第32話「強者の検証」
再び――十階。
「……いたな」
レオンが呟く。
小ボス、チョリキ。
唸り声を上げ、突進の構え。
「来るぞ」
ガルドが盾を構える。
だが。
「遅い」
レオンが一歩前に出る。
踏み込み。
一閃。
――終わり。
「……はい終わり」
ミレイが淡々と言う。
「弱いね」
ルナも静かに頷く。
「で」
ガルドが指差す。
宝箱。
「またこれか」
「同じかどうか、検証するか?」
ミレイが言う。
「いいね」
レオンが頷く。
「開けろ」
「任せろ」
ガルドが近づく。
宝箱を開ける。
光。
「……剣だな」
「さっきと同じ」
ミレイが即答する。
「つまり固定報酬か」
次の瞬間。
足元に光。
「来たな」
転移。
地上。
「……結論」
レオンが言う。
「同じだな」
「じゃあもう」
ガルドが笑う。
「開ける必要ないな」
「……ああ」
レオンが頷く。
「もう開けるな」
「ウス」
三度目の侵入。
同じ流れ。
だが今度は宝箱を無視。
そのまま進む。
「……これが」
十一階。
水の音。
「回復の泉か」
ルナが呟く。
澄んだ水。
「飲めるのかな」
レオンがしゃがむ。
手ですくう。
一口。
「……普通だな」
「ダメージ受けてないしね」
ミレイが言う。
「検証にならん」
「……ん?」
ガルドが指差す。
奥。
泉の中。
初心者パーティ。
「……入ってる」
「風呂か?」
「うわ……」
レオンが顔をしかめる。
「汚な……」
「飲んだ後にそれ言う?」
ミレイが冷静に突っ込む。
「……最悪だ」
「……ちょっと試すか」
レオンが立ち上がる。
「え?」
ルナが一瞬だけ止めようとする。
だが――
もう遅い。
レオンが、初心者へ歩み寄る。
「な、なんですか……?」
震える声。
その瞬間。
レオンの剣が閃く。
「っ!?」
浅く斬る。
「なにすんだ!?」
初心者が叫ぶ。
血が滲む。
だが。
そのまま泉に浸かる。
すると――
「……あ」
傷が、ゆっくりと塞がる。
「……回復してる」
ミレイが観察する。
「……ほんとだ」
ガルドも頷く。
「ほらな」
レオンが言う。
「回復してるからいいだろ」
「いやよくないでしょ」
ミレイが冷静に返す。
「……すみません……」
初心者が震える。
目の前の四人。
明らかに強者。
逆らえない。
「やめてください……」
それが精一杯だった。
「……行くぞ」
レオンが背を向ける。
「はいはい」
ガルドが笑う。
「データは取れた」
「十分だね」
ミレイも頷く。
ルナだけが、少しだけ振り返る。
「……事故だと思って」
小さく呟く。
そして四人は。
さらに奥へ進む。
「……なるほどな」
レオンが言う。
「ただの回復じゃない」
「リスク管理用だね」
ミレイが補足する。
「設計者、分かってる」
「……ああ」
レオンが、少しだけ笑う。
「これは“遊び”じゃない」
Sクラス。
本気で攻略を始める。
その一歩が――踏み込まれた。




