第72話「崩壊と再会」
ギルド。
静寂は一瞬で崩れた。
「っ……!!」
レオン。
アクアの姿を見た瞬間。
顔が歪む。
「化け物……!」
後ずさる。
誰よりも早く。
逃げた。
横ではなく。
裏口へ。
ダンッ!!
扉を蹴り開け。
そのまま全力で駆け出す。
「待て!」
誰かが叫ぶが。
止まらない。
消える。
残されたのは――
緊張。
そして。
殺気。
ギルド中の冒険者たちが。
一斉に構える。
剣。
槍。
魔法陣。
「……敵だ」
誰かが呟く。
アクアは動かない。
ただ。
一言。
ユウに言う。
「殺すなよ」
ユウがニッと笑う。
「りょ」
その瞬間。
消えた。
「っ!?」
次の瞬間。
ドゴォッ!!
一人。
吹き飛ぶ。
壁にめり込む。
「なっ……!?」
ユウが踊る。
笑いながら。
拳。
蹴り。
叩きつける。
「わーい!」
完全に楽しんでいる。
だが。
致命傷は与えない。
ギリギリで止める。
だが威力は異常。
一撃で戦闘不能。
「速っ……!」
「見えねぇ!」
魔法が飛ぶ。
炎。
氷。
雷。
ユウが笑う。
「遅いよ」
ひらり。
全部避ける。
そして。
距離を詰める。
ドンッ!!
また一人。
沈む。
数十秒。
それだけで。
ギルドは壊滅状態。
床に転がる冒険者たち。
うめき声。
静寂。
ユウがくるっと振り返る。
「終わり!」
満面の笑み。
アクアが頷く。
その奥。
ギルドマスター。
まだ立っている。
だが。
武器は下げている。
「……話があるようだな」
低く言う。
アクアが近づく。
ゆっくり。
「俺は」
静かに。
だがはっきりと。
「レオン達がクーパー男爵を殺したのを見た」
空気が凍る。
「そのせいで」
一歩近づく。
「口封じに殺された」
誰も動けない。
「ダンジョンでな」
ギルマスの目が細くなる。
アクアは続ける。
「ルナに記憶喪失のデバフをかけられて」
「ミレイが床を壊して」
「ガルドに蹴り落とされた」
拳を握る。
「五十階から九十階までだ」
沈黙。
重い。
あまりにも重い。
ギルドマスターが低く呟く。
「……なるほどな」
視線が横に動く。
ユウへ。
じっと見る。
ユウは首をかしげる。
「なに?」
ギルマスの目がわずかに揺れる。
「……似ている」
一歩近づく。
「まさか……」
声が震える。
「ユウ……ちゃんか?」
空気が変わる。
アクアも視線を向ける。
ユウが目を瞬かせる。
「……え?」
一瞬。
止まる。
そして何かがよみがえる。
記憶。
小さい頃。
大きな机。
優しい男。
頭を撫でられる感触。
「あ……」
ユウの目が開く。
「おじさん……?」
ギルマスの顔が崩れる。
「やはり……」
息を吐く。
「生きていたか……」
周囲がざわつく。
「誰だ……?」
「ユウって……」
ギルマスがゆっくり言う。
「辺境伯の娘だ」
空気が凍る。
「隕石で屋敷が壊滅した時」
拳を握る。
「ユウちゃんの遺体だけが見つからなかった」
ユウがぽかんとする。
そして。
ふっと笑う。
「そっか」
少し嬉しそうに。
「覚えてる」
一歩近づく。
「おじさん、元気だった?」
場違いなほど。
穏やかな声。
ギルマスが苦笑する。
「あぁ……」
目を細める。
「お前こそな」
アクアが腕を組む。
「……話逸れてるぞ」
ユウが「あ」と振り返る。
「そうだった」
ギルド。
壊滅。
復讐。
陰謀。
そして。
再会。
すべてが。
一つに繋がり始める。
一方その頃――
レオン。
豪華なSクラスの屋敷。
扉を叩き閉める。
バンッ!!
鍵をかける。
息が荒い。
「はぁ……はぁ……」
震える手。
頭を抱える。
「なんでだ……」
呟く。
「なんで生きてる……!」
恐怖が。
じわじわと。
心を侵食していく。
復讐は。
もう目の前まで来ている。




