第116話 雪山ロープウェイ
翌朝。
窓の外。
白銀世界。
アクアはベランダから景色を見ていた。
吐く息が白い。
ユウはまだベッドでゴロゴロしている。
「今日はどうする?」
アクアが地図を広げる。
昨日ギルドで聞いた。
北のダンジョン。
シイロのさらに奥。
雪山地帯。
徒歩でも行けるらしい。
「ここからなら、一時間くらいだってさ」
ユウ。
「近いね」
「途中までロープウェイもあるらしい」
「ロープウェイ!?」
目が輝く。
「乗りたい!」
即答。
アクア。
「まぁそう言うと思った」
ミーちゃんは宿に置いていく事にした。
暖炉前のクッション。
完全に気に入っている。
ニャー。
「すぐ戻るからな」
ミーちゃん。
尻尾だけ振った。
そして二人は出発。
雪道を歩く。
やがて。
ロープウェイ乗り場が見えてきた。
大きな木造施設。
滑車。
巨大なロープ。
山の上へ続いている。
ユウ。
「おぉぉぉ!」
近づく。
冒険者たちが十人ほど並んでいた。
前の一団がロープウェイへ乗り込む。
箱型。
十人乗り。
全部で六台。
ぐるぐる循環している。
その後ろ。
上半身裸の屈強な男たちが巨大な丸太を回していた。
グルグルグルグル。
汗だく。
アクア。
「これが動力か……」
ユウ。
「筋肉ロープウェイだ」
アクア。
「転送陣つくればいいのに」
すると。
近くの店員が苦笑しながら近づいてきた。
「転送陣もありますよ」
「あるのかよ!」
「ギルド内にございます」
アクア。
「聞いてない」
「ただ、わざわざ景色を楽しみたいというお客様も多いんです」
「なるほど」
「ちなみに転送陣は銀貨十枚です」
ユウ。
「高っ」
店員。
「こちらは銀貨五枚です」
アクア。
「半額か」
そしてユウを見る。
「どうする?」
ユウ。
ニコニコ。
「ロープウェイ!」
アクア。
「だよな」
銀貨を払う。
店員。
「次ですので少々お待ちください」
その間。
アクアはロープを見上げた。
かなり急勾配。
しかも。
谷が深い。
落ちたらまず助からない。
ユウ。
「楽しみだね!」
アクア。
「お前高い所平気だよな」
「飛び降りても平気だし」
「基準がおかしいんだよ」
やがて。
次のロープウェイが到着した。
ギギギギ……。
雪を撒き散らしながら停止する。
扉が開く。
暖房付き。
意外と豪華だった。
アクア。
「へぇ」
ユウ。
窓際ダッシュ。
「うわぁぁ!」
二人は乗り込む。
他の冒険者も数人。
そして。
ゴウン――。
ロープウェイが動き出した。
徐々に高度が上がる。
シイロの街が小さくなっていく。
白い街。
白い城壁。
白い煙。
絶景だった。
ユウ。
「すごい……」
アクアも少し見惚れる。
その時。
遠くの雪山。
何か巨大な影が飛んだ。
一瞬。
白い翼のようなものが見えた。
アクア。
「……ん?」
ユウ。
「どうした?」
「いや……今なんか飛んでなかったか?」
しかし。
もう何も見えない。
吹雪だけが山を流れていた。




