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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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32/50

第32話「強者の検証」


 再び――十階。

「……いたな」

 レオンが呟く。

 小ボス、チョリキ。

 唸り声を上げ、突進の構え。

「来るぞ」

 ガルドが盾を構える。

 だが。

「遅い」

 レオンが一歩前に出る。

 踏み込み。

 一閃。

 ――終わり。

「……はい終わり」

 ミレイが淡々と言う。

「弱いね」

 ルナも静かに頷く。

「で」

 ガルドが指差す。

 宝箱。

「またこれか」

「同じかどうか、検証するか?」

 ミレイが言う。

「いいね」

 レオンが頷く。

「開けろ」

「任せろ」

 ガルドが近づく。

 宝箱を開ける。

 光。

「……剣だな」

「さっきと同じ」

 ミレイが即答する。

「つまり固定報酬か」

 次の瞬間。

 足元に光。

「来たな」

 転移。

 地上。

「……結論」

 レオンが言う。

「同じだな」

「じゃあもう」

 ガルドが笑う。

「開ける必要ないな」

「……ああ」

 レオンが頷く。

「もう開けるな」

「ウス」


 三度目の侵入。

 同じ流れ。

 だが今度は宝箱を無視。

 そのまま進む。


「……これが」

 十一階。

 水の音。

「回復の泉か」

 ルナが呟く。

 澄んだ水。

「飲めるのかな」

 レオンがしゃがむ。

 手ですくう。

 一口。

「……普通だな」

「ダメージ受けてないしね」

 ミレイが言う。

「検証にならん」


「……ん?」

 ガルドが指差す。

 奥。

 泉の中。

 初心者パーティ。

「……入ってる」

「風呂か?」

「うわ……」

 レオンが顔をしかめる。

「汚な……」

「飲んだ後にそれ言う?」

 ミレイが冷静に突っ込む。

「……最悪だ」


「……ちょっと試すか」

 レオンが立ち上がる。

「え?」

 ルナが一瞬だけ止めようとする。

 だが――

 もう遅い。

 レオンが、初心者へ歩み寄る。

「な、なんですか……?」

 震える声。

 その瞬間。

 レオンの剣が閃く。

「っ!?」

 浅く斬る。

「なにすんだ!?」

 初心者が叫ぶ。

 血が滲む。

 だが。

 そのまま泉に浸かる。

 すると――

「……あ」

 傷が、ゆっくりと塞がる。

「……回復してる」

 ミレイが観察する。

「……ほんとだ」

 ガルドも頷く。

「ほらな」

 レオンが言う。

「回復してるからいいだろ」

「いやよくないでしょ」

 ミレイが冷静に返す。

「……すみません……」

 初心者が震える。

 目の前の四人。

 明らかに強者。

 逆らえない。

「やめてください……」

 それが精一杯だった。

「……行くぞ」

 レオンが背を向ける。

「はいはい」

 ガルドが笑う。

「データは取れた」

「十分だね」

 ミレイも頷く。

 ルナだけが、少しだけ振り返る。

「……事故だと思って」

 小さく呟く。

 そして四人は。

 さらに奥へ進む。

「……なるほどな」

 レオンが言う。

「ただの回復じゃない」

「リスク管理用だね」

 ミレイが補足する。

「設計者、分かってる」

「……ああ」

 レオンが、少しだけ笑う。

「これは“遊び”じゃない」

 Sクラス。

 本気で攻略を始める。

 その一歩が――踏み込まれた。



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