第64話「全回復、その先の絶望」
九十九階。
階段を降りた先。
そこに泉。
「……あるぞ」
ガルスが呟く。
「回復の泉……?」
ディーンが眉をひそめる。
だが。
身体は限界。
「……入る」
迷いは一瞬。
全員が泉へ。
ざぶん。
傷が消える。
疲労が抜ける。
魔力が満ちる。
「……すげぇ」
エルミナが息を吐く。
「完全回復……」
フィオラが静かに言う。
「ここまで優しいの、逆に怖いね」
ディーンが頷く。
「罠の可能性はある」
だが。
進むしかない。
「行くぞ」
泉を出る。
奥へ。
大きな扉。
重い。
開く。
広間。
静寂。
そして。
後ろには巨大な扉。
「……あれは」
フィオラが見る。
「出口……じゃない?」
ディーンが呟く。
「違う」
直感。
「あれは……中枢だ」
先に入ったAクラスパーティ。
そして。
前。
一人。
少女が立っている。
「……子供?」
ガルスが戸惑う。
だが。
ディーンの顔が変わる。
「……待て」
目を見開く。
「あいつ……」
エルミナも気づく。
「噂の……」
フィオラが呟く。
「幻影少女」
空気が張り詰める。
「見たことあるぞ……」
ガルスが言う。
「一瞬で消えたやつだろ」
ディーンが低く言う。
「間違いない」
少女が笑う。
「はっはっは!」
腕を組む。
「よく来たね」
視線が鋭くなる。
「私が九十九階」
一歩。
踏み出す。
「最後の大ボス」
圧。
空気が震える。
「三千年生きた伝説のドラゴン」
ニヤリと笑う。
「名前は――」
一瞬。
考える。
「……まだない」
間。
「いや」
胸を張る。
「ユウだ!」
沈黙。
Aクラス。
顔を見合わせる。
「……少女だぞ」
ガルスが小声で言う。
「やりにくいな……」
ディーンが答える。
「油断するな」
次の瞬間。
消えた。
「!?」
風。
いや。
それより速い。
ユウが。
目の前にいる。
「遅いよ」
パァン!!
乾いた音。
ディーンの頬に。
衝撃。
次の瞬間。
体が吹き飛ぶ。
回転。
回転。
回転。
床を転がる。
何十回も。
止まる。
沈黙。
「……え?」
ガルスが固まる。
「今の……ビンタ……?」
ディーン。
動かない。
「ディーン!」
フィオラが叫ぶ。
駆け寄る。
呼吸はある。
だが。
意識が飛んでいる。
エルミナが震える声で言う。
「……桁が違う」
ガルスが歯を食いしばる。
「強ぇ……!」
ユウは首をかしげる。
「え?もう終わり?」
笑う。
無邪気に。
「つまんないな~」
その一言で。
全員の背筋が凍る。
ディーンが。
わずかに目を開ける。
「……ぐ……」
フィオラがすぐに回復をかける。
「回復!」
光。
真っ赤に腫れあがった頬が治る。
意識が戻る。
ディーンが起き上がる。
だが。
目は完全に覚醒している。
「……全員」
低く言う。
「本気だ」
ガルスが笑う。
「最初からそのつもりだ!」
エルミナが杖を構える。
「これ、勝てるの……?」
フィオラが静かに言う。
「やるしかない」
ユウが手を叩く。
「いいね!」
嬉しそうに。
「やっと本気だ!」
姿勢を低くする。
完全な戦闘態勢。
「さぁ」
笑う。
「遊ぼうか」
空気が変わる。
ここから先は。
本当の死闘。
一方。
コントロール室の奥。
アクアは静かに見ている。
「……始まったな」
その目は冷たい。
だが。
どこかで。
燃えている。
「まずは――」
小さく呟く。
「ユウで削る」
そして。
その先。
自分が立つ。
九十九階。
最終戦。
開幕。




