第75話「終わりの一撃」
夜の街。
瓦礫。
悲鳴。
その中心で――
レオンは、もう人ではなかった。
「グ……ガァァァァ!!」
理性が崩れる。
目は濁り。
涎が垂れる。
言葉にならない叫び。
完全な暴走。
トロール。
いや、それ以上の怪物。
アクアが低く呟く。
「……もう戻れないな」
ユウが横で笑う。
「最初からじゃない?」
軽口。
だが視線は鋭い。
トロールが突進する。
ドンッ!!
地面が割れる。
アクアが消える。
残像。
屋根の上へ。
一瞬で移動。
忍者スキル。
完全解放。
気配が消える。
「どこだァ!!」
レオンが腕を振り回す。
空を切る。
ユウが正面に立つ。
「こっちだよ」
にこっと笑う。
挑発。
レオンが反応。
「グオォ!!」
突っ込む。
ユウは避ける。
ギリギリで。
その動き。
完全に見切っている。
「単純だね」
一言。
その瞬間。
背後。
アクア。
「遅い」
斬る。
ザシュッ!!
背中。
深く。
だが。
再生。
肉が蠢く。
「チッ……」
アクアが舌打ちする。
「再生持ちか」
ユウが言う。
「じゃあ削り続けるしかないね」
アクアが頷く。
「合わせろ」
ユウがニヤリ。
「りょ」
次の瞬間。
連携。
ユウが前に出る。
高速。
翻弄。
左右。
上下。
「こっちー」
「ほらほら」
完全に引きつける。
レオンの視線がユウに固定される。
その背後。
影。
アクア。
一撃。
関節。
筋。
急所だけを正確に斬る。
ザシュッ!
ザシュッ!
ザシュッ!
動きが鈍る。
「グッ……!!」
それでも突っ込む。
ユウが跳ぶ。
避ける。
「まだまだ!」
アクアが低く言う。
「終わりにするぞ」
ユウが頷く。
「いいよ」
二人の呼吸が合う。
レオンが最後の咆哮。
「オオォォォ!!」
全力の突進。
一直線。
ユウへ。
ユウは――逃げない。
ニヤッと笑う。
「来い」
その瞬間。
アクアが正面に出る。
剣を構える。
レオンが振り下ろす。
巨大な腕。
その瞬間。
アクアが踏み込む。
「――これで終わりだ」
時間が止まる。
一閃。
すべてを断つ軌道。
ザンッ!!
静寂。
レオンの動きが止まる。
次の瞬間。
ズズ……
巨体が揺れる。
崩れる。
ドォォン……
地面に沈む。
完全に。
動かない。
静まり返る街。
誰も声を出せない。
アクアが立つ。
血を払う。
「……終わりだ」
ユウが近づく。
「やったね」
軽く言う。
だが。
少しだけ。
静かにレオンを見る。
アクアが呟く。
「これで」
空を見上げる。
「借りは返した」
風が吹く。
瓦礫の音。
遠くで人々がざわめく。
復讐は――終わった。




