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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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86/87

第86話「雪と温泉」


 空から。

 白いものが落ちてきた。

 ひらひら。

 パラパラ。

「……ん?」

 アクアが手を伸ばす。

 白。

 冷たい。

 手の上で溶けた。

「うおっ」

 ユウも空を見上げる。

「これが雪?」

 また一枚。

 鼻に乗る。

 冷たい。

 二人同時に笑った。

「すげぇ!」

 馬車を止める。

 地面。

 うっすら白い。

 アクアが雪をすくう。

「ふわふわだ」

 口に入れる。

「冷たっ!」

 ユウも真似する。

「味しない!」

 完全に子供だった。

 一方。

 ミーちゃん。

 熊の毛皮の上。

 丸くなる。

「にゃぁ……」

 寒いらしい。

 ふかふか毛皮から動かない。

 ユウが笑う。

「弱っ」

 ミーちゃん。

「シャー!」

 でも毛皮から出ない。

 アクアが周囲を見る。

 その時。

 さらさら……

 水音。

「川か?」

 二人で歩く。

 すぐ近く。

 透明な川が流れていた。

 アクア。

 自分の服を見る。

 返り血。

 熊の血。

 乾いて固まっている。

「洗うか」

 だが。

 川を見る。

 寒そう。

 ユウが先にしゃがむ。

 手を入れる。

「あれ?」

「ん?」

「ぬるいよ」

 アクアが疑う。

「嘘だ〜」

 触る。

「……あれ?」

 本当にぬるい。

 雪降ってるのに。

 なんで?

 上流を見る。

 湯気。

「お湯?」

 二人で歩く。

 すると。

 川の一部。

 白い湯気。

 温泉だった。

「おぉぉ!!」

 ユウ。

 秒で服を脱ぎ始める。

「さむ〜!」

 アクアが慌てる。

「早っ!」

 ユウ。

 裸のまま足を入れる。

「ちょうどいい〜!」

 そのまま。

 ざぶん。

「あ゛〜……」

 完全におっさんみたいな声。

 アクアが呆れる。

「女子がする声じゃないぞ」

 ユウが笑う。

「おいでよ〜」

 以前より。

 アクアも少し慣れていた。

 ため息。

「しょうがないな……」

 服を脱ぐ。

 返り血まみれの装備を川で洗う。

 ゴシゴシ。

 血が流れていく。

 湯気。

 雪。

 静かな森。

 すごく気持ちいい。

 ユウが肩まで浸かっている。

 肌。

 白い。

 綺麗。

 髪が濡れている。

 アクア。

 思わず視線が行く。

「……」

 慌てて逸らす。

 見てない。

 見てません。

 完全に不自然。

 ユウがニヤニヤ。

「どうしたの?」

「別に」

「顔赤いよ?」

「寒いだけだ」

 雪降ってるから説得力はあった。

 だが。

 アクア。

 下半身が大問題だった。

 もっこり。

 しまった。

 これはヤバい。

 絶対見せられない。

 死守。

 アクア。

 川の浅い場所へ移動。

 岩で隠す。

 ユウが首を傾げる。

「なんでそんな隅っこ?」

「落ち着く」

「変なの」

 ミーちゃんまで。

 温泉の近くへ来る。

 だが。

 熱いのか。

 前足だけ入れて。

「にゃっ!?」

 飛び退く。

 ユウが爆笑。

「かわい〜!」

 ミーちゃん。

 怒ってアクアの肩へ飛び乗る。

 そして。

 ぴたっ。

 一番暖かい場所を確保した。

 アクアが撫でる。

「お前賢いな」

 その時。

 ユウがじーっとアクアを見る。

「ねぇ」

「ん?」

「隠してるよね?」

 アクア。

 硬直。

「……何をだ」

 ユウ。

 ニヤァ。

「ふーん?」

 雪が静かに降り続いていた。



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