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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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89/141

第89話「ヒモと結婚」

 雪の中。

 馬車が街へ入る。

 中継の街。

 北へ向かう旅人や商人が集まる場所だった。

 人。

 馬車。

 露店。

 かなり賑わっている。

 ユウが窓から顔を出す。

「わぁ〜!」

 アクアも周囲を見る。

「結構でかいな」

 豪華な馬車。

 ユニコーン二頭。

 当然。

 めちゃくちゃ目立つ。

 通行人がざわつく。

「あの馬……ユニコーンか?」

「貴族か?」

「いや冒険者か?」

 アクア。

 少し居心地悪そう。

 宿屋へ向かう。

 かなり大きい宿。

 馬房付き。

 店主が外へ出てきた。

 ユニコーンを見て固まる。

「……え?」

 ユウが笑顔。

「泊まりたいです!」

 数分後。

 馬車を預ける。

 ユニコーンたちは高級馬房へ。

 干し草。

 暖房付き。

 超VIP待遇。

 宿へ入る。

 だが。

 問題。

 店主が申し訳なさそうに言う。

「すみません……」

「ん?」

「今夜かなり混んでまして」

 嫌な予感。

「部屋が一つしか空いてないんです」

 アクア。

 硬直。

 ユウ。

 即答。

「それで!」

 アクアが振り向く。

「え?」

 ユウ。

 当然の顔。

「別に問題ないよ?」

 アクア。

 問題しかない。

 だが。

 ユウはそのまま料金を払う。

 金貨。

 チャリン。

 宿屋の主人の顔が引きつる。

「き、金貨……!?」

 アクア。

 その横で。

 なんとも言えない顔。

 部屋へ向かう途中。

 ボソッと言う。

「なんか嫌だな……」

 ユウが首を傾げる。

「何が?」

「ヒモみたいで」

「ヒモ?」

 アクアが頭をかく。

「いや俺お金ないだろ」

 ユウ。

「あー」

「これから毎回ユウに払ってもらうとなると……」

 視線を逸らす。

「女の子に養ってもらってるみたいで恥ずかしいんだ」

 ユウ。

 数秒考える。

 そして。

「いいじゃん別に」

 アクア。

「世間的にあまり褒められたものじゃないんだ」

 ユウ。

 きょとん。

「じゃあさ」

「ん?」

「結婚する?」

 アクア。

 停止。

「……は?」

 ユウ。

 真顔。

「結婚したら普通じゃない?」

 アクア。

 顔が真っ赤。

「なっ……なんでそうなる!?」

 ユウ。

「だって夫婦ならお金共有だよ?」

 アクア。

 脳内大混乱。

 結婚。

 夫婦。

 一緒に暮らす。

 豪邸。

 温泉。

 裸。

 もっこり。

「うわぁぁぁ!!」

 頭を抱える。

 ユウが驚く。

「どうしたの!?」

 アクア。

 心の中。

(いやいやいや!!)

(まだそんな歳じゃない!!)

 アクア十六歳。

 ユウ十三歳。

 若すぎる。

 犯罪感。

 でも。

 貴族社会では十二歳くらいで婚約も普通。

 ぐるぐる。

 ぐるぐる。

 脳がバグる。

 ユウが覗き込む。

「嫌?」

 アクア。

 慌てる。

「い、嫌とかじゃなくてだな!」

「?」

「まだ早い!!」

 ユウ。

 納得したような顔。

「そっか」

 アクア。

 ほっとする。

 だが。

 ユウ。

 続ける。

「じゃあ大人になったら?」

 アクア。

 再起動停止。

「…………」

 真っ赤。

 完全フリーズ。

 ユウが笑う。

「アクア顔赤い」

「うるさい……」

 そこへ。

 ミーちゃん。

「にゃー」

 アクアの肩へ飛び乗る。

 そして。

 なぜか。

 慰めるように頬を舐めた。


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