第93話「全財産」
鍛冶屋。
熱気。
鉄の匂い。
グルガが腕を組む。
「で?」
「どんな刀が欲しい」
アクア。
少し考える。
そして。
「偃月短刀」
グルガ。
片眉が上がる。
「ほぉ?」
アクア。
手で形を説明し始める。
「両手持ち」
「持ち手にガード付き」
「左手側の刃の裏はノコギリみたいにギザギザ」
グルガ。
ニヤニヤ。
「変態武器だな」
「忍者だからな」
「なるほど」
アクア。
さらに続ける。
「専用の鞘も欲しい」
「抜きやすく」
「頑丈で」
「軽く」
グルガ。
完全に職人の顔。
ワクワクしていた。
「面白ぇ」
そして。
即答。
「金貨二十枚だな」
静止。
アクア。
「…………」
ユウ。
「全財産!!」
グルガ。
鼻をほじりながら。
「手紙に書いてあったぞ」
「は?」
「“あぶく銭で金貨二十枚持ってる”ってな」
アクア。
「え?」
数秒後。
「服屋ぁぁぁぁ!!」
グルガ。
爆笑。
「グルだなぁ!」
ユウ。
「グルガとグルか〜」
グルガ。
腹抱えて笑う。
「うまい!!」
アクア。
「うまくねぇ!!」
だが。
欲しい。
めちゃくちゃ欲しい。
理想の武器。
頭の中にずっとあった。
アクア。
ため息。
「……また稼げばいいか」
ユウ。
「男前〜」
グルガ。
ニヤリ。
「毎度あり」
金貨二十枚。
全部消える。
アクア。
無一文。
グルガが適当に紙を書く。
受け取り表。
ぐしゃぐしゃ文字。
そして。
なぜか。
ミーちゃんへ渡す。
「ほれ」
ミーちゃん。
口にくわえる。
アクアの肩へ。
ぴょん。
グルガ。
指をさす。
「必ず猫ちゃんと取りに来いよ!」
アクア。
「ミーちゃん前提なのかよ」
グルガ。
「当然だ」
ユウ。
笑う。
「ミーちゃんの店だもんね」
ミーちゃん。
「にゃー」
満足げ。
グルガは奥へ戻っていく。
カン!
カン!
すでに鍛え始めていた。
アクアたち。
店を出る。
雪。
冷たい空気。
ユウ。
「またお金なくなっちゃったね」
アクア。
遠い目。
「ゼロだな」
「宿代は?」
「お前」
ユウ。
ドヤ顔。
「まかせろ」
アクア。
複雑。
「やっぱヒモっぽい……」
ユウ。
笑う。
「結婚すれば解決」
「その話やめろ!」
通行人がまた見る。
アクア。
咳払い。
「……一週間この街に滞在だな」
「何する?」
アクア。
少し考える。
そして。
ニヤリ。
「稼ぐか」
ユウ。
目が輝く。
「ダンジョン!?」
「かもな」
そして。
二人と一匹は。
ギルドへ向かった。
新しい依頼。
新しい騒動。
そして。
新しい金稼ぎのために。




