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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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53/68

第53話「交差」


八十一階。

回復の泉。

静かに水が揺れている。

その中に――Sクラス。

「……今回は八十六階までか」

レオンが低く呟く。

「でも確実に伸びてる」

魔法使いが肩で息をする。

「氷がハマってるね」

「レプティも慣れてきた」

盾役が頷く。

「次はもっと行ける」

反復。

挑戦。

回復。

また挑戦。

その繰り返しで。

確実に。

強くなっている。

「もう一回行くか?」

「少し休む」

レオンが水から上がる。

その時。

足音。

階段の方から。

全員が視線を向ける。

現れたのはAクラスパーティ。

ボロボロだった。

「……っ」

息を切らしながら。

なんとかたどり着いた。

八十一階。

「……はぁ……!」

泉を見て。

一瞬で理解する。

「入れ!」

リーダーが叫ぶ。

全員が飛び込む。

回復。

安堵。

その瞬間。

視線が交わる。

SクラスとAクラス。

沈黙。

先に口を開いたのは。

レオン。

「……もう来やがったか」

冷たい声。

Aクラスのリーダーが睨む。

「悪いかよ」

「別に」

レオンが肩をすくめる。

「ただ」

少し笑う。

「遅ぇな」

空気が張り詰める。

「……」

Aクラスの戦士が拳を握る。

「言わせておけば……」

「やめろ」

リーダーが止める。

「今は無駄な消耗はしない」

「賢いな」

レオンが言う。

「それでいい」

その言葉。

完全に上からだった。

だが。

Aクラスは黙る。

現実を知っている。

実力差を。

だが。

リーダーが一歩前に出る。

「俺たちは進む」

静かに言う。

「お前らを追い越す」

一瞬の沈黙。

そして。

レオンが笑う。

「やってみろよ」

その目。

挑発。

「その前に折れるだろうけどな」

ピリッとした空気。

ユウが見ていたら喜びそうな空気だった。

だが。

Aクラスのリーダーは笑う。

「折れるかどうかは」

一歩踏み出す。

「やってから決める」

いい目だった。

レオンの目がわずかに細くなる。

「……いいね」

小さく呟く。

「嫌いじゃない」

だが。

すぐに背を向ける。

「行くぞ」

Sクラスが動く。

再び。

深層へ。

その背中を。

Aクラスが見送る。

「……くそ」

戦士が吐き捨てる。

「絶対追いつく」

魔法使いが言う。

「追いつくだけじゃねぇ」

リーダーが静かに言う。

「超える」

その言葉。

全員が頷く。

一方。

コントロール室。

「うわぁ~」

ユウがニヤニヤしている。

「いいねいいね」

「熱いね」

アクアは無言で見ている。

「……来たな」

小さく呟く。

「揃ってきた」

Sクラス。

Aクラス。

同じ階層。

同じ舞台。

「最高だ」

アクアの口元が歪む。

「まとめて叩く」

ユウが笑う。

「悪い顔してるよ?」

「当然だ」

アクアが言う。

「復讐だからな」

石板に映る。

九十階。

ドッペルゲンガー。

静かに待つ。

「舞台は整った」

その声は低く。

冷たく。

確信に満ちていた。



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