第79話「ユニコーン暴走」
倒れた盗賊たち。
うめき声。
白目。
地面に転がる武器。
その中で。
「あ」
アクアが何か思い出した顔をする。
ユウが首をかしげる。
「どうしたの?」
アクアは周囲を見回す。
そして近くの木から長い蔓を引きちぎった。
「一応な」
盗賊の一人を縛る。
ぐるぐる。
次。
また次。
三十人全員。
ユウが笑う。
「律儀だね」
アクアが肩をすくめる。
「放置して暴れられても面倒だ」
さらに武器も回収。
山積み。
剣。
斧。
弓。
全部まとめる。
そして木に近づく。
石を拾う。
ガリガリガリ……
文字を刻む。
『盗賊です。見ないでください』
ユウが吹き出す。
「なんで!?」
「見たくないだろ」
「そういう問題!?」
アクアは満足そうに頷いた。
「よし」
再び馬車へ。
ユニコーンたちが鼻を鳴らす。
ヒヒン。
アクアが御者台に座る。
少し酒が入っている。
ほろよい。
「そういや」
手綱を握る。
「このユニコーン、どれくらい速いんだ?」
ユウの目が輝く。
「やってみよう!」
アクアが軽く鞭を叩く。
パシッ。
瞬間。
ヒヒィィィン!!
ユニコーンが急加速。
「うおっ!?」
景色が吹き飛ぶ。
速い。
とんでもなく速い。
草原が流れる。
風が顔に叩きつける。
だが。
馬車はそこまで揺れない。
高級サスペンション。
超高級品。
アクアが感心する。
「すげぇなこれ」
ユウもテンション爆上がり。
「もっといける!」
パシィッ!!
鞭。
さらに加速。
「おい!?」
ゴォォォォ!!
風圧。
もはや暴走。
道の石が弾け飛ぶ。
前から歩いていた男が目を見開く。
「なっ――」
慌てて飛び退く。
馬車が横を通過。
突風。
「ごめんなさーい!!」
ユウの声だけ残る。
男が呆然。
「……なんだ今の」
アクアも笑っていた。
「ヤバいスピードだな」
だが。
少しずつ。
笑顔が引きつる。
速すぎる。
そして。
前方。
長い下り坂。
「おいユウ」
「うん?」
「これ止まれるか?」
「知らなーい!」
坂へ突入。
ドォォォ!!
さらに加速。
ユニコーンは平然。
この速度でも足がもつれない。
化け物だ。
アクアが汗を流す。
「流石ユニコーン……!」
だが問題は。
馬車。
前方。
右カーブ。
かなり急。
アクアの目が見開く。
「曲がり切れないかもしれん!」
ユウが笑っている。
「うわぁぁ楽しい!」
「楽しくねぇ!!」
カーブ突入。
ギギギギギ!!
馬車が傾く。
片輪走行。
「うおおおお!?」
ユウが反射的にアクアへ抱きつく。
「落ちるー!」
アクアが歯を食いしばる。
「このまま左に荷重が寄ったら――」
転がる。
即理解。
右側へ飛びつく。
全体重をかける。
ギリギリ。
車輪。
浮く。
耐える。
ユニコーンがさらに踏ん張る。
そして――
ドンッ!!
馬車が地面に戻る。
カーブ突破。
二人。
しばらく無言。
そのまま上り坂へ。
速度が落ちる。
ようやく。
減速。
静寂。
アクアが青い顔で呟く。
「あ……危なかった……」
息を吐く。
「ライフ一個無駄使いするとこだった」
ユウ。
数秒固まった後。
大爆笑。
「あははははは!!」
腹を抱える。
「超楽しかった!!」
アクアが睨む。
「二度とやらん」
ユウがニヤニヤする。
「またやろ?」
「やらん」
ユニコーンたちは満足そうに鼻を鳴らした。




