第28話「慣れと油断」
「……来てるな」
石板の前で、アクアが呟く。
二十一階。
複数のパーティが同時に侵入している。
「増えたね」
ユウが画面を覗き込む。
「明らかに動きが違う」
「……慣れてる」
ゾンビが現れる。
だが
「来たぞ!」
「落ち着け、パターン通りだ!」
冷静に処理。
恐怖に飲まれていない。
「……攻略されてるな」
アクアが苦笑する。
「だねー」
ユウも頷く。
「怖いけど、もう知ってるって感じ」
二十二階。
生暖かい風。
「……来るぞ」
事前に警戒。
スケルトンの奇襲も対応。
無駄がない。
「……早いな」
「うん、かなり安定してる」
二十三階。
以前、あのパーティが止まった場所。
だが
「行ける!」
「押し切れ!」
突破。
「……越えた」
「ほんとだ」
ユウが少し驚く。
「やっぱり慣れると強いね」
「……だから次が必要なんだよ」
アクアが静かに言う。
二十階。
チョリキ。
突進。
だが
「横!」
「分かってる!」
完璧な回避。
カウンター。
「……早い」
「攻略されてる」
あっさり撃破。
「……チョリキ……」
ユウが少し寂しそう。
「仕方ねぇよ」
「頑張ったのに」
「ボスの宿命だ」
二十一階。
回復。
そして――
宝箱。
「開けるぞ」
アクセサリーを手に入れる。
「……これが噂の」
「恐怖、軽くなるぞ」
装備。
「……ほんとだ」
「楽になる」
「じゃあ行くぞ」
「……来るな」
アクアが呟く。
「うん」
ユウも真剣な顔になる。
「三十階」
暗い通路。
ホラーゾーン最深部を抜ける。
そして
階段。
「……ここから先は未知だ」
「行くしかないだろ」
進む。
三十階。
広い部屋。
中央に骸骨の魔術師。
リッチ。
「……なんだあれ」
「魔法系だな」
構える。
前衛が突っ込む。
剣を振る。
当たる。
だが。
「……効いてない?」
ほぼ無傷。
「魔法だ!」
火球。
当たる。
「……ちょっと効いた?」
だが微々たるもの。
「……おかしい」
違和感。
だがその時。
リッチが手を上げる。
黒い魔力。
「来るぞ!」
次の瞬間。
地面からゾンビが現れる。
「っ!?」
「増えた!?」
一体。
また一体。
十秒ごとに増える。
「キリがない!」
「先に本体を!」
突っ込む。
だが効かない。
「くそっ!」
後衛が魔法を撃つ。
風。
氷。
雷。
通らない。
「……なんだこれ!?」
パニック。
「弱点があるはずだ!」
だが。
分からない。
その間にも。
ゾンビは増え続ける。
「囲まれるぞ!」
「下がれ!」
混乱。
連携が崩れる。
「……ダメだ!」
「撤退!」
だが。
遅い。
ゾンビが押し寄せる。
逃げ場がない。
「くっ……!」
必死に突破して――
なんとか離脱。
階段を駆け上がる。
二十九階。
息を切らす。
「……なんだあれ……」
「勝てる気がしない……」
誰も言葉を失う。
「……どうだった?」
ユウが聞く。
「……予想通り」
アクアが静かに答える。
「詰んだな」
「うん」
「でも」
アクアが少し笑う。
「ヒントは出してる」
「火魔法」
「気づくかどうかだな」
「……楽しみだね」
ユウがにやりと笑う。
ダンジョンは、次の段階へ。
“力”ではなく、“理解”が問われる。
そして――
挑戦者たちは、再び戻ってくる。




