第83話「森の王者」
焚火。
静かな夜。
黒猫は皿に顔を突っ込んでいた。
肉。
野菜。
必死に食べる。
ガツガツ。
小さい身体。
だが毛並みは綺麗だった。
漆黒。
夜に溶け込むような黒。
そして目だけが金色。
ユウがしゃがみ込む。
「かわいい〜」
黒猫が警戒しながら見る。
だが逃げない。
アクアが皿を置く。
「食べてな」
そう言って立ち上がる。
馬車へ向かう。
ユウがニヤニヤ。
「もう飼う気じゃん」
アクアが振り向かない。
「違う」
「名前つける?」
「……」
その時。
ユニコーンたちが強く唸った。
ヒヒィィィン!!
森。
奥。
メキメキメキ!!
木が折れる音。
重い足音。
ドォン。
ドォン。
アクアが刀を抜く。
焚火の光。
そこへ現れたのは――
巨大な熊。
いや。
化け物。
両前脚。
燃えている。
炎。
赤黒い毛並み。
熱気。
目は血走っていた。
ユウが驚く。
「あっ」
アクアも笑う。
「ファイヤーベアか」
だが。
でかい。
50階のボス。
その1.5倍。
肩の高さだけで二メートル以上。
完全に森の王者。
天然ものの野生。
しかも。
冬眠前。
超機嫌が悪い。
フゴォォォ……
熱風。
バーベキューの匂いを追って来たのだろう。
アクアが刀を肩に乗せる。
「なるほどな」
ユウが前へ出ようとする。
だが。
アクアが止める。
「次は俺の番な」
ユウが口を尖らせる。
「えー」
アクアが黒猫を見る。
「ミーちゃん頼むな」
ユウ。
数秒沈黙。
そして吹き出す。
「名前つけてるし!!」
アクアが顔をそらす。
「流れだ」
黒猫。
ミーちゃん。
肉を食べながら。
「にゃ」
完全に受け入れていた。
ファイヤーベアが咆哮。
ゴアァァァァァ!!
地面が震える。
熱風。
焚火が揺れる。
アクア。
笑う。
「でかいな」
次の瞬間。
ファイヤーベア突進。
ドドドドド!!
速い。
巨体なのに。
木をなぎ倒しながら来る。
だが。
アクアは動かない。
直前。
半歩。
避ける。
巨大な爪が鼻先を通過。
熱い。
アクアが感心する。
「おぉ」
そのまま。
刀の腹で。
ベアの頭を叩く。
ゴンッ!!
ファイヤーベア。
ぐらつく。
「硬っ」
アクアが笑う。
ファイヤーベア怒る。
炎。
前脚から爆発。
地面を焼く。
アクアが後ろへ跳ぶ。
そのまま木へ着地。
軽い。
忍者。
ファイヤーベアが木ごと薙ぎ払う。
バキィ!!
アクア。
空中回転。
さらに別の木へ。
ユウが完全に観戦モード。
「がんばれー」
ミーちゃんも。
「にゃー」
応援。
アクアが苦笑。
「気楽だなお前ら」
ファイヤーベアが火球を吐く。
ゴォッ!!
アクア。
木から落下。
避ける。
火球が森を焼く。
ドォォン!!
炎。
熱。
アクアが楽しそうに笑う。
「いいねぇ」
完全に遊んでいた。
ファイヤーベア。
再び突進。
アクア。
今度は真正面。
避けない。
刀を構える。
「力比べするか」
ガァァァ!!
巨大な爪。
振り下ろし。
その瞬間。
アクア。
抜刀。
銀閃。
ズバァン!!
衝撃。
一瞬静止。
そして。
ファイヤーベアの右前脚が宙を舞った。
血。
炎。
巨体がバランスを崩す。
ゴォォォ!?
アクアが笑う。
「ほら」
刀を肩に乗せる。
「まだ遊べるぞ?」
ファイヤーベア。
完全に怒り狂った。
森中に響く咆哮。
だが。
アクアの目も。
戦いを楽しむ獣の目になっていた。




