第74話「怪物化」
踏み込み。
レオンの剣。
速い。
だが当たらない。
「くそっ!」
連撃。
斬る。
突く。
薙ぐ。
全部。
空を切る。
アクアは最小限で避ける。
紙一重。
無駄がない。
「どうした」
淡々と。
「そんなもんか」
レオンの顔が歪む。
「……っ!!」
一歩下がる。
視線が揺れる。
引き出しへ。
ガチャッ!!
瓶を掴む。
黒い液体。
「……これは使いたくなかったが」
歯を食いしばる。
「もう後に引けない」
ゴビッ!!
一気に飲み干す。
次の瞬間。
ドクンッ!!
心臓の音。
膨張。
筋肉が膨れ上がる。
骨が軋む。
皮膚が裂ける。
「ぐぁぁぁああああ!!」
体が巨大化する。
二倍。
三倍。
天井に頭がぶつかる。
そのまま――
バキィィィン!!
屋根を突き破る。
木材が飛び散る。
月光。
照らされる姿は――
トロール。
異形。
巨体。
血走った目。
「……はは」
低い笑い。
「これならどうだ」
アクアが目を細める。
「醜いな」
トロールが屋根をさらに砕く。
視界を開く。
そして外へ。
ドォン!!
地面に着地。
土が弾ける。
その瞬間。
アクアが背後に回る。
蹴り。
ドゴォッ!!
トロールの背中に直撃。
「ゴアァッ!?」
巨体が前に吹っ飛ぶ。
外壁を突き破る。
バキバキバキィ!!
派手に転がる。
だが。
すぐに起き上がる。
ギロリ。
アクアを見る。
「殺す……!!」
腕を振る。
ブンッ!!
風圧。
速い。
巨体とは思えない速度。
アクアの目がわずかに見開く。
「……速っ」
次の瞬間。
直撃。
ドォォン!!
アクアが吹き飛ぶ。
屋敷を貫通。
壁を突き破る。
裏の外壁へ。
ガンッ!!
激突。
粉塵。
トロールが笑う。
「当たるじゃねぇか!!」
視線が動く。
ユウ。
小さな影。
「次はお前だ」
踏み込む。
ドンッ!!
地面が陥没。
ユウに迫る。
だが――
ユウは動く。
ひらり。
避ける。
また避ける。
三度。
四度。
完全に見切っている。
「おっそーい」
笑う。
トロールの顔が歪む。
「ちょこまかと!!」
苛立ち。
足を振り上げる。
ドゴォッ!!
地面ごと蹴り飛ばす。
土。
石。
破片。
広範囲。
ユウの視界を塞ぐ。
「っ!」
一瞬。
視界が白くなる。
その隙。
拳。
直撃。
ドォン!!
ユウが吹き飛ぶ。
屋敷を貫通。
一直線。
その先。
外壁。
そこに――
アクア。
「……っ!」
受け止める。
だが勢いは殺せない。
二人まとめて。
ガンッ!!
外壁に激突。
崩れる。
瓦礫。
土煙。
静寂。
そして――
「な、なんだ!?」
「爆発か!?」
近所の住民たちが集まる。
ざわめき。
悲鳴。
屋敷は半壊。
中央に立つのは。
怪物。
トロール化したレオン。
月明かりの下で吠える。
「逃げるなァ!!」
瓦礫の中。
アクアがゆっくり立ち上がる。
ユウを支える。
「大丈夫か」
ユウが咳き込みながら笑う。
「油断した」
目は輝いている。
「でも面白いね」
アクアが前を見る。
トロール。
「……街を壊す気か」
低く。
「なら」
剣を構える。
「ここで終わらせる」
周囲の人間たちが。
固唾を呑んで見守る中。
復讐と怪物。
最後の激突が。
始まる。




