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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第5章
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関連ターゲット4

読んでいただきありがとうございます。

 放課後、僕はアレクと二人で〈魔導具研究会〉の見学に向かった。レインは同級生とお茶会という情報収集に出かけている。


「「「ようこそ!モーグ卿。君の魔力供給を待っていた」」」


ーーセンパイ方、取り繕うのやめましたね・・・。


 気持ち悪いほどの歓迎を受け、進められた椅子に座ると、すぐに魔力供給用の魔石を目の前に置かれる。


「魔力をお願いします!!!」

「魔導具発展のためにっ」

 座ったまま、また囲まれて圧が強い。


「先輩、申し訳ないんですけど、魔力供給ができないんです」

 僕は申し訳なさそうに、秘密を暴露する。

 これは本当の事だ。


 モーグの〈律〉でつながる僕の魔力は、自身の保有魔力量を越える事態になると、鎖の先の他人の魔力まで引っ張ってくる危険がある。


 つまり魔力供給無限大ゆえに、他人の命や健康を害する可能性があるということだ。

 だから、無闇に魔石や水晶に僕の魔力を注入することはできないことになっている。


 そのことは、学園側にも正式文書で伝えられ、生徒の個別事情(食べ物のアレルギーなどと同じ)として、考慮や対処をされることになっていた。


 だが、そもそも貴族であっても魔力量が多い人間が滅多にいないこともあって、なぜ個別事情に当たるのか理解されにくい。特にモーグの〈律〉については、一族の秘事なので、詳しく説明できないこともあり、一般の教師の中でも理解できないという態度を取る者もいた。


「またまた!編入試験でモーグ卿の魔力量が学園一だったという内部情報は、顧問から入手済みだ。誤魔化しても無駄だ!」

「何も根こそぎくれ!と言うわけじゃない。気持ち多めにくれればっ、それでいいんだっ」


 気持ち多めに、ってどうとでも取れる大雑把な言い方だと呆れる。言葉の勢いで判断すると、絞り取れれば搾り取れれるだけ、魔力を奪われそうな予感もする。


「別に痛いわけでも苦しいわけでもないだろ!?ちょっとの社会貢献だよ!この研究が完成すれば、魔力供給した君も、多大なる栄誉を得ることができるんだよ」

 魔力注入にどんな栄誉があるんだよ、とツッコミたい僕。


 前世で言うところの、発明品に使った電流に、栄誉だ!素晴らしい!なんて誰も言うわけがないのだ。

「さぁ、ためらいなど捨てて、全力でそそいでくれたまえ」


ーーさっき、気持ち多めにって言ってたのに、今は全力で、とか言っちゃってる。ほんと発明に没頭する奇人変人は怖いよねぇ〜。


「先輩方、本当に僕、魔力注入ができないんです。でも代わりに、魔力供給回路の魔法陣、刻んであげてもいいですよ?」


「なにぃぃぃ、魔力供給回路!?何だそれは!」

「とりあえず、〈録音の魔導具〉見せてください」

「わかった!すぐにすぐにっ」

 わらわらとエサに食いつく〈魔導具研究会〉のメンバー達。  

 その中に、一人だけ、温度の違う人物がいた。




『名前 ハリス=メイソン


 属性 10歳 人間族 男性 〈伯爵家〉


 弱点 〈母エリノアの期待〉、〈魔術師という職業への嫌悪〉、〈魔導具嫌い〉、〈側近としての自覚なし〉


 特記 『伯爵家の忘れられた四男』『数合わせの側近』


    『〈母〉による過剰なる期待』『魔術師への嫌悪』『魔導具を研究させられることへの嫌悪』『魔術師の家門への嫌悪』


 運命の轍 『〈乙女ゲーム〉の攻略され〈キャラその3〉




 家族の中では男兄弟の中で4男、しかもすぐに下に1つ違いの妹がいるため、扱いが軽く、いつも両親や世話係に存在を忘れられてきたと思っている。

 5歳の時〈第二王子〉の〈側近〉として抜擢され〈母エリノア〉の期待が突然大きくなる。無関心から過剰な関心に変わり、負担に思うようになった頃、王子の側近の〈数合わせ〉で選ばれたことを知る。

 〈鬱屈〉を抱える中、魔術師の家門であることから、強制的に魔導具を学ばされるも、魔術師の家庭教師にセクハラされ、魔術師や魔導具が嫌いになる。

 それでも家業である魔導具から逃れることができずにいた時、学院で編入してきた〈主人公〉に出会う。その存在や言葉、明るさに救われて心惹かれる。だが第二王子と主人公が惹かれ合うのを悟り、苦しみながらも見守ることを決意。

 第二王子の〈婚約者〉から虐めを受けていることに憤り、初めて魔導具の有用性に気づく。〈婚約者である悪役令嬢〉から主人公を守るために、魔導具開発に取り組み、〈悪役令嬢のいじめの証拠〉を魔導具によって手に入れ、最終的に第二王子と共に断罪する。  』




ーー〈悪役令嬢のいじめの証拠〉ねぇ。


ーーさしずめ、今の時期は〈魔導具嫌い〉かなぁ。王子側近の〈数合わせ〉と〈母エリノアの期待〉で、やさぐれてもいそう。


ーー彼については様子見かな・・・魔導具の方が重要そうだもの。


ーーどんな魔導具によって〈悪役令嬢のいじめの証拠〉を手に入れるのか、そこが重要だもん。介入するなら、ここだよね!


 僕は識った情報を整理しながら、ハリスへの、こちらからの接触は見送ることにした。


「これだ!これが世紀の大発明、〈録音の魔導具〉だ」

 先輩たち2、3人で大型機具を運んでくる。

 そこから始まった説明は、途切れることがない。各々が意見を述べ始めた。


 僕は聞き流しながら、〈録音の魔導具〉の内部をゆっくり見定める。想像よりも前世の物理知識につながる、きちんとした作りだ。


 音を集音、波形として変換、記録媒体に刻む、記録媒体用に変換して格納、圧縮、再生機能への出力、音への変換、、、などなど。


ーー音を振動と捉えて、波形として捉えるのは前世と同じかな。糸と紙コップで声を伝える原理だ。


ーーただし、電極の回転や空気の圧縮で録音やマイク機能の精度を高めるんじゃなく、ここで魔力かぁ・・・そうだよねぇ、この世界、ちゃちくても魔法があって魔力があるんだもん、まるっと動力にするよね。しかも、声を周波数や電気信号じゃなく魔力変換するんだ〜記録媒体も魔力格納も魔力・・・そりゃあ、魔力があればあるだけ欲しくなるよねぇ。


 僕はポケットから出すふりで、収納から魔石を何個か取り出す。


「大きな魔石!」

「金持ちだぁ〜さすが坊っちゃん」

「よっ、侯爵家!」

 目の色を変えた変人達が、大仰にたたえ始める。


ーーこれ、僕が汗水たらして魔物を討伐して、ちゃんと自分で解体して獲得したもので、侯爵家とか坊っちゃんとか関係ないんだよって自慢したいけど、できないけど。辺境で冒険者してたことは秘密だからね、ジレンマだ。


「・・・ここの集音部分と、音の記録のここの部分、それから変換圧縮のこことここ、再生のこことここに魔石をもっと増やしてーー・・・こういう感じ」


「おおぉ。確かに流れが安定したぞ!」

 いわゆる電池の直列と並列つなぎの違いに似ている。魔石の配置にも効率化が有効というわけだ。ついでに魔圧も安定する。


「でも容量足りないですね・・・やっぱりこの魔石もすぐに空になりそうなので、ここで空中から少量でも魔力を取り込んで蓄える魔法陣と蓄えた魔力を一定に放出する魔法陣を刻む必要があるかと」


「すごいすごいっ!革命だ!大いなる発展だ!」

 騒ぐ面々は置いておいて、淡々と魔石に魔法陣を刻んでいく。もちろんこっそり僕の仕込みもコミで、だ。


「でも、先輩〜ここの魔石は、強化が必要だと思うんです。このままだと、魔石が割れちゃいますから」


「弱いのかっ」

「放出は魔石に負荷がかかりますし」

 だから街灯などの小さい魔石は、わりと頻繁に交換が必要になる。


「硬すぎると振動が起こって集音後の変換に影響します」

「そうかっ、それならーーっ」

 ああでもない、こうでもないと意見を出し合う面々。


 魔導具の動力については、ざっくり分けて3種類ある。


 1つが魔物から取れる魔石を使った魔導具だ。

 街灯や料理器具、暖房器具など日用品に多い。

 耐用年数の長い大きな魔石や、小さくても内容量が大きい色付きの特殊な魔石が取れる事は、とても(まれ)なので通常は小さな魔石を使い捨てて、取り替えで使われる。


 2つ目が、(から)の魔石や、純度の高い水晶などの希少な鉱物に人間の魔力を注ぎ、まるで蓄電がわりにその魔力を活用する魔導具である。


 転移陣の補助魔導具や結界など、大掛かりな仕組みの補助に使われる魔導具に多い。そのため人にも物にも多大なコストがかかる。


 3つ目が、人間が常時魔力を流すことで動く魔導具だ。

 身近なものでは魔法剣がある。

 魔力を含有する鉱石を特殊加工することで可能になる。魔鉱物は稀少であり、生成までの時間制限がある、加工や成形にも職能が必要である、という扱いにくさで汎用度が低く、主に武器や防具、一部の護身用装飾品にしか使われない。


 そして今いじっている〈録音の魔導具〉は、1つ目の魔物の魔石を動力とする魔導具の開発になる。


ーー僕としては前世のように、もっとコンパクトにして携帯や設置が気楽にできるものになってほしい。


 提供した魔法陣はモーグのご先祖様の知識と、前世の科学知識による僕オリジナル改良型魔法陣だが、心よく提供するので、是非、先輩方には頑張って欲しい。


 なんだかんだあって思った以上に長居してしまい、専門知識の固まり集団と、あれこれ実験するのを僕は楽しんでしまった。


 入会するつもりはないが、時々のぞきに来て、録音の次、録画への開発を促すつもりだ。


ーー投資した分、見返りはちゃんと貰わないと。期待してますね、先輩方。



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