第38話「初めての壁」
三十九階を抜ける。
「……虫ゾーン、終わりか」
ガルドが軽く肩を回す。
「状態異常は面倒だったね」
ミレイが淡々と答える。
「でも問題ない」
レオンが前を見る。
「次だ」
四十階
扉を開ける。
――熱。
「……なんだこの匂い」
焦げたような空気。
地面がわずかに溶けている。
ズズズ……
地面がうねる。
「来るぞ」
レオンが構える。
ドン!!
地面を突き破り、現れる。
巨大ムカデ。
全長数十メートル。
外殻は黒光りし、粘液が滴る。
「……でかいな」
ガルドが笑う。
「いつも通りいく」
レオンが短く言う。
ミレイが杖を掲げる。
「凍れ」
氷魔法。
直撃。
「……あれ?」
ミレイの声がわずかに揺れる。
凍らない。
表面が一瞬白くなるだけで――すぐ溶ける。
「耐性か」
レオンが言う。
「問題ない」
ガルドが前に出る
ドォン!!
尾が振られる。
「っ!」
ガルドが盾で受ける。
だが。
吹き飛ぶ。
「重っ……!」
「毒が来る!」
ルナが叫ぶ。
ムカデの口から、濃い液体が噴き出す。
地面が溶ける。
「散開!」
レオンが斬り込む。
斬撃。
だが――
「硬いな」
浅い。
「外殻が厚い!」
ミレイが分析する。
「内部狙い!」
ムカデが潜る。
地面に消える。
「下だ!」
次の瞬間。
足元から突き上げ。
「くっ!」
レオンがかわす。
だがガルドが掠る。
「毒……!」
「浄化!」
ルナが即座に回復。
だが。
「強い……抜けきらない!」
「面倒だな」
レオンが舌打ちする。
ここまでは全て“余裕”だった。
だが。
今回は違う。
「連携上げる」
ミレイが言う。
「火で外殻温度を上げて、そこに氷を当てる」
「割る気か」
「そう」
「やるぞ」
レオンが頷く。
火。
集中。
ムカデの一部が赤くなる。
そこへ。
氷。
急激な温度差。
パキン
外殻にヒビ。
「……効いた」
ミレイの目が細くなる。
「そこだ!」
レオンが突っ込む。
ヒビへ斬撃。
深く入る。
ムカデが暴れる。
咆哮。
空気が震える。
「まだ終わらない!」
ガルドが前に出る。
盾で押さえる。
「……ちっ」
レオンが息を吐く。
「時間がかかるな」
「でも」
ミレイが静かに言う。
「勝てる」
戦いは続く。
初めての“攻略戦”。
圧倒ではない。
理解と工夫の戦い。
一方。
「……へぇ」
アクアが石板を見ている。
「止まったな」
Sクラス。
四十階。
苦戦。
「いいね」
ユウが笑う。
「ちゃんとボスしてる」
「だろ?」
「でも突破はされるよ」
「わかってる」
アクアが腕を組む。
「問題は」
目が細くなる。
「どれだけ削れるか、だ」
迷宮は応える。
強者に対してこそ。
牙を剥く。




