第30話「楽園」
※私の多くの作品はアルファポリスに掲載してます。
※探せるかな?
「……ん?」
100階。
いつもの部屋に戻ったアクアが、足を止める。
「……ドア?」
見覚えのない扉。
昨日までは、確実に無かった。
「また出たね」
ユウが興味津々で近づく。
「エナジー連動か?」
「たぶんね」
「……開けるぞ」
「うん!」
扉を開けた瞬間――
「……は?」
視界が、開ける。
青。
どこまでも続く海。
白い砂浜。
ゆらゆら揺れるパラソル。
潮の匂い。
「……なにこれ」
「……パラダイス?」
ユウがぽかんとする。
二人は、しばらく無言で立ち尽くす。
風が、心地いい。
波の音が、優しく響く。
「……行くか」
「行こ!」
次の瞬間。
砂浜へ駆け出していた。
「うおっ、あったか!」
アクアが海に飛び込む。
「気持ちいい!!」
ユウも続く。
水しぶきが上がる。
「これダンジョンの中だよね!?」
「もう分かんねぇな!」
笑いながら泳ぐ。
浮かぶ。
潜る。
ただそれだけで楽しい。
「……なにこれ」
ユウが指差す。
浜辺。
大きな箱。
「またか」
アクアが開ける。
ひんやりした空気。
「……おお」
中には――
飲み物。
色とりどりの瓶。
「パラダイスドリンクって書いてる」
「そのまんまだな」
一本取り出す。
飲む。
「……うまっ」
「ほんと!?」
ユウも飲む。
「なにこれ!?」
「甘いのにさっぱりしてる」
「止まらない!」
「……肉もあるぞ」
「やるしかないね」
火を起こす。
網を置く。
肉を焼く。
じゅうう、と音がする。
「……最高だな」
「うん……」
焼けた肉を食べる。
ドリンクで流す。
風が吹く。
「……やばい」
「やばいね」
語彙が消える。
「ビーチバレーやろう!」
「なんであるんだよボール!」
「いいじゃん!」
ユウが投げる。
反射的に返す。
砂に足を取られながらも、笑う。
「お前強いな!」
「でしょ!」
跳ぶ。
打つ。
転ぶ。
笑う。
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※探せるかな?
「……疲れた」
アクアが砂浜に倒れる。
「同じく」
ユウも隣に倒れる。
空を見上げる。
雲がゆっくり流れていく。
「……こんなの、ありかよ」
「いいじゃん」
ユウが小さく笑う。
「頑張ってるご褒美」
「……だな」
その後も。
泳いで。
食べて。
飲んで。
笑って。
ただ、過ごした。
時間の感覚が、消える。
「……ねむ」
「……俺も」
ベッド。
これも、ちゃんと用意されている。
「なんでもあるな」
「ほんとにね」
横になる。
体が重い。
心地いい疲れ。
「……おやすみ」
「……おやすみ」
意識が沈む。
何も考えずに。
ただ、眠る。
深く。
泥のように。
迷宮の主も。
その補佐も。
この日だけは――
ただの、少年と少女だった。
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