第34話「核と熱」
「……残り、少ねぇな」
アクアがエナジーバーを見て呟く。
「でもいい感じに使ってるよ」
ユウが石板を覗き込む。
「次どうするの?」
「七十二から七十九」
アクアが指を滑らせる。
「ゴーレムだ」
「お、硬いやつ」
「ただのじゃない」
にやりと笑う。
「壁から出てくる」
「……え?」
「いきなり現れて殴る蹴る」
「初見殺しじゃん」
「そうだ」
石板に配置。
壁。
その内部に潜ませる。
「で、弱点は?」
「核」
「王道だね」
「だが」
アクアが指を動かす。
「位置はランダム」
「……うわ」
「胸、頭、背中、尻」
「やめて」
「バラバラだ」
「探索ゲーになってる」
「つまり」
ユウがまとめる。
「見つけて壊すまで終わらない」
「そういうこと」
「八十階」
アクアが少し真剣になる。
「ボス」
「ゴーレム?」
「強化版」
「きた」
「核は?」
「七個」
「……多いな」
「全部壊さないと止まらない」
「面倒くさっ」
「褒め言葉だな」
「魔法は?」
「ほぼ効かない」
「うわ」
「ただし」
アクアが続ける。
「打撃は効く」
「なるほど」
「あと、水魔法」
「水?」
「削れた分が回復しない」
「継続ダメージか」
「そういうこと」
「宝箱は?」
「防御+3の強化の種」
「五個」
「いいね」
「耐久力底上げ」
「ゴーレム対策にもなる」
「八十二から八十九」
「まだやるの!?」
「最後だ」
アクアが笑う。
「サラマンダー」
「火ぃ吐くやつ」
「レプティ」
「蜥蜴人?」
「身体強化持ち」
「うわ速そう」
「速いし固い」
「弱点は?」
「氷魔法」
「分かりやすい」
「冷やすと鈍る」
「ちゃんとヒントあるね」
「……で」
アクアが手を止める。
「ここまでだな」
「え?」
「ポイント切れ」
「ほんとだ」
エナジーバーは、ほぼ空。
「……使い切ったな」
「うん」
ユウが笑う。
「でもいい感じ」
「だな」
「これ」
ユウが石板を見ながら言う。
「完全に“理解ゲー”だね」
「力だけじゃ無理」
「考えないと死ぬ」
「そういうダンジョンだ」
しばらく、二人は黙って眺める。
七十階以降。
まだ誰も到達していない領域。
「……来るかな」
ユウがぽつりと言う。
「来るさ」
アクアが即答する。
「強いやつほど、来る」
「特に」
ユウがにやりと笑う。
「Sクラス」
「……ああ」
アクアも笑う。
「試してやるよ」
核を探せ。
熱を制せ。
迷宮は、さらに牙を研ぐ。




