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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第43話「迷宮の外と中」


街のギルド。

掲示板の前に、人だかりができていた。

「また更新されてるぞ」

「マジかよ……」

ざわめきが広がる。

木の板に張り出された数字。

最高到達階層。

Sクラス、Aクラス 41階

Bクラス 30階

Cクラス 25階

Dクラス 19階

Eクラス 8階

「……41階で止まってんのか」

「SとAが同じってどういうことだよ」

「っていうか」

誰かが呟く。

「これ、何階まであるんだ……?」

静かに広がる疑問。

答えを知る者はいない。

だが。

その下に書かれた情報が、人々の目を引く。

宝箱の中身。

10階 中級の剣

20階 中級の杖

30階 恐怖耐性のアクセサリー4つ

40階 状態異常軽減の実4つ

「この実、マジで欲しいんだよな」

「毒ゾーン対策になるって話だ」

「でも40階とか無理だろ……」

一方で。

10階の剣。

すでに市場に溢れていた。

「またこの剣かよ」

「安すぎるだろ……」

供給過多。

だが、それでも。

人は集まる。

「次は俺たちも行くぞ」

「宝箱当てて一発逆転だ」

ダンジョンは完全に“熱”を帯びていた。

一方。

100階。

「ふぅ……」

アクアが扉を開ける。

「また変わってるね」

ユウが後ろから覗く。

そこは。

高原だった。

広がる草原。

澄んだ空気。

遠くには山。

風が心地よく吹き抜ける。

「……地下だよな、ここ」

アクアが呟く。

「空気うまっ!」

ユウが大きく息を吸う。

「なにこれ最高!」

馬が走っている。

ゆったりとした景色。

だが。

その横には。

バーベキュースペース。

そして。

食材冷蔵箱。

さらに。

妙に本格的なアスレチック。

「遊ぼ!」

ユウが一瞬で走り出す。

丸太の足場。

ぴょん、ぴょんと軽やかに飛び移る。

どんどん高くなる。

「おい、それ……」

アクアが見上げる。

すでに10メートル以上。

「うわっ高い!」

ユウが急に止まる。

「むりむりむり!」

丸太を伝って降りてくる。

「高いとこ苦手なんだよね~」

地面に降りて、笑う。

「漏らすとこだった」

「やめろ・・ドラゴンだろ」

「飛んだことないもん」

アクアが苦笑する。

「次これ!」

ユウはすぐに次へ。

網のアスレチック。

足を置く場所を選ばないと、ズボッと落ちる構造。

「よっ、よっと」

軽やかに進む。

絶妙にバランスを取りながら。

走る。

跳ぶ。

まるで遊んでいるだけで、鍛えられているような動き。

「……さすがだな」

アクアが呟く。

一方で。

アクアは冷蔵箱へ向かう。

開ける。

ひんやりとした空気。

「……なんだこれ」

中には。

見たことのない分厚い肉。

美しい脂。

見るだけで分かる。

うまいやつだ。

「野菜も……知らないやつばっかだな」

色鮮やかな野菜と果物。

そして。

「……おい」

手に取る。

「ビール?」

瓶。

冷えている。

水滴がついている。

「こんなに冷えてるの初めてだ……」

軽く振る。

泡の気配。

「最高じゃねぇか」

ユウが戻ってくる。

「なにそれ!」

目を輝かせる。

「飲むか?」

「飲む!」

即答。

「肉も焼こう」

「いいね!」

火を起こす。

ジュウ、と音がする。

肉が焼ける。

脂が落ちて炎が上がる。

香りが広がる。

「やば……」

ユウがよだれを垂らしそうになる。

「早く!」

「落ち着け」

アクアが笑う。

肉を皿に乗せる。

ビールを開ける。

プシュッ。

泡が立つ。

「いただきます!」

二人同時に。

肉を食べる。

「……っ!」

ユウの目が見開く。

「なにこれ!」

「やばいな」

アクアも笑う。

ビールを流し込む。

「……うまっ」

思わず声が漏れる。

ダンジョン最深部。

そこは。

戦場であり。

楽園でもあった。


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