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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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48/62

第48話「違和感」


 七十二階。

 静かな通路。

「……なんか変わったな」

 魔法使いが呟く。

「雰囲気がな」

 壁。

 石。

 何の変哲もない。

「進むぞ」

 レオンが先頭を歩く。

 一歩。

 二歩。

 その瞬間。

 ゴゴッ

 壁が動いた。

「!?」

 横から拳。

 ゴーレム。

 完全に壁と同化していた。

 ドゴンッ!

 盾役が即座に割り込む。

 衝撃。

「ぐっ……!」

 初めての“重さ”。

「奇襲か」

 レオンが目を細める。

 ゴーレムが動き出す。

 一体じゃない。

 次々と。

 壁から“生まれる”。

「面倒だな」

 レオンが踏み込む。

 一閃。

 胴体を両断。

 だが。

 ゴーレムは止まらない。

「……?」

 再び動く。

 崩れたはずの体。

「核だ!」

 魔法使いが叫ぶ。

「どこだ!?」

 レオンが舌打ちする。

 拳が飛ぶ。

 蹴りが来る。

 複数同時。

「ちっ!」

 スピードで避ける。

 だが。

「数が多い!」

 背後からも出現。

 完全に囲まれる。

「壊しても動くぞ!」

「核を探せ!」

 レオンが目を凝らす。

 胸。

 違う。

 頭。

 違う。

 背中。

 違う。

 個体ごとに違う。

「面倒すぎるな……!」

 一体。

 腕を叩き落とす。

 その瞬間。

 腹部に光。

「そこか!」

 突き刺す。

 核破壊。

 崩れる。

「位置バラバラかよ!」

 苛立ちが混じる。

 今までと違う。

 “作業”じゃない。

「集中しろ!」

 レオンの声が鋭くなる。

 戦闘時間が伸びる。

 初めてだった。

 このパーティが。

 “足を止められた”のは。

 なんとか殲滅。

 だが。

「……時間かかったな」

 盾役が息を吐く。

「クソ仕様だな」

 魔法使いが肩を回す。

「でも」

 バフ役が静かに言う。

「ダメージは少ない」

 確かに。

 致命傷はない。

 だが。

 レオンは無言だった。

「……進むぞ」

 短く言う。

 その目。

 ほんのわずか。

 警戒が混じる。

 さらに進む。

 七十三。

 七十四。

 同じだ。

 壁。

 床。

 どこからでも現れる。

「増えてないか?」

「気のせいじゃない」

 数も増える。

 処理に時間がかかる。

 集中力が削られる。

「チッ……」

 レオンが舌打ちする。

「まだこんなもんか?」

 だが。

 余裕は消え始めていた。

 一方。

 コントロール室。

「お、止まった」

 アクアがニヤリとする。

「いいね~」

 ユウが笑う。

「ちゃんと機能してる」

「だろ?」

 アクアが腕を組む。

「ランダム核」

「いやらしいね」

「単純な強さじゃない」

 アクアの目が細くなる。

「削るんだよ」

「スタミナも」

「集中も」

「判断もな」

 ユウが嬉しそうに頷く。

「性格わる~い」

「褒め言葉だ」

 石板を見る。

 Sクラス。

 まだ余裕。

 だが。

「崩れるのはこれからだ」

 静かに呟く。

「次でさらに削る」

 迷宮が。

 少しずつ。

 牙を食い込ませ始めていた。



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