第52話「対策と追走」
八十一階。
回復の泉。
静寂。
「……さっきのは」
魔法使いが口を開く。
「完全に相性負けだね」
「速さと範囲攻撃の同時圧力」
「崩されたな」
盾役が頷く。
レオンは水面を見ている。
「対策はある」
短く言う。
「何だ?」
「弱点だ」
視線を上げる。
「火には氷だろ」
「……氷魔法か」
魔法使いが考える。
「使えなくはない」
「ただし精度は落ちる」
「それでいい」
レオンが即答する。
「削れればいい」
「動きを鈍らせろ」
「レプティは俺が落とす」
「了解」
空気が引き締まる。
「行くぞ」
再突入。
八十二階。
熱気。
「来る!」
サラマンダー。
火炎。
同時に。
レプティ。
壁を蹴る。
「散開!」
だが今回は違う。
魔法使いが杖を構える。
「氷弾!」
放つ。
命中。
サラマンダーの動きが鈍る。
「効いてる!」
「続けろ!」
氷。
氷。
連続。
温度が下がる。
炎の勢いが弱まる。
「今だ!」
レオンが踏み込む。
一体。
斬る。
次。
だが。
「っ!」
レプティ。
横から。
高速。
斬撃をかわす。
「ちっ!」
速い。
相変わらず。
「後ろ!」
盾役が叫ぶ。
サラマンダーの火炎。
氷で弱まっている。
だが。
ゼロじゃない。
被弾。
「ぐっ……!」
「回復!」
バフ役が支える。
「押せるぞ!」
魔法使いが叫ぶ。
「いける!」
一体。
また一体。
確実に減らす。
だが。
消耗は激しい。
「数が……!」
レプティが連携してくる。
挟む。
上下。
左右。
「くそっ……!」
レオンの動きがわずかに鈍る。
「……まだ足りねぇな」
小さく呟く。
だが。
戦える。
押し返せる。
「突破するぞ!」
時間をかけて。
確実に。
敵を減らす。
八十三階へ。
「……はぁ……」
全員が息を切らす。
「前よりはマシだな」
盾役が笑う。
「でも楽じゃねぇ」
魔法使いが肩を落とす。
レオンが前を見る。
「いい」
低く言う。
「これでいい」
その目。
完全に“攻略者”の目。
一方。
別の場所。
七十九階。
Aクラス。
「……見えた」
リーダーが呟く。
「八十階だ」
目の前に。
ボス扉。
「行けるか?」
「行くしかねぇだろ」
全員が構える。
「ここまで来たんだ」
疲労はある。
だが。
目は死んでいない。
「Sに追いつくぞ」
その言葉。
全員が頷く。
一方。
コントロール室。
「おぉ」
ユウが嬉しそうに言う。
「どっちもいいね」
「Sは対応」
「Aは追い上げ」
アクアが静かに見る。
「……いい流れだ」
「どうする?」
ユウが聞く。
「もっと強くする?」
「いや」
アクアが首を振る。
「そのままでいい」
「え?」
「積み上げさせる」
「……なるほど」
ユウがニヤリとする。
「そのあと落とすんだ」
アクアも笑う。
「そういうことだ」
石板に映る。
九十階。
ドッペルゲンガー。
静かに待つ。
「あと少しだよ」
アクアが呟く。
「来いよ」
その声は。
静かに。
冷たく。
燃えていた。




