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奈落に落とされたが、そこは俺の領域だった  作者: 忍絵 奉公


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第12話「時間を買う設計」


 石板に映る一団を見て、思わず息を呑む。

「……またか」

 速い。

 昨日の連中とは別かもしれない。

 だが、同じ匂いがする。

 一階から無駄がない。

 判断が早い。

 そして――

「……もう八階?」

 ありえない速度で到達していた。

「……まずいな」

 エナジーは、ある程度回復している。

 だが、余裕はない。

 時間もない。

 このままでは――また素通りされる。

「……十階、間に合わせる」

 決断する。

 石板に手を置く。

 十階、小ボス部屋。

 空の空間。

 そこに――

「……何がいい」

 考える時間は、ほとんどない。

 だが、中途半端は意味がない。

「……やりがい、だな」

 単純な強さじゃない。

 “対応できるかどうか”。

 そこに価値を置く。

「……三体」

 数。

 連携。

 個の強さよりも、組み合わせ。

「ウルフ」

 イメージする。

 しなやかな体。

 鋭い牙。

 無駄のない動き。

 そして――連携。

 次の瞬間。

 空間に、三つの影が現れる。

「……いいな」

 低く唸るように、三匹が動く。

 位置を取り合う。

 囲む。

 逃げ場を潰す。

「……速い」

 単体でも速い。

 だが、三体で動くと――

 別物だ。

 視線を逸らした瞬間、死角に入る。

 魔法を撃てば、散開して回避。

 そして――再集合。

「……これだ」

 確信する。

 これは――

 “スキルがないと抜けられない敵”。

 ただの殴り合いじゃない。

 理解と対応が必要だ。

「……よし」

 次。

 報酬。

 宝箱を設置。

 見た目は豪華に。

 だが中身は――

「……中級剣でいいな」

 強すぎない。

 だが、価値はある。

 次への動機になる。

 そして――

「……仕掛けるか」

 宝箱に、細工を加える。

 開封後。

 一定時間後。

「強制帰還」

 発動条件を設定。

 この階層をクリアした瞬間――

 外へ弾き出す。

「……時間稼ぎだ」

 十一階以降。

 まだ何もない。

 空白。

 このまま通されたら、終わる。

 だから――

 ここで止める。

 考える時間を作る。

「……九階か」

 速いパーティが、もうそこまで来ている。

 時間は、ほぼゼロ。

 だが――

 間に合った。

 ふと、別の石板に目をやる。

 十一階以降。

 スライム。

 また、スライム。

「……多すぎるな」

 単調。

 そして、無駄。

 思い切って――削除する。

 スライムの配置が消える。

 その瞬間。

 エナジーが、わずかに戻る。

「……回収もできるのか」

 小さく頷く。

 無駄は削る。

 必要なところに回す。

「……よし」

 再び、十階を見る。

 部屋。

 ウルフ三体。

 宝箱。

 帰還トラップ。

 準備は整った。

「……来い」

 低く呟く。

 挑戦を、受ける。

 速いパーティが、九階を突破する。

 そして――

 十階の扉の前に立つ。

 開く。

 中へ。

「……始まるな」

 今度は、空じゃない。

 用意した舞台。

 用意した敵。

 用意した罠。

 そのすべてが――

 試される。


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