第89話「ヒモと結婚」
雪の中。
馬車が街へ入る。
中継の街。
北へ向かう旅人や商人が集まる場所だった。
人。
馬車。
露店。
かなり賑わっている。
ユウが窓から顔を出す。
「わぁ〜!」
アクアも周囲を見る。
「結構でかいな」
豪華な馬車。
ユニコーン二頭。
当然。
めちゃくちゃ目立つ。
通行人がざわつく。
「あの馬……ユニコーンか?」
「貴族か?」
「いや冒険者か?」
アクア。
少し居心地悪そう。
宿屋へ向かう。
かなり大きい宿。
馬房付き。
店主が外へ出てきた。
ユニコーンを見て固まる。
「……え?」
ユウが笑顔。
「泊まりたいです!」
数分後。
馬車を預ける。
ユニコーンたちは高級馬房へ。
干し草。
暖房付き。
超VIP待遇。
宿へ入る。
だが。
問題。
店主が申し訳なさそうに言う。
「すみません……」
「ん?」
「今夜かなり混んでまして」
嫌な予感。
「部屋が一つしか空いてないんです」
アクア。
硬直。
ユウ。
即答。
「それで!」
アクアが振り向く。
「え?」
ユウ。
当然の顔。
「別に問題ないよ?」
アクア。
問題しかない。
だが。
ユウはそのまま料金を払う。
金貨。
チャリン。
宿屋の主人の顔が引きつる。
「き、金貨……!?」
アクア。
その横で。
なんとも言えない顔。
部屋へ向かう途中。
ボソッと言う。
「なんか嫌だな……」
ユウが首を傾げる。
「何が?」
「ヒモみたいで」
「ヒモ?」
アクアが頭をかく。
「いや俺お金ないだろ」
ユウ。
「あー」
「これから毎回ユウに払ってもらうとなると……」
視線を逸らす。
「女の子に養ってもらってるみたいで恥ずかしいんだ」
ユウ。
数秒考える。
そして。
「いいじゃん別に」
アクア。
「世間的にあまり褒められたものじゃないんだ」
ユウ。
きょとん。
「じゃあさ」
「ん?」
「結婚する?」
アクア。
停止。
「……は?」
ユウ。
真顔。
「結婚したら普通じゃない?」
アクア。
顔が真っ赤。
「なっ……なんでそうなる!?」
ユウ。
「だって夫婦ならお金共有だよ?」
アクア。
脳内大混乱。
結婚。
夫婦。
一緒に暮らす。
豪邸。
温泉。
裸。
もっこり。
「うわぁぁぁ!!」
頭を抱える。
ユウが驚く。
「どうしたの!?」
アクア。
心の中。
(いやいやいや!!)
(まだそんな歳じゃない!!)
アクア十六歳。
ユウ十三歳。
若すぎる。
犯罪感。
でも。
貴族社会では十二歳くらいで婚約も普通。
ぐるぐる。
ぐるぐる。
脳がバグる。
ユウが覗き込む。
「嫌?」
アクア。
慌てる。
「い、嫌とかじゃなくてだな!」
「?」
「まだ早い!!」
ユウ。
納得したような顔。
「そっか」
アクア。
ほっとする。
だが。
ユウ。
続ける。
「じゃあ大人になったら?」
アクア。
再起動停止。
「…………」
真っ赤。
完全フリーズ。
ユウが笑う。
「アクア顔赤い」
「うるさい……」
そこへ。
ミーちゃん。
「にゃー」
アクアの肩へ飛び乗る。
そして。
なぜか。
慰めるように頬を舐めた。




