関連ターゲット5
読んでいただきありがとうございます。
煽りや争いの記述があります。苦手な方はご注意ください。
学園に編入してからは、あっという間に時間が過ぎていった。
僕の日々は変わらず、侯爵当主の実務の勉強や剣の鍛錬、〈日記の部屋〉でのご先祖様方の所業を噛み締めつつ、オリジナル魔法を紐解き習得する、関連の人物に接触して〈神の遊戯〉の内容を調べるなどなど、とにかくやることが多く、忙しない日々を過ごしていた。
むしろ、すでに学習済みの座学の時間の方が、のんびり考え事ができる時間(夜は3妖精が騒がしいので)だと言えた。
そして学年が繰り上がる年末、学年ごとに男子は剣術の勝ち抜き戦、女子は茶会のマナー選抜という順位を決める行事があることを知った。
僕の場合その剣術勝ち抜き戦で、うっかりクラスで勝ち上がってしまい、同じく勝ち上がった2人と共に、クラス対抗戦に代表として出場しなければいけなくなった。
「アレク・・・裏切り者」
「俺はモーグですので」
「いやいや、モーグ突然変異の脳筋じゃなかったの?」
「まぁ、ギーヴィスト様。アレクは典型的なモーグですのよ。魔法は得意でも、剣術はイマイチですわ(公式には)。突然変異はギーヴィスト様の方ですもの。魔法も剣術も優れているなんて、一族としては誇らしいかぎりですわ」
お昼の食堂でレインがそう言って、アレクを庇っていた。政略だが、仲むつまじいことで良いことだ。
ーーだがしかし・・・まさか学園の生徒の剣術がこんなにレベルが低いって、気づかなかったぁぁ〜・・・。
失敗したなぁ、と後悔する僕。
魔法を使わず、魔法剣も使わず、単なる剣技での対戦で「おいおいおいっ」と、負け方を考えている内に、勝ち抜いてしまった。クラス代表って聞くだけで面倒に思ってしまう。
ーーどんだけ弱いんだよぉ〜って、辺境の子供相手の感覚でいたからいけなかったんだよねぇ。
あっちは魔物や魔獣と日常的に遭遇する環境で、気がついたら幼い子供でも魔兎ぐらいは叩き潰すのが当たり前、という環境なのだ。対して王都は、平民であっても巡回の兵士や傭兵に護られ、魔獣を退治する必要もない。
まして貴族ともなれば、本気で騎士を目指す人間か、ジェムのようにちょっとヤバイ趣味を持つ人間でもなければ、剣術はあくまで教養の部類レベルで十分となる。
「学年末は座学も剣術も魔法も、ギーヴィスト様がトップですね」
レインが持ち上げるように、褒めてくれる。事実、座学と剣術は誰かに負ける気がしない。
「まあね。剣術なんかより、魔法基礎学の方が難しいよ」
唯一、魔法基礎学の詠唱は苦手だった。それでも、試験では一夜漬けの短期暗記で、なんとか小テストはトップで乗り越えていた。
ーー学園でぐらいトップになっておかないと、お祖父様がうるさいしね。学園やめろって言われちゃう。
何気なく内輪の会話で、僕としては謙遜で口にした言葉だったが、それが気に入らない人間もいたらしい。
「ふざけんなっ!剣術なんかって馬鹿にしてんのか!調子に乗ってんじゃねぇぞっ」
「えっ・・・?」
盗み聞き?
「もう剣術のトップを取ったつもりなのかよっ」
斜め前に座るグループの中で、かなり大柄な少年が椅子から立ち上がり、俺に向かってきた。
なんとなく懐かしい記憶を刺激する口調、顔立ちーー誰だっけ?
「タルべ伯爵家の嫡男ドリィギア卿です」
期末の剣術試験で2番になった人物です、とアレクが横から教えてくれる。
ーータルべ伯爵家嫡男ドリィギア・・・聞き覚えがあるような・・・。
ーーあぁ、王軍の家門だっけ。王軍大将軍アロワナ公爵家の直系?武門のプライドかなぁ、1番じゃないと我慢できないタイプ?面倒くさ〜いヤツ。
「嫌だなぁ〜誤解ですよ!ただ、入学が遅かった分、トップを目指して頑張ろうか、という意味です」
「誤魔化すのか!?」
別に誤魔化しても良くない!?そっちは盗み聞きなんだから、と言いたい僕。
ぐっと言葉を飲み込んで、笑顔を浮かべる。
「とんでもない。ーー対抗戦に出ることになって、気が重いという話をしてただけですよ。ねぇ・・・アレク」
と、アレクの名前を呼んだ時、頭の中に情報が挿入される。
『名前 ドリィギア=タルベ
属性 10歳 人間族 男性 〈伯爵家〉
弱点 〈祖父アロワナ公爵の期待〉、〈王軍試験への鍛錬〉、〈負けず嫌い〉、〈側近としてシャルモン殿下を尊敬〉
〈口の立つ気位の高い貴族女性〉〈嫁いだ姉〉〈乳母〉〈侍女長〉〈女騎士〉
特記 『王軍大将軍を目指す者』『未来の主君に尽くす側近』『傭兵や冒険者を差別する者』『武力にこだわる者』
運命の轍 『〈乙女ゲーム〉の攻略され〈キャラその4〉』
〈祖父アロワナ公爵〉に憧れ、同じようにな大将軍になることを〈幼い頃〉から夢見ていた。
学院入学後すぐに、上級生である〈悪役令嬢の義兄フランチャスカ侯爵令息〉に目をつけられ、〈暴行〉を受ける。肩の骨を折り、右足の腱を切る。白魔法治療を受けるも、〈精神的な恐怖〉を植え付けられた。
また同じ頃、〈女騎士である姉〉から嫁ぎ先が決まったと聞き、祝意を述べると「お前が嫌いだった」と冷たく言われ、ショックを受ける。また〈乳母〉と〈侍女長〉の自身への愚痴を立ち聞きし、女性不審に陥る中、〈シャルモン殿下〉が頼ってくれる〈側近〉という〈地位に固執〉していく。
学院入学後、〈シャルモン殿下〉が〈編入してきた主人公〉に惹かれていく様子を側で見守るうち、自分の姉とは正反対の〈主人公に惹かれて〉いく。
〈主人公〉がシャルモン殿下の〈婚約者〉に〈いじめられて〉いることを知り、〈悪役令嬢〉と呼んで〈憎悪〉し、〈排除〉しようと〈企み〉、シャルモン殿下を〈断罪するように誘導する〉。〈卒業式〉での断罪後、密かに〈悪役令嬢〉を始末するように、〈暗殺ギルドへ依頼〉する。〈フランチャスカ侯爵令息〉への恨みを晴らす身代わり人形として。
』
ーーコイツなのか。
自分の顔が歪んだのが分かった。
ーーコイツが〈神の遊戯〉の中でエルバーラを害するのか。
そう考えると、感情が先に動く。
「だって、僕に勝てる人間なんて誰もいないのに、対抗戦なんて、いじめみたいで気が重いよ。ーーお前なんて1番に倒せる」
低く囁やけば、プライドの高い世間知らずは簡単に挑発にのる。
「なんだとぉ」
「君が吠える意味が分からないなぁーーよく吠える魔獣ほど、弱くて逃げ足は遅いんだよ」
「・・・っ」
「君、自分が強いと思い込んでる勘違いヤロウ?誰だか知らないけど、僕に無駄吠えして絡んでくんなよっ。迷惑だね」
はっきりとバカにした途端、服の首元を捕まれ、椅子から無理やり立たされる。
食堂内で小さな悲鳴とざわめきが起こり、周りの視線がこちらに集まる中、僕はにこりと小さく笑う。
「単純っ」
「調子に乗ってんじゃねぇぞ、お前っ」
僕は彼だけに聞こえるように、暴言を言い続ける。
「さっきから同じことばかり言っているね、気づいている?頭も剣も弱くて伯爵家は大丈夫なの?僕が無抵抗で怪我をしたら、侯爵家から抗議と慰謝料請求をさせてもらうよ。大丈夫かなぁ?」
「この野郎っ!」
カッとしたドリィギア卿が拳を振り上げた途端、横に座っていたアレクとレインが立ち上がる。
しかし、二人が僕をかばう前に、ドリィギア卿の肩を掴んで名を呼ぶ者がいた。
シャルモン=セル=ルクスーーと不意打ちの遭遇だった。




