第107話 ユニコーン騒動
朝。
柔らかいベッド。
暖かい毛布。
アクアはゆっくり目を覚ました。
「ん……」
違和感。
重い。
見る。
ユウ。
しっかり腕枕で寝ている。
アクア。
「なんでだよ……」
ミーちゃんを見る。
もう一つのベッドのど真ん中で大の字。
完全占領。
どうやらユウは、ミーちゃんの寝相を避けてこっちへ来たらしい。
ユウ。
すぅすぅ。
幸せそう。
アクア。
顔が赤くなる。
「近い近い……」
そっと腕を抜こうとする。
ユウ。
ぎゅう。
さらに抱きついてくる。
「うおっ」
アクア。
固まる。
ミーちゃん。
ちらっと見る。
「ニャー」
「助けろ」
当然助けない。
数分後。
ようやくユウが目を覚ました。
「おはよー」
「お、おう……」
「温かかった」
「そりゃよかったな!」
顔真っ赤。
朝食。
二階レストラン。
焼きたてパン。
スープ。
卵料理。
ハム。
高級宿だけあって旨い。
アクア。
「このパンうめぇ」
ユウ。
「そとかり、中ふわ」
ミーちゃんは魚を食べている。
その時。
窓の外。
やたら騒がしい。
人。
人。
人。
「なんだあれ?」
外へ出る。
すると。
馬車の周囲に人だかり。
子供。
老人。
観光客。
全員。
ユニコーンを見ていた。
「本物だ!」
「すげぇ……!」
「白銀種だぞ!」
「王族か!?」
「北国王がお忍びで来てるんだ!」
「いや皇帝陛下だ!」
話がどんどん飛躍している。
アクア。
「なんでそうなる」
ユウ。
大笑い。
さらに。
「見ろ!」
「猫まで高貴だ!」
「気品が違う!」
ミーちゃん。
馬車の上でドヤ顔。
完全に注目を浴びている。
アクア。
「ミーちゃんまで人気なのかよ」
ユウ。
「王猫様」
「やめろ」
とりあえず。
宿で街の地図をもらい。
馬車屋へ向かう。
凍結路面対策タイヤが欲しい。
馬車屋。
巨大。
職人たちが忙しく動いている。
そこに。
一台の豪華な馬車。
その前で喜んでいる男。
立派な服。
ヒゲ。
太った中年。
「素晴らしい!」
「さすが我がアサツ家に相応しい!」
そこへ。
アクアたちの馬車が止まる。
周囲。
ざわっ。
ユニコーン。
高級馬車。
毛皮。
そして子供。
男――アサツ子爵。
驚く。
「おぉ……!」
「立派な馬車ですな!」
アクア。
「そう?」
「もう長旅だから傷だらけだけど」
アサツ子爵。
丁寧に礼。
「失礼しました」
「私はアサツ子爵と申します」
アクア。
「俺はアクア」
「こっちはユウ」
「頭の上はミーちゃん」
ミーちゃん。
ニャー。
アサツ子爵。
笑顔。
しかし。
少し気になる。
「あの……役職名などは?」
「あぁ?」
アクア。
普通に答える。
「貴族鬼殺しのアクア」
「私は幻影少女のユウ」
アサツ子爵。
「……?」
数秒停止。
「なんだそれは?」
「異名?」
「まぁそんな感じ」
アサツ子爵。
恐る恐る聞く。
「つまり……平民?」
「そうだけど?」
空気。
変わる。
アサツ子爵。
さっきまでの笑顔が消える。
「……へぇ」
露骨。
態度が悪くなる。
「平民にしては立派な馬車だなぁ」
アクア。
「あぁありがとう」
嫌味に気づいてない。
ユウ。
気づいてる。
ニヤニヤ。
アサツ子爵。
ユニコーンを見る。
「そのユニコーンも、どこかの貴族から盗んだのでは?」
空気。
ピリッ。
周囲の職人たちも静かになる。
アクア。
「は?」
ユウ。
笑顔が消える。
ミーちゃん。
毛が逆立つ。
アサツ子爵。
調子に乗る。
「最近は分不相応な平民も増えましたからなぁ」
「身の丈を知らんといけません」
アクア。
じーっ。
そして。
一言。
「お前、嫌われてるだろ」
周囲。
ぶふっ。
職人が吹き出す。
アサツ子爵。
顔真っ赤。
「き、貴様ぁ!!」




