第86話「雪と温泉」
空から。
白いものが落ちてきた。
ひらひら。
パラパラ。
「……ん?」
アクアが手を伸ばす。
白。
冷たい。
手の上で溶けた。
「うおっ」
ユウも空を見上げる。
「これが雪?」
また一枚。
鼻に乗る。
冷たい。
二人同時に笑った。
「すげぇ!」
馬車を止める。
地面。
うっすら白い。
アクアが雪をすくう。
「ふわふわだ」
口に入れる。
「冷たっ!」
ユウも真似する。
「味しない!」
完全に子供だった。
一方。
ミーちゃん。
熊の毛皮の上。
丸くなる。
「にゃぁ……」
寒いらしい。
ふかふか毛皮から動かない。
ユウが笑う。
「弱っ」
ミーちゃん。
「シャー!」
でも毛皮から出ない。
アクアが周囲を見る。
その時。
さらさら……
水音。
「川か?」
二人で歩く。
すぐ近く。
透明な川が流れていた。
アクア。
自分の服を見る。
返り血。
熊の血。
乾いて固まっている。
「洗うか」
だが。
川を見る。
寒そう。
ユウが先にしゃがむ。
手を入れる。
「あれ?」
「ん?」
「ぬるいよ」
アクアが疑う。
「嘘だ〜」
触る。
「……あれ?」
本当にぬるい。
雪降ってるのに。
なんで?
上流を見る。
湯気。
「お湯?」
二人で歩く。
すると。
川の一部。
白い湯気。
温泉だった。
「おぉぉ!!」
ユウ。
秒で服を脱ぎ始める。
「さむ〜!」
アクアが慌てる。
「早っ!」
ユウ。
裸のまま足を入れる。
「ちょうどいい〜!」
そのまま。
ざぶん。
「あ゛〜……」
完全におっさんみたいな声。
アクアが呆れる。
「女子がする声じゃないぞ」
ユウが笑う。
「おいでよ〜」
以前より。
アクアも少し慣れていた。
ため息。
「しょうがないな……」
服を脱ぐ。
返り血まみれの装備を川で洗う。
ゴシゴシ。
血が流れていく。
湯気。
雪。
静かな森。
すごく気持ちいい。
ユウが肩まで浸かっている。
肌。
白い。
綺麗。
髪が濡れている。
アクア。
思わず視線が行く。
「……」
慌てて逸らす。
見てない。
見てません。
完全に不自然。
ユウがニヤニヤ。
「どうしたの?」
「別に」
「顔赤いよ?」
「寒いだけだ」
雪降ってるから説得力はあった。
だが。
アクア。
下半身が大問題だった。
もっこり。
しまった。
これはヤバい。
絶対見せられない。
死守。
アクア。
川の浅い場所へ移動。
岩で隠す。
ユウが首を傾げる。
「なんでそんな隅っこ?」
「落ち着く」
「変なの」
ミーちゃんまで。
温泉の近くへ来る。
だが。
熱いのか。
前足だけ入れて。
「にゃっ!?」
飛び退く。
ユウが爆笑。
「かわい〜!」
ミーちゃん。
怒ってアクアの肩へ飛び乗る。
そして。
ぴたっ。
一番暖かい場所を確保した。
アクアが撫でる。
「お前賢いな」
その時。
ユウがじーっとアクアを見る。
「ねぇ」
「ん?」
「隠してるよね?」
アクア。
硬直。
「……何をだ」
ユウ。
ニヤァ。
「ふーん?」
雪が静かに降り続いていた。




