予定調和
覗いていただきありがとうございます。
遅筆、修正多めですみません。
「えっとぉ・・・ギーヴ?」
「は〜い、エヴァ。もう少し食べて?」
僕はスプーンをエルバーラの唇に近づけ、首を傾げて最高の笑顔を向ける。
「あの・・・あとは、自分で食べられるわ」
上半身を起こしたエルバーラは顔を真っ赤にしながら、スプーンから逃げるように身を反らせて、手で遮ってくる。
ーーひとくち食べたら今更だよね。もうっ、エルバーラったら照れちゃって、カワイイんだからっ!
「でもぉ、無理は駄目!僕の白魔法も万能じゃないんだよ?今日1日は安静にしていてくださいって、お医者さんに言われているんだもん、スプーンも持っちゃ駄目だよ。ね?だから、僕がこうして「あ〜ん」し・・・って、痛っ!」
後頭部にぼこっ衝撃を受けた後、痛みがやってくる。持っていたスープを落とさなかったのは奇跡だ!
怒って振り返ると、腕を組んだアルールが立っていた。
「痛いっ、なんで殴るんだよ、暴力女」
「ふん。女性の、しかも病人の部屋に押しかけて無理強いする馬鹿には、これぐらいじゃ足りないわよ」
そのままくどくどくど説教を始めるアルールをよそに、僕は青ざめる。
ーー気づいちゃった。エルバーラはアルールが来てホッとしちゃってる・・・僕、嫌われてた!?
言い返しもせずしょんぼりしていると、アルールは聞こえるように息をついて、なんだか偉そうに言う。
「エルバーラ嬢のお手伝いは私がしますわ!」
「えっ、よこどりーー」
「じゃありません!あなたはお祖父様のところよっ。さっさと行きなさいな」
ええぇぇぇ・・・と不満を込めて、大きな声が出る。
ーーせっかくエルバーラと二人になれる貴重な時間なのに。側に侍女がいるけど。
ーーせっかくエルバーラに優しくして、嫌われる要素を減らしておきたいのに。嫌われる予定だけど。
ーーなんだよ、アルールの横取りだ横取りっ!
ブツブツ文句を言っていたら、すぐ側から笑い声が聞こえた。
「仲がいいのね」
「なっ・・・かがいい!?」
ーーなにその誤解!?ダメージ極大なんだけど。そこで微笑ましげに見ないでぇぇ!お願い嫉妬してぇぇぇ!!
エルバーラの反応にいちいち過剰反応する僕。
「幸いなことに、仲が良くなった覚えが一度もないわ。この先もその予定よーーほらっ、誤解も解いておいてあげるから、さっさと行って、いとこ殿」
アルールの言葉は、わんこにホームって命じるぐらい、迷いがない。
「分かったよ・・・エヴァには僕が食べさせてあげたかったのに、従姉妹という存在に邪魔されたから、泣く泣く離れるけど、冷めないうちに食べてね?」
僕は仕方なくスープとスプーンをエルバーラに渡して、扉に向かう。
「僕、仕方なく行くね・・・」
未練がましく、ぐずぐず歩く。
「早く行きなさいよ」
「くっ・・・」
お邪魔虫アルールめっ!
睨みつけたいのを堪えてーー無視してエルバーラに伝える。
「エルバーラ、無理しないで」
「ありがとう、ギーヴ」
うんと頷いて、送り出される僕。
送り出される、僕(2度目)。
出て行きたくないーーと悪あがきをする僕を、アンナがサクッと扉をあけて押し出し、さくっと目の前で扉を締めやがった・・・。
「はぁ〜・・・」
「坊っちゃん、負けてますね!」
廊下で待っていたチャンクスと。
ーーギッシュ、なんでお前が嬉しそうなの!たまには身体張って主の希望を叶えろって。アルールぐらい止めてっ!って言っても意味ないんだろうなぁ・・・。
「主、公爵がお待ちです」
「ん・・・チャンクスのそういうトコ、スキ」
「あっ、えっ、はぁ!?」
「ありがとうございます」
焦るギッシュと、冷静にすべき事だけ示してくれるチャンクス。なんでギッシュが焦るかなぁ、ってか、すっごいお似合いコンビ。羨ましいーーとは言わないけど。
僕は重い気持ちを引きずって、とぼとぼお祖父様の待つ執務棟に向かった。
◇◆◇◇
まさかその後、一度も会うことなく、エルバーラがフランチャスカ侯爵家に戻ってしまうとは、僕は思いもしなかったのだ。
結末として、今回の事件は対外的にも対内的にも、知らぬ存ぜぬで押し切るということにされてしまった。
モーグ家としては王城からの帰りに、たまたま倒れていたエルバーラ嬢を保護した、ということで押し切り、一族に対しては〈律〉の違反者はいなかった、ということでおさめることとなった。
でもそれじゃあ、エルバーラの安全が保証されない。
王宮の魔法騎士や魔術師に、第二王子と共に追われていた理由ーーエルバーラだけ湖に沈められ、第二王子だけ連れ戻されたーーそう指示した者は、エルバーラが無事だと知ったら、また危害を加えるんじゃないかーーそれが僕は心配だった。
もちろん、こんなに近くにいたことがないので、できればエルバーラにはずっとモーグで療養して欲しいと切望していた。が、叶うことはなかった。
僕は少し浮かれすぎていたのかもしれない。
それでもお祖父様を説得して、エルバーラの護衛である影を増員したのだが、幸いなことにエルバーラが危害を加えられることはなかった。
むしろまるで何事もなかったかのように、第二王子とエルバーラの王子、王子妃教育は日々変わりなく王宮で行われ、合間に学園へ姿を現す。
驚くほど、今まで通りの王宮と、第二王子とエルバーラの様子だった。
ーーだけど、僕だけは知っている。
ーー第二王子には〈封〉が。
ーーエルバーラには〈封印〉が。
魔法(呪術)が、再度かけられていた。
エルバーラの封印は僕がかけたものだとしても、この結果が予定調和なのか、それとも違うのか、僕には判断できないまま、僕とエルバーラの距離だけが、ほんの少し縮まった気がする。
それが単なる恩人への態度だとしても。
僕の、エルバーラへの想いが更に大きくなるだけだった。
そして、あっという間に時が過ぎ、僕は学園を卒業した。
すみません、次こそデビュタントです。
〈ぷち解説〉
エルバーラは、光魔法が使えなくなったのはギーヴの封印のせいだということを知りません。ギーヴも伝えていません。
エルバーラは、むしろ王宮のあの人のせいだと思ってます。
この辺は後々。。。
でもちょっとだけ恋愛っぽくなってきた、と思われません???




