第21話「回復と罠と無駄遣い」
石板の前。
ユウが、どや顔で言った。
「できた!」
「……何が?」
「一階に回復の泉!」
「は?」
アクアは、即座に振り返る。
「一階?」
「うん!」
「なんでだよ!!」
思わず叫ぶ。
「嬉しいでしょ?」
「ノーダメージだろ一階!!」
「……あ」
ユウが、固まる。
「……そうか」
「そうだよ!」
「頭いい~」
なぜかユウが感心して、アクアの頭を撫でた。
「やめろ!」
「えー」
「ほら、消すぞ」
即削除。
エナジーが少し戻る。
「じゃあさ」
ユウがすぐに立て直す。
「十一階ならいいでしょ?」
「……十階の後か」
アクアが考える。
ウルフ戦の後。
確かに需要はある。
「それならアリだな」
「でしょ!」
ユウが嬉しそうに操作する。
そして――
「できた!」
「……どれ」
映像を見る。
そこには。
巨大な水場。
「……深くね?」
「水深十メートル!」
「バカか!!」
即ツッコミ。
「鎧着てたら沈むだろ!!」
「あ」
「溺死→回復→溺死→回復とか地獄だぞ!?」
「……確かに」
「悪魔かお前」
「えへ」
「褒めてねぇよ!」
「じゃあ……」
ユウが再調整する。
「これでどう?」
水位が下がる。
「……五十センチか」
「うん!」
「それならいい」
ようやくまともになった。
「やった!」
ガッツポーズ。
「……先に考えろよ」
「考えてるよ?」
「結果それなんだよ!」
「次だな」
アクアが石板を操作する。
「十二階」
「おおー」
「ここに……オークだな」
「いいね」
筋肉質の魔物。
こん棒持ち。
シンプルだが、強い。
「三体でいいか」
配置。
完了。
「……で、ポイント切れか」
「ほんとだ」
だが――
ゲージは、じわじわ伸びている。
「最近、安定してるな」
「人増えたもんね」
石板を見る。
一階、二階、三階――
常に誰かがいる。
「五十人以上は来てるな」
「人気ダンジョンじゃん」
「……まあな」
少しだけ、嬉しい。
だが。
「問題は……」
「うん」
「十一階、誰も来てない」
沈黙。
原因は明白。
「十階の宝箱だね」
「だな」
強制帰還。
あれを取れば、終わり。
「……悩むよね」
ユウがにやりと笑う。
「宝箱取るか、先に進むか」
「心理的罠だな」
「いいでしょ?」
「悪くない」
実際、機能している。
「じゃあさ」
ユウが身を乗り出す。
「罠、作ろうよ」
「どんな?」
「毒の沼地!」
「おう」
「で、動く岩!」
「……ほう」
「岩に乗って進むの」
「……いいな」
リスクと操作。
面白い。
「落ちたらダメージ!」
「それくらいならアリだな」
「でしょ!」
ユウがすぐに作り始める。
沼地。
岩。
配置。
「できた!」
「どれどれ……」
アクアが覗き込む。
次の瞬間。
「……おい」
「なに?」
「これ、毒強すぎね?」
「え?」
「落ちたら即死じゃねぇか!」
「うん!」
「うんじゃねぇ!!」
即削除。
エナジーが戻る。
だが――
「……減ってるな」
「え?」
「八割しか返ってきてねぇ」
「……あ」
二人で固まる。
「……作る前に言えよ!!」
「知らなかったんだもん!」
「お前元管理者だろ!?」
「細かいことは覚えてない!」
「致命的だわ!!」
思わず頭を抱える。
ユウは、少し考えて。
「じゃあさ」
「……なんだ」
「薄めればいい?」
「最初からそうしろ!」
「てへ」
「笑って誤魔化すな!」
だが――
またエナジーは溜まっていく。
そしてまた。
ダンジョンは、少しずつ変わっていく。
ポンコツと、有能の手で。




