表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第5章
92/92

エルバーラと第二王子

覗いていただきありがとうございます。


 〈遠見〉の魔導具を切って、僕は自分の身体の感触を確認する。

 鬱陶しい前髪を書き上げて、座り込んだまま声を出した。


「それで?」

『主、声コワイ』

『主、震えちゃうよ?』

『主、優しく言って?』


 僕の頭の周りを賑やかに飛び回る3妖精たちに呆れつつも、声色を和らげる。


「それで、エルバーラに何が起こったの?」

『うーんとぉ、王宮で』

『メイドに水かけられた』

「エルバーラが!?」

 僕が声を荒らげると、ディーネがまぁまぁと手で宥めようとしてくる。


ーー人間的しぐさ・・・最近、へんに人間っぽいしぐさをするんだけど。


『大丈夫、濡れたのは』

『服の裾の先』

『エルバーラ、メイドに言葉で慈悲かけた』


『でもその後、侍女にぬるくてマズイお茶出されたんだよね〜』

『でもエルバーラ笑顔だった』


『家庭教師にも習ってない勉強の質問されて困ってたじゃない?』

『アレは意地悪じゃないよ〜』

『え〜でも、エルバーラ困ってた』

『うん困ってたわ』


『でもきっと意地悪される原因は、侯爵が手を出したメイドよ〜』

『ああ、王宮泥沼劇ね』

『王宮メイドや上級侍女の間では共通の悪評になっちゃったもんね』


 妖精たちが語るままに、聞き役に徹していたら、だんだん不穏な言葉が出てくる。

「侯爵って、フランチャスカ侯爵?メイドに手を出したって・・・」

『そうそう。フランチャスカドクズ侯爵がメイドに手を出したの!』


「ドクズーーエルバーラも言ってたね・・・」

『でもドクズ侯爵は王妃付き上級侍女と長年の愛人関係で』


「それで王宮泥沼劇?でもその場合、メイドとその上級侍女、侯爵の問題だよね?エルバーラ関係ないでしょ」


『主、女ゴコロ分かってなーい』

『主、失格』

『主、そう単純じゃないの』

 3妖精に好き勝手にダメ出しをくらい、口を閉じる。


『あのメイド』

『愛人侍女の妹』

「えっ!?」

『しかも侯爵、他にも王宮の使用人に手を出してはお金や弱みで脅して口を塞いでいたのよね』

『それが使用人の間でバレて共有されちゃった』

『神父憎けりゃ、吐息もくさいって言うでしょ?』


ーー初めて聞いた。それ異世界ことわざ?それとも妖精ことわざ?!


「・・・つまり侯爵への憎しみを、エルバーラに向けているってこと?」

『正解!』

『その数十人以上』

「・・・エルバーラが心配だ」


ーー〈識る能力〉でも、エルバーラは王宮でいじめられるって書いてあったよね。


ーーこれは〈神の遊戯〉の範囲内?


ーーでもこういうのはエスカレートして、最悪な結果を招く場合もあるし。


 僕は前世の記憶の断片を思い出した。


 具体的な名前や場所は思い出せないが、裁判の傍聴をした時の1例にーー長年の近隣トラブルで、家の出入りのたび、隣人が大きな音を立てたり、夜中にラジオを大音量で流したり、窓の開け閉めにわざと大きな音を立てたりされて、我慢の限界に達した隣人が放火してしまう、という事件が起こった。


 後の裁判で明らかにされたことには、そもそもの発端は放火した家へたまにしか泊まりにこない祖父母だった。いつ現れるか分からない祖父母への憂さ晴らしとして、代わりに隣人一家が嫌がらせのターゲットにすり替わっていったことが発覚する。


 隣人一家は火をつけた家族には恨みがないのに、誤解で火をつけられ殺されそうになった、と怒りを顕にしていた。


「ーー王宮に誰か潜入してたっけ。明日アンナに聞かなくっちゃ!」

 僕が本気で心配しているのに、3妖精は僕にとっては辛いお知らせを告げる。


『ん〜でもぉ。主〜』

『エルバーラには第二王子がいるよ』

『うん。今日も第二王子がエルバーラかばった』


『第二王子が、エルバーラがお茶マズそうにしてるの気づいて、入れ替えさせていたわ』


『家庭教師についても、問題があれば相談してほしいって優しく言っていたの』


『主、出番ないね』


ーーデバンガナイ。ハイソウデスカ・・・っ!


 辺境にいた時から、報告書でエルバーラと第二王子の様子は知らされていた。

 政略的な婚約でも、仲が良さそうな二人ーーいまだに学園では二人を目撃する勇気を持てずに、僕は回避しまくっている。


『エルバーラには第二王子がいるよ』


ーーなんて威力のある、殺傷能力高めな言葉を、軽く投げかけてきてくれることか。


ーー僕だけ、頼りにされたいっ!

ーー僕こそが、守ってあげたいっ!


 遠く離れた辺境では仕方ないと折り合いがつけられたことでも、王都に戻って、エルバーラと学園で会おうと思えば会える距離になると、その欲求は際限がない。


 でも現状では、エルバーラは婚約者と、仲の良い関係を作り上げていて、僕は王女との婚約白紙の交渉が止まっている状況だ。


ーーああ、ままならない。辺境ではなんでも単純だったのに。


 僕はため息をついて、もどかしさを逃しつつ、落ち着くために日記を開いて現状を整理する。


 ソルベルト=イジル

 ジルベルト=イジル

 ハリス=メイソン

 そして

 エルバーラ=フランチャスカ


 彼らを見て識った事は〈神の遊戯〉=乙女ゲームだ、ということ。

 そのゲームでエルバーラが〈悪役令嬢〉だということ。

 学園に編入してくる主人公に第二王子とジルベルト、ハリスが惹かれること。

 エルバーラがその主人公を嫉妬していじめること。

 エルバーラが第二王子とジルベルト、ハリスに断罪されて婚約破棄されること。

 婚約破棄された後、フランチャスカ侯爵家を追い出されること。

 その後、エルバーラに何かが起こること。


ーー第二王子と主人公とやらを識らべてみないと、このゲームがどう進んでいくか、詳細が不確定すぎる。


 だが、このゲームのどこかで、エルバーラは確実に害される。

 もっと調べて、もっと準備して。


ーー僕こそが、エルバーラを守るんだ。



学園編、あと数話です。

さくっとさくっと!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ