第69話「留守番ボスと脱出」
九十九階。
コントロール室。
静まり返った空気の中で。
ユウが腕を組む。
「ねぇ」
じっとアクアを見る。
「私、ここに残るのやだ」
アクアが眉をひそめる。
「は?」
「九十九階のボス、やっててよ」
ぷいっとそっぽを向く。
「嫌だ!」
即答。
「一緒に行く!」
駄々。
完全に。
アクアがため息をつく。
「……お前な」
少し考える。
「じゃあ」
指を鳴らす。
「簡単に倒されないボス置くか」
ユウの顔がパッと明るくなる。
「いいね!」
腕をぶんぶん振る。
「悪魔ランキング一位とかどう?」
ドヤ顔。
「ルシファー!」
間。
「……留守ファー!」
アクアが即ツッコミ。
「ダジャレで最強出すな!」
ユウが一瞬キョトンとしてから。
「あ、ほんとだ」
トボケて笑い出す。
「気づかなかった~」
ケラケラ。
アクアが呆れる。
「却下だ却下」
腕を組む。
「もっと分かりやすくて、硬くて、雑に強い奴」
少し考える。
「……ベヒモスとか」
ユウが首をかしげる。
「陸上の王者?」
「そう」
アクアが頷く。
「耐久バカで速いタイプ」
ユウがニヤリと笑う。
「それ怖いね」
アクアが操作する。
空間が歪む。
魔力が集まる。
ドンッ!!
巨大な影が落ちる。
現れたのは――
巨体。
カバのような頭。
筋肉の塊。
重さの塊。
だが。
その目は鋭い。
「……デカいな」
ユウが見上げる。
ベヒモスが息を吐く。
ブォォォ……
口が光る。
ビーム。
「おいそれ」
アクアが目を細める。
「デバフ光線か」
「いいじゃん」
ユウが楽しそうに言う。
「当たったら弱体化でしょ?」
アクアが頷く。
「しかも――」
ベヒモスが動く。
ズンッ!!
……速い。
巨体とは思えない加速。
床が割れる。
「この身体でこの速さは」
ユウが笑う。
「怖いね」
アクアも口角を上げる。
「十分だな」
振り返る。
「こいつに任せる」
ユウが頷く。
「よし!」
「行くぞ」
二人。
九十八階へ。
登る。
サボテン君。
反応。
バシュッ!!
無数の針。
だが。
アクアに当たる前に。
弾ける。
「……効かねぇな」
ユウも突っ込む。
針が刺さる――
はずが。
弾かれる。
「わー」
ユウが笑う。
「全然刺さらない!」
アクアが苦笑する。
「チートだな、俺ら」
そのまま。
進む。
八十階。
宝箱。
残していた。
アクアが開ける。
光。
転移陣。
「行くぞ」
ユウがニヤリと笑う。
「外だ!」
二人。
踏み込む。
光に包まれる。
次の瞬間。
一階。
空気が変わる。
ダンジョンの入口。
外の気配。
風。
「……出れるな」
アクアが呟く。
ユウがぐっと伸びをする。
「自由だー!」
空を見上げる。
アクアは。
静かに前を見る。
「レオン……」
低く。
「逃げ切れると思うなよ」
復讐の舞台は。
ダンジョンの外へ。
最下層にSSクラスのボスを置いて。




