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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第6章
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救出

覗いていただきありがとうございます。

 僕はエルバーラを追いかける魔術師や騎士たちを、姿を見られないように土魔法で作った穴へ落として身動きできないよう埋めていく。


 それから隠蔽魔法を自分にかけて、エルバーラを追いかけた。


ーーここからは時間切れまでの勝負。秘密裏に動ける時間は短い!


 途中声だけで、チャンクス他2人の護衛に、モーグの者を引かせるよう指示して、僕はエルバーラの後を単独で追う。


 木立の中は、枯れ葉や枯れ枝が積もっていて歩きにくい。

 こんな場所を令嬢が歩けるのかーーまして走って逃げ切れるのかと心配だったのだが、冒険者修行時代に鍛えた〈探知(ディテクション)〉を起動すれば、エルバーラがスムーズに逃げていく軌跡が読み取れる。


ーーやっぱりエルバーラは、土か緑魔法が使えるのかな?


 だがエルバーラの行き着く先は湖だ。しかも別方向から第二王子も向かっている。


ーー合流するのかよっ!


 ムカつきつつも、エルバーラが追い詰められる前に、僕は順番に騎士や魔術師を愛剣で昏倒させていく。


 だが、見えないはずの僕に、魔術師のひとりが風大刃を放ってくる。

 狭い場所で不向きな魔法にも関わらず、風大刃は木々の間をすり抜け的確に襲ってきた。


 王宮の魔術師もなかなかやるじゃん、と上から目線で褒めてあげつつ、でも所詮、魔力が少ない魔導具使いーー僕の膨大な魔法陣の盾の前には、なまくらの風大刃は少しも役に立たない。素早く近づいて、簡単に意識を刈り取った。


 そんな感じで、ふいに王宮騎士や魔術師の反撃を受けつつ、やり返して僕はエルバーラの元へ駆けつける。


「エルバーラっ」

 だが急ぐ先で、エルバーラの魔力を感知する。

 複数の不穏な魔法がぶつかっていた。人の争う声がする。


 僕はいても立ってもいられず、急いで湖に辿り着いた。そこには足首まで水に浸かった第二王子と取り囲む複数の魔法剣士がいた。


 僕が見ている前で、魔法剣士が第二王子を昏倒させ、肩に担ぐと水音を立てて岸に上がってくる。

 辺りにエルバーラの姿はなかった。


ーーエルバーラは!?


 運ばれる第二王子は無視して、僕はエルバーラの魔力を探した。


『主、水の中ーー』

『ディーネが』

『主っ!』

「エルバーラっ」

 3妖精の言葉は途中までしか聞こえなかった。


 たぶん水の妖精であるディーネの魔法なら、湖に潜らずに沈んだエルバーラを簡単に助け出すことができたのだろう。


 だがその時の僕は何も考えられなかった。

 気がついたら湖に飛び込んでいた。


 暗い夜の湖を泳ぎ、沈んだエルバーラを探す。音の消えた透明な闇の世界ーーそれなのに、光がぽつんと見えた。


 エルバーラの魔力へと導く灯台の灯りのように、僕はソレを目指して突き進む。


 そして、エルバーラの身体の胸元から、ゆらゆら揺れて浮かぶ小さな光ーー〈契約のペンダント〉が、エルバーラの存在を浮かび上がらせている。


ーーあぁ!エルバーラっ!


 湖上へ上がろうと伸ばされた指先から、赤い〈律〉の鎖が全身へと巻き付き、がんじがらめに閉じ込める中、〈契約のペンダント〉ひとつの光に孤独に揺れるエルバーラの影。


 まるで沈没船の宝箱のように、僕は永遠の期待と絶望を味わされる。


ーー失った僕の宝物(エルバーラ)。ようやく見つけたんだ。


 僕は近づいてしっかりとエルバーラを抱き込み、足にかけた強化の魔法陣で湖上に浮き上がる。そのまま、岸辺に転がり出た。


「エルバーラっ!エルバーラっ」

 真っ白な肌、青くなった唇、聞こえない呼吸に僕は狂いそうになる。


ーーダメだっ駄目だよっ!嫌だ、死なないでっ!


 必死に白魔法を掛けて、エルバーラの唇に唇を重ねて空気を送り込む。前世で見た救助の仕方を真似て、エルバーラの胸の上を何度も押す。水に濡れたエルバーラの身体はひどく冷たかった。


 エルバーラが息を吹き返すまでの数分ーー僕の心臓も止まっていた。長い長い数分間、だけど。


「ゴホッ、ゴホゴホッ!」

 ようやく意識を取り戻して、咳き込み水を吐き出すエルバーラに、僕は震えが止まらない。


「・・・ったぁ・・・エヴァが、し、死んじゃうか、とっ・・・」

 安心した途端、涙が滲んでくる。その時、愛しい声が聞こえてきた。


「ぎ、・・ーヴ?・・・か、えってきた・・ぉ?」

「エヴァ、エヴァ!大丈夫!?痛くないっ!?」

 僕は少しの表情も見逃さないように、エルバーラの顔を覗き込む。


「ぁれ・・・。ちょっとだけ、つかれたみた・・・モン殿下は・・・」

 眠るように気を失っていくエルバーラに、僕は慌てて手を掴み、白魔法を重ねがけする。


ーーエルバーラが死んじゃうっ死んじゃうっ死んじゃうっ!!


『主、落ち着いてっ』

『主、もう魔法はいらないっ』

『主、エルバーラは寝ているだけよ!』

『『『主、エルバーラ生きてるっ!大丈夫っ!!』』』

 妖精たちが僕を取り囲んで叫んでくれて、ようやく正気が戻ってくる。


「・・・うん」

 僕は深く頷いて二の腕で、涙を拭った。拭ったのに、また涙が出てくる。


「エルバーラしんじゃう、かと思った、ら・・・こわかったぁぁぁぁぁっ」


ーー怖かったんだ。


 失うなんて、考えたくもないのに。

 頭が真っ白になって、震えて震えて身体が千切れそうだ。


ーーエルバーラのいない世界でなんて、もう僕は生きていられないっ!


 気絶したエルバーラをーー僕はそっとそっとぎゅっと抱きしめる。呼吸がする。気配がある。

 確かにここに生きているという手応えがある。


ーー僕から・・・っ、エルバーラを奪おうとする奴は絶対にっ許さないっ!


 止まらない涙とともに、僕の肩に針山黒蜥蜴(ブラック)が現れる。そうだそうだと気持ちが暴走する。


「主、一族の者は引かせました。第二王子を背負った魔法剣士たちが王城に戻る前にここを離れましょう」


 チャンクス達が僕たちに近づき、静かに促す。

 僕は激情を沈めようと深呼吸を繰り返し、涙を拭ってエルバーラを抱き上げた。


 その時。


「〈律〉の違反者を排除しないのですか」

 護衛についてきた2人のうちのひとりが、そう言った。


ーー〈律〉の違反者・・・誰のこと?エルバーラのこと・・・!?


 理解した途端、僕の全身の毛穴という毛穴が開き、魔力が溢れ出て周りに襲いかかる。


「ひぃぃぃっ」

「うわぁっ!」

「主っ!」

 腰を抜かしてひっくり返る護衛騎士たちと、堪えて両膝をつくチャンクス。


「僕のエルバーラを傷つけることは誰にも許さない」

 自分の声とは思えないほど、威圧的な、魔力のこもった言葉が、まるで呪いのように3人に向けられていた。


『妖精王・・・』

『私達の主』

『我らの王だ』


「ーー違うねっ」

 頭の半分がマグマのように熱く激しい気持ちに埋め尽くされているのに、もう半分は驚くほど冷静だった。


「僕はギーヴィストだし、エルバーラは〈律〉の違反者じゃない」

 3妖精やチャンクス、護衛騎士に向けただけの言葉はなく。


ーーエルバーラに絡みつく〈人王〉の鎖なんか、邪魔だっ、似合わないっ!


 そう思ったら。気がついたら。


 僕は白魔法を掛けたように、エルバーラの全身に別の魔法をかけていた。闇魔法に似た、でも違うと分かる僕特有の魔法(けんのう)


 〈封印〉の魔法でーーエルバーラの光魔法を封印していた。


 するすると消えていく赤い〈律〉の鎖。


「・・・っ」

 護衛騎士たちの胸からも、チャンクスの胸からも、生えた赤い鎖が消え失せていく。


「これでいいよねっ」

 訳もなく怒り続ける僕は、吹き出しの消えたエルバーラを抱えて、歩き出した。


 

ようやく学園編終了です。長かったぁ。

次から学院編の予定、たぶんです。

もしかしたらデビュタント?かも。


さくっと行きますさくっと!の予定、、、

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