第3章「復讐」 第46話「迷宮の主、牙を剥く」
「……決めた」
アクアが静かに言う。
「俺が止めを刺す」
視線は石板。
映っているのは――Sクラスパーティ。
「99階」
ゆっくりと続ける。
「俺がボスになる」
ユウが目を輝かせる。
「サプライズだね!」
「あぁ」
アクアの口元が歪む。
「歓迎してやる」
「じゃあ私も出る!」
即答だった。
「いや」
アクアが首を振る。
「見ててくれ」
「え~」
ユウが不満そうに頬を膨らませる。
「私もパートナーでしょ!」
「相手は4人だぞ」
「だから!」
ユウがぐいっと詰め寄る。
「私も私も~」
完全に目が戦闘狂のそれだった。
「……」
アクアがため息をつく。
「わかった」
折れる。
「ただし」
指を立てる。
「レオンは俺がやる」
一瞬、静寂。
ユウがにやっと笑う。
「いいよ」
「それ以外は?」
「好きにしろ」
「やった!」
嬉しそうに飛び跳ねる。
「さて」
アクアが切り替える。
「92階から98階だ」
「何置く?」
「ラッキーピエロ!」
「却下」
即答。
「なんで!?」
「運要素は無しだ」
「ちぇー」
ユウが唇を尖らせる。
「じゃあサボテン君」
「……なんだそれ」
「針を全身から発射するの」
「ほう」
「で、食べれる」
「……食えるのかよ」
アクアが少し考える。
「針は弱いな」
「えー」
「でも」
少し間を置く。
「状態異常つけるか」
「お?」
ユウが身を乗り出す。
「石化」
「おぉ」
「で」
アクアの目が光る。
「そいつのしぼり汁で回復」
「いいじゃん!」
ユウが笑う。
「でもそれ」
「どうする?」
「全身にかけないとダメにする」
「……は?」
アクアが一瞬止まる。
「つまり」
ユウが楽しそうに言う。
「倒したあと、ベタベタに浴びないと回復しない」
「……」
数秒の沈黙。
そして。
「それいいな」
「でしょ!」
「一匹じゃ足りないな」
「うんうん!」
「複数配置だ」
「いいねいいね!」
二人の目が完全に同じになる。
「Sクラスだけじゃない」
アクアが言う。
「一般の客もいる」
「うん」
「だから」
「理不尽じゃなく」
「でも面倒くさい」
ユウがニヤリとする。
「最高」
「決まりだ」
石板を操作する。
92階から98階。
サボテン型魔物を配置。
針は高速射出。
命中で石化ゲージ蓄積。
完全石化で行動不能。
倒すと内部に回復液。
だが。
「全身に浴びないと回復しない、と」
「やば」
ユウが笑う。
「絶対嫌だそれ」
「でもやるしかない」
「いいね~」
設定完了。
迷宮が静かに変わる。
「これで」
アクアが呟く。
「下準備は終わりだ」
その時。
石板が光る。
「……来たな」
画面に映る。
Sクラスパーティ。
五十階。
ボス撃破。
「早いね」
ユウが笑う。
「さすがだな」
だが。
アクアの目は冷たい。
「問題ない」
腕を組む。
「ここから先が本番だ」
迷宮は牙を剥く。
復讐の舞台は整った。




