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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第37話「規格外」


「……なあ、ユウ」

 コントロール室。

 石板を見ながら、アクアが口を開く。

「ん?」

「俺たちってさ」

 少し間を置く。

「どう見えてるんだ?」

「どういうこと?」

「冒険者のステータス、見えるだろ?」

「ああ、うん」

「HPとか、クラスとか」

「見えるね」

「じゃあ――」

 アクアが振り返る。

「俺も見えるのか?」


「……なるほど」

 ユウが頷く。

「やってみようか」

「頼む」

 アクアがコントロール室の外へ出る。

「じゃあ見るね」

 ユウが石板に視線を向ける。

 一瞬。

「……え?」

 固まる。

「……なにこれ」

 慌てて近くの石を拾う。

 床に書き始める。

 数字。

 クラス。

 急いでメモする。

 アクアが戻る。

「どうだ?」

「見えた」

「で?」

 ユウが振り返る。

「HPは――32333」

「……は?」

 アクアの顔が止まる。

「クラスは……Sが五つ」

「……はぁ?」

「そんなあるのか?」

「あるみたい」

「……マジかよ」

 アクアが頭を掻く。

「ちょっと自覚なかったな……」

「私も見てみたい」

 ユウが言う。

「いいぞ」

 今度はユウが外へ出る。

 アクアが石板を見る。

 一瞬で表示される。

「……」

 無言。

「……おい」

 思わず声が漏れる。

 石を拾う。

 同じように書く。

 数字。

 クラス。

 ユウが戻る。

「どうだった?」

「……お前な」

 アクアが苦笑する。

「HP、33553」

「へぇ」

「クラスは……Sが六つ」

「……あら」

 ユウが首をかしげる。

「そんなもんなんだ」

「そんなもんじゃねぇよ」

「俺より上じゃねぇか」

「ちょっとだけでしょ?」

「十分だろ」

 アクアがため息をつく。

「……あまり変わらないね」

 ユウが軽く言う。

「感覚おかしいぞ」

「じゃあ」

 ユウがにやりとする。

「また手合わせする?」

「……いや」

 アクアが即答する。

「やめとく」

「えー」

「あと命、二つしかないからな」

「あ、そっか」

 ユウが笑う。

「……それにしても」

 アクアが石板に目を向ける。

 Sクラスのパーティ。

 レオンたち。

「HP……2000から4000か」

「だいたいそのくらいだね」

「クラスは?」

「S一つ」

「……なるほどな」

 アクアが静かに呟く。

「それが“人間の最強”か」

 少しだけ、間。

 そして――

 ふっと笑う。

「……じゃあ俺は何だよ」

 自分で言って、自分で笑う。

「人間じゃねぇみたいだな」

「……そうかもね」

 ユウが軽く返す。

 否定しない。

「ま、いいか」

 アクアが肩をすくめる。

「強いなら、それでいい」

 だがその目は。

 再び石板へ。

 Sクラス。

 レオン。

「……人間最強、ね」

 小さく呟く。

 その奥にあるのは明確な敵意。

 数字は示す。

 圧倒的な差。

 そして。

 その差ですら埋まらない“何か”があることを。



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