第50話「喰らいつく者たち」
七十一階。
回復の泉。
「……はぁ……」
Aクラスのリーダーが水に浸かる。
体中の痛みが、ゆっくりと消えていく。
「助かった……」
「さっきは死ぬかと思ったな」
戦士が苦笑する。
「笑えねぇよ」
魔法使いが肩で息をする。
「でも」
回復役が静かに言う。
「やれる」
全員が顔を上げる。
「さっきので分かった」
「核の位置」
「完全ランダムじゃない」
「……どういうことだ?」
リーダーが聞く。
「動きが鈍る瞬間がある」
「あぁ」
戦士が頷く。
「攻撃直前、重心が寄る」
「そこに核が来る確率が高い」
「つまり」
魔法使いが目を細める。
「誘導できるってことか」
「そう」
回復役が頷く。
「攻撃を誘って、その瞬間を叩く」
「リスク高ぇな」
「でも」
リーダーが笑う。
「さっきよりはマシだ」
全員が立ち上がる。
「行くぞ」
再び。
七十二階。
ゴゴッ
壁が動く。
ゴーレム出現。
「来た!」
今度は違う。
慌てない。
戦士が前に出る。
わざと隙を見せる。
拳が来る。
その瞬間。
「今だ!」
重心が寄る。
胸。
「そこぉ!」
突き。
核破壊。
一撃で崩れる。
「いける!」
魔法使いが叫ぶ。
次。
背後から出現。
振り向く。
誘う。
殴らせる。
重心。
腰。
「見えた!」
連携。
破壊。
「さっきより速い!」
「このまま押す!」
数は多い。
だが。
処理速度が上がっている。
「焦るな!」
リーダーが声を張る。
「確実に一体ずつ!」
全員の動きが揃う。
最初の時とは違う。
“理解”している。
戦い方を。
時間はかかる。
だが。
確実に進む。
七十三。
七十四。
少しずつ。
少しずつ。
「……やれるな」
戦士が笑う。
「地獄だけどな」
魔法使いが苦笑する。
「でも嫌いじゃねぇ」
一方。
コントロール室。
「お?」
ユウが身を乗り出す。
「Aクラス頑張ってるよ?」
アクアが石板を見る。
「……なるほど」
目を細める。
「気づいたか」
「えらいね」
ユウが嬉しそうに言う。
「普通折れるよ?」
「まぁな」
アクアが静かに頷く。
「だから面白い」
腕を組む。
「Sだけじゃない」
「こういうやつらもいるから」
迷宮は成立する。
ユウがニヤリとする。
「どうする?」
「強くする?」
「いや」
アクアが首を振る。
「そのままでいい」
「え?」
「越えられる壁は残す」
静かな声。
「全部絶望にしたら終わる」
ユウが少しだけ驚く。
「……へぇ」
「でも」
アクアの目が鋭くなる。
「Sは別だ」
その一言。
空気が変わる。
「アイツらには」
低い声。
「絶望を用意する」
ユウがにやっと笑う。
「いいね」
「楽しみ」
迷宮は選ぶ。
挑戦者を。
育てる者と。
叩き潰す者を。




