第140話 角兎の狩り
雪原街道。
南へ。
ユニコーン馬車は、氷の道を滑るように進んでいた。
アクア。
手綱を握る。
「地図だと、来た道を戻って分かれ道を右だな」
ユウ。
運転席から地図をのぞく。
「そのあと?」
アクア。
「しばらく真っすぐ」
ユキ。
「どれくらいです?」
アクア。
「六十日くらい」
ユキ。
「長ぁ!?」
スケールが大きかった。
しかし。
ユニコーン達は速い。
軽い上り坂。
凍った街道。
それでも。
風みたいに駆けていく。
カツン。
カツン。
カツン。
白い息。
晴天。
雪の反射が眩しく、世界全体がきらきら光っていた。
ユキ。
窓から顔を出す。
「きれいですねぇ……」
その時。
ぴょんっ。
雪原を何かが横切った。
ユウ。
「あっ!」
指差す。
「兎だ!」
白い毛。
長い耳。
雪の上を高速で跳ねている。
ユキ。
「わぁぁ、かわいい~!」
二人。
窓から身を乗り出して眺める。
ぴょん。
ぴょん。
もふもふ。
しかし。
その先。
雪の丘の向こう。
巨大な白熊。
真っ白な毛並み。
二足立ちすれば三メートル以上ありそうだった。
ユキ。
「く、熊!?」
その瞬間。
兎。
加速。
ドシュゥゥゥ!!
「え?」
兎の頭。
角。
鋭い一本角が生えていた。
しかも。
魚雷みたいな速度。
ズドォ!!
白熊の腹へ突撃。
貫通。
熊。
「グォォォ!?」
さらに。
二匹目。
三匹目。
ドドドドド!!
角兎達が次々突っ込む。
白熊。
血しぶき。
転倒。
雪が真っ赤に染まった。
ユウ。
「……」
ユキ。
「……」
さっきまで。
かわいいと言っていた口が止まる。
そして。
倒れた熊へ。
角兎が集まる。
五匹。
ガツガツ。
バリバリ。
血まみれで捕食開始。
ユキ。
「うわぁぁ……」
言葉を失う。
ユウ。
「野生ってこわいんだね……」
アクア。
前を向いたまま。
「みんな生きるためだ」
ユキ。
静かに頷く。
角兎達は。
血だらけの口で肉を引き裂きながら、それでも小動物みたいにぴょこぴょこ動いていた。
かわいい。
でも怖い。
自然そのものだった。
馬車はその横を通り過ぎていく。
風。
雪。
青空。
そして。
果てしない白銀の道。
サンダーとウインドは快調に走り続けた。




