第53話「交差」
八十一階。
回復の泉。
静かに水が揺れている。
その中に――Sクラス。
「……今回は八十六階までか」
レオンが低く呟く。
「でも確実に伸びてる」
魔法使いが肩で息をする。
「氷がハマってるね」
「レプティも慣れてきた」
盾役が頷く。
「次はもっと行ける」
反復。
挑戦。
回復。
また挑戦。
その繰り返しで。
確実に。
強くなっている。
「もう一回行くか?」
「少し休む」
レオンが水から上がる。
その時。
足音。
階段の方から。
全員が視線を向ける。
現れたのはAクラスパーティ。
ボロボロだった。
「……っ」
息を切らしながら。
なんとかたどり着いた。
八十一階。
「……はぁ……!」
泉を見て。
一瞬で理解する。
「入れ!」
リーダーが叫ぶ。
全員が飛び込む。
回復。
安堵。
その瞬間。
視線が交わる。
SクラスとAクラス。
沈黙。
先に口を開いたのは。
レオン。
「……もう来やがったか」
冷たい声。
Aクラスのリーダーが睨む。
「悪いかよ」
「別に」
レオンが肩をすくめる。
「ただ」
少し笑う。
「遅ぇな」
空気が張り詰める。
「……」
Aクラスの戦士が拳を握る。
「言わせておけば……」
「やめろ」
リーダーが止める。
「今は無駄な消耗はしない」
「賢いな」
レオンが言う。
「それでいい」
その言葉。
完全に上からだった。
だが。
Aクラスは黙る。
現実を知っている。
実力差を。
だが。
リーダーが一歩前に出る。
「俺たちは進む」
静かに言う。
「お前らを追い越す」
一瞬の沈黙。
そして。
レオンが笑う。
「やってみろよ」
その目。
挑発。
「その前に折れるだろうけどな」
ピリッとした空気。
ユウが見ていたら喜びそうな空気だった。
だが。
Aクラスのリーダーは笑う。
「折れるかどうかは」
一歩踏み出す。
「やってから決める」
いい目だった。
レオンの目がわずかに細くなる。
「……いいね」
小さく呟く。
「嫌いじゃない」
だが。
すぐに背を向ける。
「行くぞ」
Sクラスが動く。
再び。
深層へ。
その背中を。
Aクラスが見送る。
「……くそ」
戦士が吐き捨てる。
「絶対追いつく」
魔法使いが言う。
「追いつくだけじゃねぇ」
リーダーが静かに言う。
「超える」
その言葉。
全員が頷く。
一方。
コントロール室。
「うわぁ~」
ユウがニヤニヤしている。
「いいねいいね」
「熱いね」
アクアは無言で見ている。
「……来たな」
小さく呟く。
「揃ってきた」
Sクラス。
Aクラス。
同じ階層。
同じ舞台。
「最高だ」
アクアの口元が歪む。
「まとめて叩く」
ユウが笑う。
「悪い顔してるよ?」
「当然だ」
アクアが言う。
「復讐だからな」
石板に映る。
九十階。
ドッペルゲンガー。
静かに待つ。
「舞台は整った」
その声は低く。
冷たく。
確信に満ちていた。




