第60話「勝利の代償」
九十階。
静寂。
ドッペルゲンガーは全て消えた。
Sクラス。
全員が立っている。
だが。
満身創痍。
「……勝ったか」
レオンが息を吐く。
血が滴る。
剣を支えに立っている。
「ギリギリすぎる……」
ミレイが座り込む。
「もう動けねぇ……」
ガルドも膝をつく。
それでも。
視線は一つ。
奥。
宝箱。
「……行くぞ」
レオンが言う。
ふらつきながら歩く。
誰も止めない。
そこにあるのは。
“報酬”。
そして。
プライド。
「開ける」
手をかける。
蓋を持ち上げる。
光。
中には――
伝説級の装備。
「……はは」
レオンが笑う。
「当然だ」
その瞬間。
足元に魔法陣。
「……あ?」
一瞬。
理解が遅れる。
ミレイが目を見開く。
「待って――!」
光が弾ける。
転移。
次の瞬間。
一階。
ダンジョン入口。
「……は?」
レオンが固まる。
周囲。
見慣れた入口。
「帰還……?」
ガルドが呟く。
ミレイが顔を引きつらせる。
「……強制帰還……」
沈黙。
数秒。
「……ふざけんなぁぁぁぁ!!」
レオンが吠える。
地面を蹴る。
「なんだ今のは!!」
「勝っただろうが!!」
ガルドも叫ぶ。
「最後まで行かせろよ!!」
ミレイが肩を落とす。
「……罠だね」
冷静に言う。
「宝箱=終了」
フィオラがぽつりと。
「……ひどい」
だが。
次の瞬間。
レオンが笑い出す。
「……はは」
「ははははは!!」
周囲が驚く。
「最高じゃねぇか」
ニヤリと笑う。
「ここまで来て、まだ上があるってことだろ?」
その目に狂気。
「やるしかねぇな」
その頃。
ギルド。
掲示板。
人だかり。
「見ろよこれ!」
「Aクラスが九十階到達だってよ!」
「マジかよ!?」
ざわめき。
歓声。
「Sクラス越えじゃねぇか!」
レオン達は。
まだ知らない。
自分たちが。
すでに抜かれていることを。
一方。
コントロール室。
「引っかかったね~」
ユウが笑う。
「いい顔してたよ」
アクアは静かに言う。
「当然だ」
腕を組む。
「報酬の直後に絶望」
「一番効く」
ユウがニヤニヤする。
「性格わる~」
「褒め言葉だ」
アクアの視線は奥。
九十九階。
「次は宝箱を無視するか」
「それとも――」
わずかに笑う。
「もう一度引っかかるか」
一方。
レオン。
拳を握る。
「次は」
低く。
「全部ぶっ壊してでも進む」
復讐ではない。
だが。
似た感情。
「上があるなら」
顔を上げる。
「行くに決まってる」
戦いは。
まだ終わらない。




