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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第7章
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デビュタント

読んでいただきありがとうございます。

修正多くてすみません。

 学園を卒園し、神の午睡といわれる冬至の日ーーつまり1番夜が長くなる日ーー13歳になった年末に、貴族の令嬢子息は王城に集まりデビュタントとしての儀式を行う。以降の春までが新人の社交(デビュタント)期間となる。


 この催しはその昔、権力の現れとして、中央・地方問わず貴族や有力者の子女を王の下に集め、人質代わりに、あるいは後宮へいれる好みの子女を選別するため、権力と権力が結びつく婚姻を制限するためなどなど、屋敷にこもり顔を知られにくい女性の見合いが主目的で始まったといわれる。


 前世の参勤交代とまではいかないけど、財力と勢力を削ぐ思惑は似ていたのかもしれない。


 その頃は年齢制限もなく、病欠などの欠席も認められなくて、日記にあるご先祖様の妹様が、ド変態の王様に見初められ後宮に入れられたきっかけが、この強制参加のデビュタントの舞踏会だったという。

 この後、因縁をつけられてモーグ公爵家は降爵されるわけだが。


 しかし現在はその意味も儀式次第も変わり、年齢も厳格に法律化されて、男女関係なくのお披露目と王権に忠誠を誓うための、公式の儀式(セレモニー)とされている。


 王に忠誠を誓い、自身の名前を呼ばれて社交という公の場に胸を張って立つ、という華やかなるもの。


 出席者にとっては一生に一度の晴れ舞台であり、否応なく注視されてしまう。

 だからこそ1年かけて念入りな準備が必要になるのだが。


ーーほんと、色々大変だよね〜。


 まぁ僕の場合、普通に病欠になるけど。

 モーグ一族の当主は、王権に忠誠を誓うわけにはいかないし。


 そんなこと、臣下に認められるのか、謀反を疑われんじゃないのかと思われそうだが、先に当主になって、のちデビュタントで王権に忠誠を誓うことになるケースなんて、戦時下でもない限り滅多にない。


 しかも現在は出席が強制ではないーー貧乏や家門が揉めて参加できない場合もあるからねーーので、珍しいことではあるが病欠理由は許容されうる事例だった。


 それにモーグ一族にとっては、当主になって王権に忠誠を誓うのと、王権に忠誠を違った後に当主になった場合とでは、意味合いが大きく違ってくるからね。


 王権よりモーグ一族の掟、忠誠を誓うよりモーグ一族の信念が優先される。っていうか、モーグの『王権に忠誠を誓わず』っていうのは、建前の儀式でも許さないって、そこまで徹底されているんだよねぇ。


 復讐したご先祖様から脈々と、一族全体にずぅっと刻まれる執念ーーおぉ、コワ!やっぱり未来永劫、子々孫々まで恨まれるようなことはしちゃ駄目だよねぇ〜。


 なぁんて、のんきに構えていました、僕。

 卒園後のある朝、僕はお祖父様に、執務棟の侯爵執務室へ呼ばれた。

「・・・デビュタントの強制参加ですか!?」


「それが婚約白紙の条件の1つだと言うのじゃ。王女がデビュタントでギーヴくんの最初にエスコートされる女性になりたいんじゃと。初恋の君との思い出づくりがしたいと」

「はつこい・・・!?」

 お祖父様が小さくため息をつきつつ、頷く。


ーーなんだその乙女の願いは。ってか、純朴少年の僕の願いが叶わないのに、どうして王女の願いだけ叶えなきゃいけないわけ!?僕だってエルバーラが初恋なのにぃぃ。


ーそれに王女様はまだ10歳。自分のデビュタントなわけでもないのに、参加させて良いんですか、王さま!



「陛下は王女に甘いからのう」

「国王が身内に甘いって最悪の弱点じゃないですか?規範が乱れますっ」

 硬い言い訳で攻めてみる。エルバーラ以外をエスコートしたくない。だって面倒だもん。


「幸いなことに、最近は内憂外患もないからの。王女の可愛い願いくらい叶えよとの仰せだ」


「でも僕、忠誠の誓約、真似でもできませんよ?」

 〈律〉の継承で、当主としてご先祖様に誓っちゃってるし。


 もちろん、当主以外のモーグ一族の者も忠誠は誓わないよ。

 だけど当主以外は、真似でもオッケーなんだ。忠誠の誓いの言葉の一部を間違えるとか、飛ばすとか、こっそり早口で言い換えるとかするらしい。

 でも当主の僕がソレをすると、誓約違反で罰を受けるという。それがどんな物か、試した当主がいないので実際は分からないが。


「そこは、典礼長官に上手くしてもらうしかあるまい。王とは王女をエスコートしての入場のみ、踊りはなしと約してある。入場あとは王女と共に王の背後に控えて、宣誓の前に気分が優れぬと倒れれば良いて」


「無茶苦茶なっ・・・そんな舞台俳優みたいなこと、僕にできると思います?今更、病弱設定は無理ですって」

 学園では健康優良児、なんなら剣術大会のクラス対抗で優勝してるんだから。


ーー倒れるって、気弱な令嬢でもあるまいし・・・。


 って言ったら、王都の上級貴族の子息には、まま有ることだとか。


ーーどんだけ脆弱なの、貴族令息たち。ジェムと僕が例外なのかな?


「ギーヴくんなら大丈夫じゃよ。器用だからできるできる」

 気楽にぼそぼそ話を終らせる、お祖父様。


「ひどぉ、おじぃさまぁっっ!」

「なぁに、どんな優等生でも緊張し過ぎで体調が悪くなることはある。弱みを見せてむしろ好感を抱かれるかもしれぬぞ。うむ、事後に噂を流させよう。社交デビューしたとて、成人にはほど遠い子供じゃ。ギーヴくんもその辺をアピールしての、フォローもするで、ほれっ、ギーヴくんなら簡単じゃ」


「嫌ですよ、そんな思いをしてまで出たくないですっ」

 本気で文句をつけたのに、聞き流すのれん状態のお祖父様だ。


 出席が決定してからは、衣装のオーダーや装飾品のデザインーーデビュタント用に紋章入りのカフスや飾りピン、織物マント(短いヤツ)、靴など、新人個人の物を新調する慣わしのためーーなどの準備で忙しくなる。


 また当主としては、モーグ家として支度品等々のデザインや品質を監査し、王家へ納める御礼品(特産物)の加工などの、ちょっとした商品開発という業務の実習にも、忙殺された。


ーー学院入学前に〈神の遊戯〉を色々調べたり、仕掛けたりしておこうと思ったのに。結局、時間がないや。



 そして迎えた社交会デビュー。


 僕にとっては、とんでもなく気鬱でつらいセレモニーの始まりだった。


「ギーヴィストさまっ」

 語尾にハートが付きそうな可愛らしい声で、マナリーナ王女が僕を呼ぶ。トコトコ早足でやって来る王女は幼いながらも王家特有の金髪金の瞳の美少女だ。


 白い頬をうっすら桃色に染めて、僕の前で立ち止まると、御年10歳の王女様はくるんと回って、ドレスを見せると僕へ無邪気に仕掛けてくる。


「ギーヴィストさま、今日のドレスはいかがですか?婚約者としてふさわしいと思われますか?」


 レモンイエローの明るいレースと銀の刺繍に彩られたドレス、小ぶりなルビーとシルバーの細工で統一したアクセサリーは、控えめながら若々しくも上品な、王家の品格を示す。


 王女とモーグ侯爵家嫡子の婚約は公に発表されてはいないが、上級貴族は当然のごとく承知しており、その上で、僕と王女の関係はいつも注視されている。


ーー白紙にしたいって申し出ているのになぁ・・・。僕の瞳の色のドレスに、僕の髪色の刺繍、イヤリングもシルバー。


 唯一ルビーの赤ピンクだけが、王女の好んでいる色で、情熱的なチョイスだ。


「お聞きになるまでもございません。マナさまは本日も美しく眩いほど輝いていらっしゃいます。むしろ僕一人が独占しては申し訳ないほどの品格あるお姿でございます」

 無難に全体をぼんやり褒めておく。


「本当ですか?嬉しいっ」

 王女様は素直に照れる。そして僕の差し出した腕に、腕を絡めてきた。


「ギーヴィスト様の大事な日に、マナがご一緒できて嬉しいですっ。素敵な時間になるよう楽しみましょうね」

 どこまでも真っ直ぐな王女様は、純粋培養された毒だ。


 わがままではないがわがままを許され、傲慢ではないが傲慢の意味を知らされない。素直が故に、遠慮も謙虚もいらない最高権力者の愛し子。


「はい、楽しみましょう」

 僕はお姫様のお望みどおりに微笑んで、王族の控室へ王女をエスコートしながら向った。



デビュタント、終わらない。

頭の中では、王さまに挨拶して倒れて退場なのに、文にするとだらだらだらだら。。。


すみません。もう2、3話です。

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