第111話 吹雪と名前
吹雪には本当にまいった。
ゴォォォォ……。
横殴りの雪。
視界は数メートル。
白。
全部白。
道なのか崖なのかすら怪しい。
アクアは分厚い毛皮を頭までかぶりながら、必死に手綱を握っていた。
「さっむぅぅぅぅ!!」
顔が痛い。
鼻も痛い。
まつ毛に雪が凍りついている。
だが。
ユニコーン二頭は平然としていた。
むしろ元気。
雪を蹴散らしながら、ぐんぐん進んでいく。
途中。
雪の中から巨大な影。
雪大狼。
真っ白な毛並み。
通常の狼の三倍近い。
しかも群れ。
「グルルル……!」
十頭近く。
アクア。
「うわっ出た!」
だが次の瞬間。
ユニコーンが前足を上げた。
ひひーん!!
バチィィ!!
角から雷。
雪狼たち。
「キャイン!?」
吹き飛ぶ。
さらに前足で。蹴散らす。
二頭ほど雪の彼方へ消えた。
アクア。
「つよ」
ユウ。
「頼もし~」
そのまま馬車は進む。
吹雪。
運転席。
アクアもユウも雪まみれ。
本来なら。ユウは荷台で毛布に包まっていてもいい。
だが。
「中にいろって言っただろ」
「やだ」
「寒いぞ」
「アクアだけ寒いのずるい」
「意味わからん」
ユウは隣で笑っていた。
ミーちゃんだけは荷台でぬくぬくしている。
完全勝ち組。
しばらくして、ユウがふと思いついたように言った。
「ねぇ」
「ん?」
「このユニコーン、名前つけようよ」
アクア。
「あー、それはいいな」
ユウ。
少し考える。
「右が“あ”で、左が“い”」
「却下」
「なんで!?」
「短すぎて混乱する」
「じゃあ右がユニで左がコーン!」
「却下!」
「なんで!?」
「なんかかわいそう」
ユウ。
むぅっとする。
「じゃあ右が山で左が固」
「その心は?」
「アクアの股間の剣」
「却下!!!」
吹雪の中でツッコミが響いた。
ユニコーンまでビクッとした。
ユウ。
ケラケラ笑う。
「だって思いつかないんだもん」
アクア。
少し考える。
そして。
「右がウインド」
「おぉ」
「左がサンダー」
ユウの目が輝く。
「どっちも速そう!」
アクア。
「だろ?」
するとユウ。
突然立ち上がる。
「危ないぞ!」
構わず。
右のユニコーンの尻を軽く叩く。
「ウインド!」
ひひーん!
返事。
次。
左。
「サンダー!」
ひひーん!!
二頭とも元気よく鳴いた。
アクア。
「気に入ったみたいだな」
ユウ。
「今日からよろしくね!」
吹雪の中。
白銀の世界を。
ウインドとサンダーは力強く走り続けた。




