第66話「一瞬の死角(改)」
九十九階。
空気が張り詰める。
ルナが一歩前に出る。
「全員、強化するわ」
光が広がる。
身体能力上昇。
反応速度上昇。
耐久強化。
同時に。
黒い霧。
アクアへ。
「弱体化も、入れとく」
鈍化。
感覚阻害。
防御低下。
アクアは――
動かない。
すべて。
受ける。
ユウが端で笑う。
「避けないんだ」
アクアが肩を回す。
「ちょうどいいハンデだな」
レオンが鼻で笑う。
「舐めてんのか?」
ガルドが前に出る。
盾を構える。
こん棒を肩に担ぐ。
「クソみてぇな忍者職が」
一歩。
踏み込む。
「俺たちに勝てると思ってんのか?」
アクアは静かに答える。
「あぁ」
間。
「多分、余裕だ」
空気が凍る。
ミレイが後方で詠唱開始。
炎が渦巻く。
レオンは半歩後ろ。
斜め位置。
完全な陣形。
ガルドが突っ込む。
「行くぞ!!」
ドンッ!!
床が砕ける。
盾で押し込む。
距離を潰す。
同時に。
ミレイの詠唱が完成。
「燃え尽きろ!」
炎弾。
高速。
直撃コース。
アクアは――
剣を振る。
一閃。
炎が裂ける。
霧散。
そのまま。
ガルドの盾が迫る。
ドンッ!!
押し潰す。
こん棒。
振り下ろし。
だが。
紙一重。
アクアが滑るように外す。
その瞬間。
レオンが入る。
上段。
高速。
斬撃。
アクア。
体をわずかに傾ける。
刃が髪をかすめる。
「……ちっ」
レオンが舌打ち。
ガルドが追撃。
横薙ぎ。
避ける。
レオンが再び踏み込む。
連撃。
速い。
重い。
だが。
全部。
当たらない。
「……めんどくせぇな」
アクアがぼそりと呟く。
ミレイが次弾。
炎連射。
広範囲。
逃げ場を塞ぐ。
アクアは跳ぶ。
上へ。
「空中なら――!」
ガルドが構える。
落下地点を読む。
こん棒を振り上げる。
レオンも横薙ぎで待つ。
だが。
アクアが手をかざす。
下へ。
火。
爆発。
反動。
軌道が変わる。
「なっ!?」
二人の間をすり抜ける。
着地。
その瞬間。
消える。
「どこだ!?」
ガルドが振り向く。
ミレイが叫ぶ。
「後ろ――!」
「お前が俺の記憶を奪ったよな」
だが。
遅い。
アクアは。
もう。
そこにいる。
ルナの背後。
「あ?」
振り返る暇もない。
一閃。
音もなく。
首が離れる。
血が噴き出す。
体が崩れる。
頭が宙を舞う。
ゴトッ。
床に落ちる。
転がる。
止まる。
その目が。
レオンを見る。
静寂。
一拍。
「……は?」
ミレイの声が震える。
ガルドの目が見開く。
レオンの呼吸が止まる。
次の瞬間。
「ルナァァァ!!」
絶叫。
アクアはもう。
その場にいない。
「遅い」
背後。
レオンの首へ。
刃。
キィン!!
間一髪。
防ぐ。
火花。
レオンが距離を取る。
「……てめぇ」
声が低い。
震えている。
怒りで。
ガルドが踏み出す。
「ぶっ殺す!!」
だが。
さっきまでとは違う。
余裕は。
消えた。
アクアが笑う。
「一人目」
指を一本立てる。
「あと三人」
ユウが端で手を叩く。
「おぉ~」
楽しそうに。
「やっと始まったね」
戦場の温度が変わる。
遊びは終わり。
これは。
殺し合い。




