第61話「追い越された背中、踏み込む次層」
ギルド。
扉が開く。
Sクラスパーティが入ってくる。
血は洗い流したが、疲労は隠せない。
「九十階、更新だ」
レオンが受付に言う。
受付嬢が一瞬だけ言葉に詰まる。
「……あの」
嫌な間。
「すでに……更新されています」
「……は?」
空気が凍る。
掲示板。
人だかり。
レオンが押しのける。
視線。
そこに刻まれている。
九十階到達――Aクラス。
「……」
無言。
ガルドが呟く。
「先に……行かれてる……?」
ミレイの顔が引きつる。
「マジかよ……」
レオンは動かない。
数秒。
そして。
「はっ」
笑う。
低く。
危険な笑い。
「面白ぇ」
振り返る。
「行くぞ」
「抜き返す」
その目に炎。
ギルドマスターが遠くで見ている。
「……燃えてるな」
一方その頃。
ダンジョン入口。
Aクラス。
ディーン、ガルス、エルミナ、フィオラ。
「もう一回だ」
ディーンが言う。
全員が頷く。
新たな装備。
伝説の輝き。
「九十階は問題ねぇ」
ガルスが笑う。
「さっさと抜けるぞ」
再突入。
一階。
二階。
十階。
すべて突破。
止まらない。
九十階。
扉。
「行くぞ」
開く。
歪み。
ドッペル出現。
だが――
「遅い」
ディーンが踏み込む。
リズムを崩す。
最初から。
ズレを作る。
連携。
集中。
あっという間に一体。
崩壊。
「やっぱりな」
ガルスが笑う。
「もう仕組みは分かってる」
四対三。
その時点で。
勝負は決まる。
「押し切れ!」
数分。
いや。
それ以下。
全滅。
九十階制圧。
「楽勝だな」
エルミナが肩を回す。
宝箱を見る。
「……開けるか?」
一瞬の沈黙。
ディーンが首を振る。
「無視だ」
「下がある」
全員が頷く。
九十一階。
回復の泉。
短時間で回復。
そして――
九十二階。
「……これが次か」
通路。
静寂。
そして。
無数の影。
「なんだ……?」
次の瞬間。
バシュッ!!
針。
「ぐっ!」
ガルスの足首に突き刺さる。
「なっ……!?」
見る間に。
皮膚が灰色に。
固まる。
「石化!?」
フィオラが叫ぶ。
動きが鈍る。
「くそっ……!」
その時。
ディーンが踏み込んでいる。
「邪魔だ!!」
サボテン状の魔物。
一閃。
バッサリ。
体が裂ける。
体液が飛び散る。
その一滴が。
ガルスの足にかかる。
シュウウ……
石が崩れる。
「……あ?」
ガルスが足を動かす。
動く。
「治った……?」
全員が見る。
ディーンが眉をひそめる。
「……こいつの体液か」
エルミナが冷静に分析する。
「石化解除の媒介……」
フィオラが言う。
「回復役、増えたね……」
だが。
ガルスが顔をしかめる。
「笑えねぇ」
前方を見る。
サボテンが群れている。
「この針、広範囲だ」
バシュッ!!
再び。
針の雨。
「散開!!」
全員が動く。
「射程は……!」
エルミナが叫ぶ。
「三メートル前後!」
「なら!」
ディーンが即断する。
「近づくか、距離を保つかの二択だ!」
ガルスが叫ぶ。
「近づくのはリスク高ぇぞ!」
「体液が必要になる場面もある」
フィオラが言う。
「なら制御して倒すしかないね」
エルミナが杖を構える。
「遠距離主体で削る」
「魔法の有効射程は約二十メートル」
「通路ごと焼く」
ディーンが頷く。
「やれるか?」
エルミナが苦笑する。
「魔力がもてばね」
ガルスが言う。
「切れたら?」
ディーンが即答する。
「戻る」
「九十一階」
「泉で回復してやり直す」
フィオラが頷く。
「安全圏は確保されてる」
エルミナが笑う。
「レベリング兼ねるしかないね」
ディーンが前を見る。
サボテンの群れ。
「行くぞ」
低く。
「ここからは慎重にだ」
炎が放たれる。
通路が焼かれる。
針が弾ける。
戦い方が変わる。
確実に。
一歩ずつ。
深層へ。
一方。
コントロール室。
「いいねぇ」
ユウがニヤニヤする。
「ちゃんと考えてる」
アクアは腕を組む。
「想定内だ」
だが。
その目は鋭い。
「だがここからが本番だ」
九十二階以降。
罠。
消耗。
そして。
九十九階。
「来い」
小さく呟く。
「全部越えてみろ」




