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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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83/86

第83話「森の王者」


 焚火。

 静かな夜。

 黒猫は皿に顔を突っ込んでいた。

 肉。

 野菜。

 必死に食べる。

 ガツガツ。

 小さい身体。

 だが毛並みは綺麗だった。

 漆黒。

 夜に溶け込むような黒。

 そして目だけが金色。

 ユウがしゃがみ込む。

「かわいい〜」

 黒猫が警戒しながら見る。

 だが逃げない。

 アクアが皿を置く。

「食べてな」

 そう言って立ち上がる。

 馬車へ向かう。

 ユウがニヤニヤ。

「もう飼う気じゃん」

 アクアが振り向かない。

「違う」

「名前つける?」

「……」

 その時。

 ユニコーンたちが強く唸った。

 ヒヒィィィン!!

 森。

 奥。

 メキメキメキ!!

 木が折れる音。

 重い足音。

 ドォン。

 ドォン。

 アクアが刀を抜く。

 焚火の光。

 そこへ現れたのは――

 巨大な熊。

 いや。

 化け物。

 両前脚。

 燃えている。

 炎。

 赤黒い毛並み。

 熱気。

 目は血走っていた。

 ユウが驚く。

「あっ」

 アクアも笑う。

「ファイヤーベアか」

 だが。

 でかい。

 50階のボス。

 その1.5倍。

 肩の高さだけで二メートル以上。

 完全に森の王者。

 天然ものの野生。

 しかも。

 冬眠前。

 超機嫌が悪い。

 フゴォォォ……

 熱風。

 バーベキューの匂いを追って来たのだろう。

 アクアが刀を肩に乗せる。

「なるほどな」

 ユウが前へ出ようとする。

 だが。

 アクアが止める。

「次は俺の番な」

 ユウが口を尖らせる。

「えー」

 アクアが黒猫を見る。

「ミーちゃん頼むな」

 ユウ。

 数秒沈黙。

 そして吹き出す。

「名前つけてるし!!」

 アクアが顔をそらす。

「流れだ」

 黒猫。

 ミーちゃん。

 肉を食べながら。

「にゃ」

 完全に受け入れていた。

 ファイヤーベアが咆哮。

 ゴアァァァァァ!!

 地面が震える。

 熱風。

 焚火が揺れる。

 アクア。

 笑う。

「でかいな」

 次の瞬間。

 ファイヤーベア突進。

 ドドドドド!!

 速い。

 巨体なのに。

 木をなぎ倒しながら来る。

 だが。

 アクアは動かない。

 直前。

 半歩。

 避ける。

 巨大な爪が鼻先を通過。

 熱い。

 アクアが感心する。

「おぉ」

 そのまま。

 刀の腹で。

 ベアの頭を叩く。

 ゴンッ!!

 ファイヤーベア。

 ぐらつく。

「硬っ」

 アクアが笑う。

 ファイヤーベア怒る。

 炎。

 前脚から爆発。

 地面を焼く。

 アクアが後ろへ跳ぶ。

 そのまま木へ着地。

 軽い。

 忍者。

 ファイヤーベアが木ごと薙ぎ払う。

 バキィ!!

 アクア。

 空中回転。

 さらに別の木へ。

 ユウが完全に観戦モード。

「がんばれー」

 ミーちゃんも。

「にゃー」

 応援。

 アクアが苦笑。

「気楽だなお前ら」

 ファイヤーベアが火球を吐く。

 ゴォッ!!

 アクア。

 木から落下。

 避ける。

 火球が森を焼く。

 ドォォン!!

 炎。

 熱。

 アクアが楽しそうに笑う。

「いいねぇ」

 完全に遊んでいた。

 ファイヤーベア。

 再び突進。

 アクア。

 今度は真正面。

 避けない。

 刀を構える。

「力比べするか」

 ガァァァ!!

 巨大な爪。

 振り下ろし。

 その瞬間。

 アクア。

 抜刀。

 銀閃。

 ズバァン!!

 衝撃。

 一瞬静止。

 そして。

 ファイヤーベアの右前脚が宙を舞った。

 血。

 炎。

 巨体がバランスを崩す。

 ゴォォォ!?

 アクアが笑う。

「ほら」

 刀を肩に乗せる。

「まだ遊べるぞ?」

 ファイヤーベア。

 完全に怒り狂った。

 森中に響く咆哮。

 だが。

 アクアの目も。

 戦いを楽しむ獣の目になっていた。



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