「ミーちゃん前提なのかよ」

 グルガ。

「当然だ」

 ユウ。

 笑う。

「ミーちゃんの店だもんね」

 ミーちゃん。

「にゃー」

 満足げ。

 グルガは奥へ戻っていく。

 カン!

 カン!

 すでに鍛え始めていた。

 アクアたち。

 店を出る。

 雪。

 冷たい空気。

 ユウ。

「またお金なくなっちゃったね」

 アクア。

 遠い目。

「ゼロだな」

「宿代は?」

「お前」

 ユウ。

 ドヤ顔。

「まかせろ」

 アクア。

 複雑。

「やっぱヒモっぽい……」

 ユウ。

 笑う。

「結婚すれば解決」

「その話やめろ!」

 通行人がまた見る。

 アクア。

 咳払い。

「……一週間この街に滞在だな」

「何する?」

 アクア。

 少し考える。

 そして。

 ニヤリ。

「稼ぐか」

 ユウ。

 目が輝く。

「ダンジョン!?」

「かもな」

 そして。

 二人と一匹は。

 ギルドへ向かった。

 新しい依頼。

 新しい騒動。

 そして。

 新しい金稼ぎのために。


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