第4章「新たな冒険」 第76話「世界はまだ広い」
朝。
ギルド。
いつも通り――ではなかった。
扉を開けた瞬間。
視線が集まる。
ざわっ。
「あいつ……」
「昨日の……」
アクアとユウ。
二人が並んで立つだけで、空気が変わる。
ユウは気にせず手を振る。
「おはよー」
軽い。
場違いなほどに。
アクアはカウンターへ向かう。
「登録したい」
受付嬢が一瞬固まる。
「……冒険者、ですか?」
「そうだ」
ざわめきが広がる。
「は?あいつが?」
「もう十分強いだろ……」
ユウが割り込む。
「私も!」
受付嬢が慌てて書類を出す。
手続き。
名前。
適性。
簡易測定。
水晶に手をかざす。
――ピキッ。
ひび。
「え?」
受付嬢が凍る。
次の瞬間。
パリン。
割れる。
静寂。
ユウが首をかしげる。
「壊れた?」
アクアも試す。
同じ。
パリン。
完全に沈黙。
ギルドマスターが奥から出てくる。
「……測定不能だな」
ため息。
「ランクは仮でSにしておく」
どよめき。
「いきなりS!?」
ユウが嬉しそうに言う。
「やった!」
アクアは興味なさそうに言う。
「で、本題だ」
ギルマスを見る。
「他のダンジョンはあるのか」
空気が変わる。
ギルマスの目が細くなる。
「……ある」
静かに。
周囲も息を呑む。
「ただし」
一歩近づく。
「場所も数も、全てが把握されているわけじゃない」
ユウが身を乗り出す。
「なにそれ面白そう!」
ギルマスが続ける。
「確認されているのは三つ」
指を立てる。
「一つはお前らのいたダンジョン」
アクアが頷く。
「もう一つは北」
地図を広げる。
「氷雪地帯の深層迷宮」
ユウの目が輝く。
「寒そう!」
「そして三つ目」
少し間。
「砂漠の遺跡型ダンジョン」
アクアが呟く。
「環境ごと違うか」
ギルマスが頷く。
「それぞれ特性がある」
ユウが笑う。
「全部行こうよ!」
アクアも口角を上げる。
「そのつもりだ」
ギルマスが釘を刺す。
「甘く見るな」
低く。
「お前らのダンジョンとは違う可能性もある」
アクアが振り返る。
「管理者がいるかどうか、か」
ギルマスは答えない。
ただ。
意味深に言う。
「……確かめてこい」
外。
青空。
ユウが伸びをする。
「どこから行く?」
アクアが地図を見る。
少し考えて。
「北だな」
ユウが跳ねる。
「氷のやつ!」
アクアが歩き出す。
「まずは様子見だ」
ユウが横に並ぶ。
「ねぇ」
にやにやしながら。
「冒険って感じだね」
アクアが少しだけ笑う。
「あぁ」
短く。
だが確かに。
「ここからが本番だ」
二人は歩き出す。
街を出て。
未知へ。
ダンジョンは一つじゃない。
世界は。
まだ広い。




