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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第13話「連携と退場」


 十階。

 扉が開く。

 四人パーティが、足を踏み入れる。

「……部屋型か」

 前衛の男が、低く呟く。

 視線が走る。

 出口。

 壁。

 天井。

 そして――

「来るぞ!」

 気配を捉えた瞬間。

 三つの影が、同時に動いた。

 左右から二体。

 正面から一体。

「速っ!?」

 反応が、一瞬遅れる。

 だが――

 前衛が踏み込む。

 盾で受ける。

 ――衝撃。

「ぐっ……!」

 重い。

 単なる獣の突進じゃない。

 連携して、力を乗せている。

「散開しろ!」

 後衛が叫ぶ。

 その瞬間。

 三体のウルフが、バラける。

 囲む。

 視界の外へ。

「くそ、位置取られてる!」

「魔法いく!」

 詠唱。

 だが――

 ウルフが跳ぶ。

 横へ。

 後ろへ。

 魔法は、空を裂く。

「避けた!?」

「こいつら、分かってるぞ!」

 再び、接近。

 一体がフェイント。

 もう一体が、死角から突っ込む。

「っ!?」

 後衛の一人が、反応が遅れる。

 ――ヒット。

「ぐあっ!」

 体が吹き飛ぶ。

 床を転がる。

「回復!」

 すぐに別の後衛が詠唱。

 光が傷を覆う。

 だが――

「来る!」

 回復の隙を、狙われる。

 三体が、一斉に動く。

「防げ!」

 前衛が割って入る。

 ギリギリで受ける。

 だが――

「くそ、連携エグい!」

 息が乱れる。

 明らかに、押されている。

 それでも。

「パターン見えた!」

 中央の男が叫ぶ。

 動きが鋭い。

 観察している。

「突進は直線!合わせろ!」

 次の瞬間。

 ウルフが、突っ込む。

 それに合わせて――

 剣が振られる。

 ――カウンター。

 一体が弾かれる。

「今だ!」

 集中攻撃。

 一体、撃破。

「よし!」

 だが――

 残り二体。

 連携は、崩れない。

「油断すんな!」

 再び、囲まれる。

 だが、さっきとは違う。

 対応している。

 読み始めている。

「左来る!」

「分かってる!」

 連携。

 対連携。

 戦いが、拮抗する。

 そして――

「終わりだ!」

 最後の一体を、叩き斬る。

 沈黙。

「……はぁ……」

「やべぇな、ここ……」

「ただの中層じゃねぇぞ」

 息を整えながら、周囲を見る。

 そして――

「お、宝箱」

 部屋の奥。

 豪華な箱。

「罠、あるか?」

「……いや、なさそうだ」

 慎重に近づく。

 開ける。

 中には――剣。

「おお、いい感じじゃね?」

「当たりだな」

 手に取る。

 その瞬間。

 空気が、わずかに揺れる。

「……ん?」

 違和感。

 だが、遅い。

 光が、足元から立ち上がる。

「え、ちょ――」

「まさか――」

 視界が、白に包まれる。

 そして――

 消えた。

 その直前。

「強制帰還かよ~!」

 ツッコミだけを残して。

 静寂が戻る。

 十階。

 誰もいない部屋。

 ただ、戦いの余韻だけが残る。

「……成功、だな」

 石板の前で、呟く。

 ウルフ。

 機能した。

 通用した。

 そして――

 帰還トラップ。

 完璧に決まった。

「……いいな、これ」

 口元が緩む。

 勝ったわけじゃない。

 倒したわけでもない。

 だが――

 “コントロールした”。

 進行を。

 時間を。

 流れを。

「……これが、運営か」

 静かに呟く。

 ただ強いだけじゃない。

 どう動かすか。

 どう止めるか。

 それが――

 この迷宮の本質。


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