第31話「Sクラスの来訪」
「……ここだな」
男が、ダンジョンの入口を見上げる。
名はレオン。
Sクラスパーティ《蒼刃の誓い》のリーダー。
大剣を背負った戦士だ。
「最近、やたら噂になってるな」
隣で腕を組むのは、盾役のガルド。
重装の巨漢。
「“楽しいダンジョン”だっけ?」
皮肉混じりに笑う。
「遊びじゃないんだけどね」
後ろで肩をすくめるのは、魔法使いのミレイ。
冷静な目をしている。
「でも報酬は悪くないって聞くよ」
最後に口を開いたのは、バフデバフ兼回復役のルナ。
穏やかな声。
「……まあ」
レオンが軽く頷く。
「暇つぶしにはなるか」
「前に来たことあるよな?」
ガルドが言う。
「ああ」
レオンが答える。
「何ヶ月か前に、五十階までな」
「正直、つまらなかったよね」
ミレイが即答する。
「単調だった」
「だからやめた」
ルナも頷く。
「……だが」
レオンが視線を向ける。
「今は違うらしい」
四人は、迷宮へ足を踏み入れる。
「……ほう」
十階小ボス余裕でクリア。
レオンが足を止める。
部屋の中央。
宝箱。
「これが噂のか」
ガルドが近づく。
「どうする?」
ミレイが聞く。
「開けるか?」
少しの沈黙。
そして。
「……開ける」
レオンが言う。
宝箱を開く。
光。
「……剣か」
中級の剣。
見た目は立派。
だが。
「……普通だな」
レオンが軽く振る。
「悪くはないけど」
「Sクラス向けじゃないね」
ミレイが冷静に評価する。
「……で」
ガルドが言う。
「これ、どうなる?」
次の瞬間。
足元に光。
「お?」
転移。
地上。
入口の前。
「……なるほど」
レオンが呟く。
「強制帰還か」
「罠だね」
ミレイが言う。
「でも悪くない」
ルナが微笑む。
「初心者には優しいかも」
「……そうだな」
レオンが頷く。
「で?」
ガルドがニヤリと笑う。
「どうする?」
レオンも、わずかに口元を上げる。
「……もう一回入る」
「だろうな」
「さっきのは“入口”だ」
レオンが言う。
「本番は、その先だろ」
「同意」
ミレイが即答する。
「今のはチュートリアル」
「面白くなってきた」
ガルドが笑う。
「……行こう」
ルナが静かに言う。
再び、迷宮へ。
同じ入口。
だが――
今度は違う。
「……さて」
レオンが前を向く。
「どこまで変わったか、見せてもらおうか」
Sクラス。
本気の探索が、始まる。




