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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第70話「生還者の顔」


 街。

 ギルド。

 昼だというのに騒がしい。

「聞いたか?Aクラスが九十階突破だってよ!」

「マジかよ!?」

「しかも伝説級の装備持ち帰りだ!」

 どよめき。

 期待。

 熱気。

 その中に。

 一人。

 異質な空気。

 レオン。

 扉を押し開ける。

 ギィィ……

 視線が集まる。

「お、Sクラスじゃねぇか」

「帰ってきたぞ」

 だが。

 様子がおかしい。

 無言。

 足取りが重い。

 服は乱れ。

 顔は青い。

「……おい」

 ガルドは?

 ミレイは?

 ルナは?

 誰もいない。

「レオン?」

 受付嬢が声をかける。

 返事がない。

 そのまま。

 カウンターに手をつく。

 ドン。

「……報告だ」

 声が低い。

 かすれている。

「九十九階」

 周囲がざわつく。

「……到達」

 歓声が上がりかける。

 だが。

 続く言葉で止まる。

「……全滅した」

 沈黙。

「は?」

 誰かが漏らす。

 レオンの手が震える。

「……俺以外」

 空気が凍る。

「どういうことだ……?」

 誰かが呟く。

 レオンの目が揺れる。

 あの光景。

 ルナの首。

 ミレイの首。

 ガルドの足。

 血。

 笑うアクア。

「……化け物だ」

 ぽつり。

「なんだよ……あれ」

 息が荒くなる。

 受付嬢が息を呑む。

「ボス……ですか?」

 レオンが首を振る。

「違う」

 ゆっくり。

 顔を上げる。

「……アクアだ」

 ざわめき。

「は?」

「誰だそれ」

「いや……」

 一部の古参が顔をしかめる。

「まさか……」

 レオンの拳が震える。

「死んだはずの男が」

 歯を食いしばる。

「目の前に立ってた」

 場がざわつく。

「ありえねぇだろ……」

「幻覚か?」

「違う!!」

 レオンが叫ぶ。

 全員が黙る。

「間違いない」

 低く。

 はっきりと。

「俺たちが落とした」

 その言葉で。

 空気がさらに冷える。

「……落とした?」

 誰かが繰り返す。

 レオンは何も答えない。

 目を逸らす。

 その沈黙が。

 すべてを物語る。

 奥で。

 ギルドマスターが立ち上がる。

 重い足取りで近づく。

「レオン」

 低い声。

「詳しく話せ」

 レオンはしばらく黙る。

 だが。

 やがて。

 口を開く。

「……九十九階」

 拳を握る。

「そこにいたのは」

 ゆっくり。

 吐き出すように。

「復讐者だ」

 沈黙。

 そして。

 外。

 街の入口。

 二つの影が立つ。

 アクアとユウ。

「ここが……」

 ユウが目を輝かせる。

「人間の街かぁ!」

 アクアは静かに前を見る。

「レオン……」

 その視線の先。

 ギルド。

「逃げ場はねぇぞ」

 物語は。

 街へ。

 戦場は。

 すぐそこ。


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