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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第6章
98/104

予定調和

覗いていただきありがとうございます。

遅筆、修正多めですみません。

「えっとぉ・・・ギーヴ?」

「は〜い、エヴァ。もう少し食べて?」

 僕はスプーンをエルバーラの唇に近づけ、首を傾げて最高の笑顔を向ける。


「あの・・・あとは、自分で食べられるわ」

 上半身を起こしたエルバーラは顔を真っ赤にしながら、スプーンから逃げるように身を反らせて、手で遮ってくる。


ーーひとくち食べたら今更だよね。もうっ、エルバーラったら照れちゃって、カワイイんだからっ!


「でもぉ、無理は駄目!僕の白魔法も万能じゃないんだよ?今日1日は安静にしていてくださいって、お医者さんに言われているんだもん、スプーンも持っちゃ駄目だよ。ね?だから、僕がこうして「あ〜ん」し・・・って、痛っ!」


 後頭部にぼこっ衝撃を受けた後、痛みがやってくる。持っていたスープを落とさなかったのは奇跡だ!

 怒って振り返ると、腕を組んだアルールが立っていた。


「痛いっ、なんで殴るんだよ、暴力女」

「ふん。女性の、しかも病人の部屋に押しかけて無理強いする馬鹿には、これぐらいじゃ足りないわよ」


 そのままくどくどくど説教を始めるアルールをよそに、僕は青ざめる。


ーー気づいちゃった。エルバーラはアルールが来てホッとしちゃってる・・・僕、嫌われてた!?


 言い返しもせずしょんぼりしていると、アルールは聞こえるように息をついて、なんだか偉そうに言う。


「エルバーラ嬢のお手伝いは私がしますわ!」

「えっ、よこどりーー」

「じゃありません!あなたはお祖父様のところよっ。さっさと行きなさいな」

 ええぇぇぇ・・・と不満を込めて、大きな声が出る。


ーーせっかくエルバーラと二人になれる貴重な時間なのに。側に侍女(アンナ)がいるけど。


ーーせっかくエルバーラに優しくして、嫌われる要素を減らしておきたいのに。嫌われる予定だけど。


ーーなんだよ、アルールの横取りだ横取りっ!


 ブツブツ文句を言っていたら、すぐ側から笑い声が聞こえた。

「仲がいいのね」

「なっ・・・かがいい!?」


ーーなにその誤解!?ダメージ極大なんだけど。そこで微笑ましげに見ないでぇぇ!お願い嫉妬してぇぇぇ!!


 エルバーラの反応にいちいち過剰反応する(のたうちまくる)僕。


「幸いなことに、仲が良くなった覚えが一度もないわ。この先もその予定よーーほらっ、誤解も解いておいてあげるから、さっさと行って、いとこ殿」

 アルールの言葉は、わんこにホームって命じるぐらい、迷いがない。


「分かったよ・・・エヴァには僕が食べさせてあげたかったのに、従姉妹という存在に邪魔されたから、泣く泣く離れるけど、冷めないうちに食べてね?」

 僕は仕方なくスープとスプーンをエルバーラに渡して、扉に向かう。


「僕、仕方なく行くね・・・」

 未練がましく、ぐずぐず歩く。


「早く行きなさいよ」

「くっ・・・」

 お邪魔虫アルールめっ!

 睨みつけたいのを堪えてーー無視してエルバーラに伝える。


「エルバーラ、無理しないで」

「ありがとう、ギーヴ」

 うんと頷いて、送り出される僕。

 送り出される、僕(2度目)。


 出て行きたくないーーと悪あがきをする僕を、アンナがサクッと扉をあけて押し出し、さくっと目の前で扉を締めやがった・・・。


「はぁ〜・・・」

「坊っちゃん、負けてますね!」

 廊下で待っていたチャンクスと。


ーーギッシュ、なんでお前が嬉しそうなの!たまには身体張って主の希望を叶えろって。アルールぐらい止めてっ!って言っても意味ないんだろうなぁ・・・。


「主、公爵がお待ちです」

「ん・・・チャンクスのそういうトコ、スキ」


「あっ、えっ、はぁ!?」

「ありがとうございます」

 焦るギッシュと、冷静にすべき事だけ示してくれるチャンクス。なんでギッシュが焦るかなぁ、ってか、すっごいお似合いコンビ。羨ましいーーとは言わないけど。


 僕は重い気持ちを引きずって、とぼとぼお祖父様の待つ執務棟に向かった。



◇◆◇◇


 まさかその後、一度も会うことなく、エルバーラがフランチャスカ侯爵家に戻ってしまうとは、僕は思いもしなかったのだ。


 結末として、今回の事件は対外的にも対内的にも、知らぬ存ぜぬで押し切るということにされてしまった。


 モーグ家としては王城からの帰りに(・・・・・・・・)たまたま(・・・・)倒れていたエルバーラ嬢を保護した(・・・・)、ということで押し切り、一族に対しては〈律〉の違反者はいなかった(・・・・・)、ということでおさめることとなった。


 でもそれじゃあ、エルバーラの安全が保証されない。


 王宮の魔法騎士や魔術師に、第二王子と共に追われていた理由ーーエルバーラだけ湖に沈められ、第二王子だけ連れ戻されたーーそう指示した者は、エルバーラが無事だと知ったら、また危害を加えるんじゃないかーーそれが僕は心配だった。


 もちろん、こんなに近くにいたことがないので、できればエルバーラにはずっとモーグで療養して欲しいと切望していた。が、叶うことはなかった。

 僕は少し浮かれすぎていたのかもしれない。


 それでもお祖父様を説得して、エルバーラの護衛である影を増員したのだが、幸いなことにエルバーラが危害を加えられることはなかった。


 むしろまるで何事もなかったかのように、第二王子とエルバーラの王子、王子妃教育は日々変わりなく王宮で行われ、合間に学園へ姿を現す。


 驚くほど、今まで通りの王宮と、第二王子とエルバーラの様子だった。


ーーだけど、僕だけは知っている。


ーー第二王子には〈封〉が。


ーーエルバーラには〈封印〉が。


 魔法(呪術)が、再度かけられていた。

 エルバーラの封印は僕がかけたものだとしても、この結果が予定調和なのか、それとも違うのか、僕には判断できないまま、僕とエルバーラの距離だけが、ほんの少し縮まった気がする。


 それが単なる恩人への態度だとしても。

 僕の、エルバーラへの想いが更に大きくなるだけだった。


 そして、あっという間に時が過ぎ、僕は学園を卒業した。


すみません、次こそデビュタントです。


〈ぷち解説〉

 エルバーラは、光魔法が使えなくなったのはギーヴの封印のせいだということを知りません。ギーヴも伝えていません。

 エルバーラは、むしろ王宮のあの人のせいだと思ってます。

 この辺は後々。。。


 でもちょっとだけ恋愛っぽくなってきた、と思われません???

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