第27話「報酬と食卓」
アクアは、100階に戻っていた。
「……宝箱」
何気なく食材冷蔵箱を開ける。
中を見て――
「……でか」
思わず声が出た。
そこには、巨大なエビ。
殻は赤く艶やかで、見るからにうまそうだ。
「……豪華になってきてないか?」
ユウが覗き込む。
「前より明らかにいい」
「……これ、もしかして」
アクアが呟く。
「ポイント連動か?」
「どういうこと?」
「ダンジョンが稼いでると、支給品も良くなる」
「……あー」
ユウが納得する。
「ありそう」
「……まあいいか」
結論は早い。
「食う」
「それが一番」
ユウが即答。
キッチン。
湯を沸かす。
エビを入れる。
軽く茹でる。
「……いい匂い」
ユウが近づく。
「まだだ」
取り出す。
半分に切る。
中は白く、プリっとしている。
そこに――
「これ何だ?」
黄色いクリーム状の調味料。
よく分からない。
「かけてみる?」
「いくか」
たっぷり乗せる。
ハーブを散らす。
そして――
石窯へ。
「……贅沢だな」
「うん」
「こっちも」
アクアが袋を取り出す。
「……米?」
「っぽいね」
鍋に入れる。
水を入れる。
火にかける。
「……炊けるか?」
「たぶん」
しばらくすると。
ふわっとした香り。
「……いい匂い」
「腹減った……」
石窯を開ける。
じゅわっと音がする。
エビが焼けている。
香ばしい匂い。
「……やばいなこれ」
「早く」
ユウが急かす。
皿に盛る。
白い米。
その横に、大きな焼きエビの半身。
黄金色のソースが、とろりとかかっている。
「……いただきます」
二人同時に食べる。
一口。
「……」
「……」
沈黙。
そして――
「……うま」
「……うまい」
エビはぷりぷり。
甘みと旨味。
クリームのコク。
ハーブの香り。
全部が合う。
「これやばい」
「過去一かも」
夢中で食べる。
「……これも」
アクアが瓶を持つ。
「ワイン?」
「っぽいな」
グラスに注ぐ。
赤い液体。
香りを嗅ぐ。
「……いい匂いだ」
少し飲む。
「……合うな」
「ずるい、私も」
ユウも飲む。
「……なにこれ」
「うまいだろ」
「大人の味……」
「……で」
食べながら。
アクアが言う。
「宝箱の中身」
「うん」
「ホラー対策だな」
「だね」
二人の視線が合う。
「恐怖耐性」
「それしかない」
「形は?」
「ネックレス?」
「指輪?」
「ブレスレット?」
少し悩む。
「……」
アクアが考える。
そして。
「全部入れるか」
「え?」
「四つ」
「……あ」
「パーティ分」
「それいい!」
ユウが笑う。
「全員分あると嬉しい」
「だろ」
「しかも一個だけじゃないからケンカにならない」
「重要だなそれ」
「じゃあ決まりだな」
アクアが立ち上がる。
「恐怖耐性アクセ四種」
「名前どうする?」
「……」
少し考えて。
「“勇気の証”とか?」
「普通だね」
「じゃあ考えろ」
「“びびらない君セット”」
「却下」
「なんで!?」
「ダサい!」
「えー!」
笑いながら。
石板へ向かう。
ダンジョン。
報酬。
体験。
すべてが繋がっていく。
「……いい感じだな」
「うん」
ユウが頷く。
「ちゃんと“攻略したくなるダンジョン”になってる」
「……だな」
アクアも、小さく笑う。
恐怖を越えた者に。
報酬を。
次の挑戦のために。
迷宮は、さらに深くなる。




