第71話「食い違う証言」
ギルド。
ざわめきは消えない。
レオンの言葉が。
場を凍らせたまま。
「……復讐者だ」
重い沈黙。
その時。
バンッ!!
扉が勢いよく開く。
視線が一斉に向く。
入ってきたのはAクラス。
傷だらけ。
だが。
生きている。
「お、おい!」
「帰ってきたぞ!」
空気が一気に動く。
ギルドマスターが目を細める。
「……お前らも九十九階に行ったのか」
ディーンが頷く。
「行った」
短く。
「ボスと交戦した」
ざわめき。
レオンの視線が鋭くなる。
「……どうだった」
ディーンが顔をしかめる。
「強いなんてもんじゃねぇ」
一歩前に出る。
「化け物だ」
レオンと同じ言葉。
だが。
次の言葉で。
空気が歪む。
「少女だった」
沈黙。
「……は?」
レオンの声が漏れる。
ディーンが続ける。
「小柄な女」
手で高さを示す。
「見た目は子供だ」
周囲がざわつく。
「ドラゴンって言ってた」
「一瞬で間合い詰めてきやがる」
「ビンタで俺は吹き飛んだ」
証言が重なる。
だが。
レオンが一歩出る。
「違う」
低く。
「ボスは……アクアだ」
空気が止まる。
Aクラスが眉をひそめる。
「誰だそれ」
ディーンが言う。
レオンの目が揺れる。
「……いたんだ」
拳が震える。
「俺たちの前に」
ディーンが首を振る。
「見てねぇ」
はっきり。
「俺たちは少女としか戦ってない」
沈黙。
ギルド内。
ざわめきが大きくなる。
「どっちが本当だ……?」
「二体いるのか?」
「幻覚系のボスか?」
疑念。
混乱。
ギルドマスターが低く言う。
「整理しろ」
視線を順に向ける。
「Aクラスは少女」
「Sクラスは男」
ゆっくり。
「同じ階層で、別個体……あり得るか?」
誰も答えられない。
その時。
奥の冒険者が声を上げる。
「なぁ……アクアって名前」
ざわつく。
「昔、Sクラスにいたやつじゃなかったか?」
空気が一変する。
レオンの肩がわずかに揺れる。
「……知ってるのか」
誰かが問う。
男が頷く。
「あぁ」
顔をしかめる。
「数ヶ月前にお前らが死んだって報告しただろ」
ざわめきが一気に広がる。
「?」
「ありえねぇだろ……」
レオンが歯を食いしばる。
「……見たんだ」
低く。
「目の前で」
だが。
Aクラスは納得していない。
「俺たちは見てねぇ」
ディーンがはっきり言う。
「いたのは少女だけだ」
証言がぶつかる。
真実が揺れる。
その時。
ギルドの外。
ざわめきがさらに広がる。
「おい……見ろ」
誰かが指をさす。
入口の向こう。
二人の影。
一人は黒髪の男。
もう一人は少女。
「……あれ」
誰かが呟く。
「似てないか……?」
ギルド内。
一人の冒険者が外を見る。
目を見開く。
「……おい」
声が震える。
「いるぞ」
全員の視線が外へ。
そこに立っていたのは――
アクア。
そしてユウ。
ギルド内。
完全な静寂。
レオンの瞳が見開かれる。
「……っ」
呼吸が止まる。
アクアがゆっくり口を開く。
「よう」
軽く手を上げる。
「話は済んだか?」
混乱。
恐怖。
確信。
すべてが。
一瞬で繋がる。
“証言の食い違い”
その答えが。
今。
目の前に立っている。




