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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第81話「謎調味料」


 夜。

 草原。

 静かな風。

 空には星。

 豪華な馬車の横で、アクアは薪を組んでいた。

 カチッ。

 火打石。

 パチパチと炎が広がる。

 ユウがしゃがみ込む。

「初めてだね」

「ん?」

「野営」

 アクアが笑う。

「そうだな」

 鉄の網を置く。

 ジュゥゥ……

 生肉。

 脂が弾ける。

 さらに野菜。

 ピーマン。

 ジャガイモ。

 ニンジン。

 香りが広がる。

 ユウのお腹が鳴った。

「はやく!」

「待て待て」

 アクアが懐を探る。

 一本の小瓶。

 黄金色。

 トロッとしている。

 ユウが即反応。

「なにそれ!?」

 アクアが少し得意げに言う。

「ダンジョンの冷蔵箱にあったやつだ」

「持ってきてたの!?」

「あぁ。一本だけな」

 フタを開ける。

 その瞬間。

 芳醇な香り。

 甘い。

 だがスパイス感もある。

 肉の香りと混ざる。

 ユウの目が完全に輝く。

「それ絶対やばいやつ!」

 アクアが肉へ垂らす。

 ジュワァァァ……

 煙。

 香りが爆発。

 二人同時に。

「「……っ!!」」

 肉を食べる。

 最初。

 甘味。

 その直後。

 ピリ辛。

 さらに。

 濃い旨味。

 肉汁。

 香辛料。

 全部が混ざる。

 噛むたび。

 旨味が増える。

 アクアが思わず言う。

「旨い!」

 ユウも叫ぶ。

「おいしい!!」

 止まらない。

 さらに野菜。

 ピーマン。

 ジャガイモ。

 ニンジン。

 全部合う。

 特にジャガイモ。

 ホクホク。

 そこへ濃厚な旨味。

 ユウが感動する。

「これ最強!!」

 アクアも頷く。

「ダンジョン飯レベル高すぎるだろ」

 ユウが小瓶を見る。

「これ一本しかないの?」

「あぁ」

 アクアが中を確認する。

「あと一回分だな」

 ユウが真顔。

「それ大事ね」

 アクアも真顔。

「あぁ」

 ユウが拳を握る。

「大事な時に使おう!」

「オウ!」

 妙に熱い握手。

 その後。

 二人は無言で食べ続けた。

 夜は更ける。

 食後。

 焚火。

 パチパチ。

 アクアが地図を広げる。

 ユウが隣から覗く。

「今どこ?」

 アクアが指をさす。

「この辺だな」

 ユウが目を丸くする。

「え、もう?」

 ざっくり。

 全体の十分の一。

 アクアも驚いていた。

「速いな」

 空を見る。

「さすがユニコーンだ」

 ユウが笑う。

「え?二ヶ月かかるんじゃなかった?」

 アクアが肩をすくめる。

「それだけ速いってことだ」

 少し計算する。

「この分だと……十日くらいで着くぞ」

 ユウが吹き出す。

「速すぎ!」

 ユニコーンたちは少し離れた場所で草を食べている。

 優雅。

 だが。

 時折。

 森の奥を見る。

 アクアが気づく。

「……?」

 ユウが聞く。

「どうしたの?」

 アクアが火を見ながら言う。

「いや」

 少しだけ目を細める。

「なんかいる気がした」

 森。

 暗闇。

 そこには。

 赤い目が。

 一瞬だけ光った。



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