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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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30/50

第30話「楽園」

※私の多くの作品はアルファポリスに掲載してます。

※探せるかな?


「……ん?」

 100階。

 いつもの部屋に戻ったアクアが、足を止める。

「……ドア?」

 見覚えのない扉。

 昨日までは、確実に無かった。

「また出たね」

 ユウが興味津々で近づく。

「エナジー連動か?」

「たぶんね」

「……開けるぞ」

「うん!」


 扉を開けた瞬間――

「……は?」

 視界が、開ける。

 青。

 どこまでも続く海。

 白い砂浜。

 ゆらゆら揺れるパラソル。

 潮の匂い。

「……なにこれ」

「……パラダイス?」

 ユウがぽかんとする。


 二人は、しばらく無言で立ち尽くす。

 風が、心地いい。

 波の音が、優しく響く。

「……行くか」

「行こ!」

 次の瞬間。

 砂浜へ駆け出していた。


「うおっ、あったか!」

 アクアが海に飛び込む。

「気持ちいい!!」

 ユウも続く。

 水しぶきが上がる。

「これダンジョンの中だよね!?」

「もう分かんねぇな!」

 笑いながら泳ぐ。

 浮かぶ。

 潜る。

 ただそれだけで楽しい。


「……なにこれ」

 ユウが指差す。

 浜辺。

 大きな箱。

「またか」

 アクアが開ける。

 ひんやりした空気。

「……おお」

 中には――

 飲み物。

 色とりどりの瓶。

「パラダイスドリンクって書いてる」

「そのまんまだな」

 一本取り出す。

 飲む。

「……うまっ」

「ほんと!?」

 ユウも飲む。

「なにこれ!?」

「甘いのにさっぱりしてる」

「止まらない!」


「……肉もあるぞ」

「やるしかないね」

 火を起こす。

 網を置く。

 肉を焼く。

 じゅうう、と音がする。

「……最高だな」

「うん……」

 焼けた肉を食べる。

 ドリンクで流す。

 風が吹く。

「……やばい」

「やばいね」

 語彙が消える。


「ビーチバレーやろう!」

「なんであるんだよボール!」

「いいじゃん!」

 ユウが投げる。

 反射的に返す。

 砂に足を取られながらも、笑う。

「お前強いな!」

「でしょ!」

 跳ぶ。

 打つ。

 転ぶ。

 笑う。


※私の多くの作品はアルファポリスに掲載してます。

※探せるかな?

「……疲れた」

 アクアが砂浜に倒れる。

「同じく」

 ユウも隣に倒れる。

 空を見上げる。

 雲がゆっくり流れていく。

「……こんなの、ありかよ」

「いいじゃん」

 ユウが小さく笑う。

「頑張ってるご褒美」

「……だな」


 その後も。

 泳いで。

 食べて。

 飲んで。

 笑って。

 ただ、過ごした。

 時間の感覚が、消える。


「……ねむ」

「……俺も」

 ベッド。

 これも、ちゃんと用意されている。

「なんでもあるな」

「ほんとにね」

 横になる。

 体が重い。

 心地いい疲れ。

「……おやすみ」

「……おやすみ」


 意識が沈む。

 何も考えずに。

 ただ、眠る。

 深く。

 泥のように。


 迷宮の主も。

 その補佐も。

 この日だけは――

 ただの、少年と少女だった。


※私の多くの作品はアルファポリスに掲載してます。

※探せるかな?

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