第82話「焚火と狼」
焚火。
肉の香り。
静かな夜。
その時だった。
ガサガサッ!!
草むらから何かが飛び出す。
「ん?」
小さい影。
一直線。
こちらへ走ってくる。
子猫だった。
漆黒の黒猫。
小さい。
痩せている。
「にゃぁ!!」
必死。
逃げている。
だが。
その後ろ。
ドドドドド!!
巨大な影。
狼。
一頭。
二頭。
三頭。
全部で八頭。
目が赤い。
牙からよだれ。
完全に獲物を狙う目だった。
ユウが立ち上がる。
「わぁ……」
アクアも立ち上がる。
子猫がこちらを見る。
助けを求める目。
必死。
アクアがしゃがむ。
「よしよし」
抱き上げる。
軽い。
ガリガリ。
相当腹を空かせていた。
そのまま頭へ乗せる。
子猫が震えながらしがみつく。
「見てろ」
アクアが笑う。
「蹴散らしてやる」
狼たちが広がる。
囲む。
低い唸り声。
グルルル……
ユウが周囲を見る。
「あれ?」
「ん?」
「刀、馬車じゃん」
アクアも気づく。
「あ」
完全素手。
沈黙。
狼たちが一歩近づく。
ユウがニヤッと笑う。
「まぁいっか」
一頭。
飛びかかる。
速い。
だが。
ユウ。
軽く半歩。
避ける。
狼が空振る。
その首を。
掴む。
「えい」
ブンッ!!
狼が回転。
仲間に激突。
二頭まとめて吹っ飛ぶ。
「キャイン!?」
アクアの方にも来る。
左右から二頭。
アクアが息を吐く。
「はぁ」
片方の牙。
紙一重。
避ける。
そのまま顔面に拳。
ゴッ!!
狼が地面を転がる。
もう一頭。
背後から飛ぶ。
アクア。
振り向かない。
後ろ回し蹴り。
ドガァッ!!
狼が木に刺さる。
子猫。
頭の上で。
「にゃっ!?」
完全に目が点。
ユウが楽しそうに笑う。
「犬だー!」
「狼な」
さらに三頭。
同時。
連携。
左右。
正面。
アクアが目を細める。
「ちょっとは頭いいな」
ユウが飛び込む。
「じゃあ私こっち!」
空中回転。
狼の頭を踏む。
グシャッ!!
その反動で次へ。
速い。
軽い。
完全に遊んでいた。
アクアの方。
狼が飛びつく。
アクア。
受け止める。
「重っ」
そのまま地面へ叩きつける。
ドォン!!
土煙。
最後の狼。
完全にビビる。
後退。
耳が寝ている。
ユウが近づく。
「まだやる?」
狼。
ブルッ。
そして。
全力逃走。
他の狼たちも慌てて逃げていく。
静寂。
焚火の音だけが残る。
アクアが頭を見る。
子猫。
完全に固まっていた。
「終わったぞ」
子猫。
ぷるぷる。
そして。
アクアの頭から肩へ。
さらに首元へ。
ぴたっ。
完全に懐いた。
ユウが笑う。
「気に入られてる」
アクアが困る。
「いや困る」
子猫。
ゴロゴロ。
喉を鳴らす。
ユウが覗き込む。
「飼う?」
アクア。
即答。
「旅だぞ?」
子猫。
にゃあ。
見上げる。
アクア。
目をそらす。
「……」
ユウがニヤニヤ。
「もう負けてる」
アクアが焚火へ戻る。
「とりあえず飯だけやる」
肉を少しちぎる。
子猫。
ガツガツ食べ始めた。
よほど腹が減っていたらしい。
アクアが呟く。
「どこから来たんだお前」
その時。
ユニコーンたちが突然。
森の奥を見て唸った。
ヒヒィィン……
空気が変わる。
アクアとユウ。
同時に視線を向ける。
暗闇。
その奥。
今度は。
狼より遥かに大きな“何か”が動いた。




