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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第5章
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僕の〈遊戯〉準備

「ギーヴ、モーグ侯爵家のギーヴか?」

 その時、聞き覚えのある声が、僕を呼ぶ。


「ジェム」

 通路の反対側を見ると、身長が伸びて幾分鋭利な雰囲気になったジェムニールが、取り巻きを引き連れて、こちらを見ていた。


 僕が拳を胸に当てて軽く挨拶すると、ジェムニールがこちらの通路に走ってきた。


ーーうわぁ〜子分も一斉に来るよ・・・。


「お久しぶりです、フランチャスカ侯爵令息」

「ばっか、ジェムでいいんだよ、お前と俺の仲だろっ」

 笑顔でバンバン肩や背中を叩いてくる。


「痛いよ、ジェム。成長した分、前より馬鹿力が強いって!」

「この感じ!この慇懃無礼なクソムカつく度胸の良さがギーヴだよなぁ」


「それ、褒めてる?」

「決まってんだろ!ビクビクせずに言い返してくんのはお前だけだし」


「だから痛いってセンパイ」

「嘘つけ!お前、病気っつう割に、前より筋肉つけてんだろ?手合わせしろよ!手合わせ!」

「3年?4年?ぶりに会った早々にソレ?困るよ〜」

 僕は呆れ気味に言って、どう逃げようか、ちらりと視線を後方に逃がす。


 無言で佇むアレクとレイン嬢が、こちらを冷静に見ていた。

 そのアレクたちに気づいたのか、ジェムニールの顔つきが変わる。


「・・・アレクじゃねぇか。そういや、お前ギーヴの子飼いか」

「知り合い?」

 アレクに聞く。だが先に答えたのはジェムニールだった。


「こいつ俺の誘いを断ったんだよ」

「デートの誘い?残念ながらアレクはモーグに一途だよ?」

 分かりきったことでも、一応明言しておく。


「馬鹿っちげぇよ。デートでも派閥の誘いでもなく、生徒会の書記に誘ってやっただけだ、あっさり断りやがったんだがな。腕1本で引き下がってやったが、許したわけじゃねぇからな」


ーー早速、上級生の洗礼ですか。


「腕1本?」

「折れました」

 アレクは淡々と答える。


「書記、断ったら腕折られるの?校則第二章の7条に上級生が下級生に怪我をさせた場合、3ヶ月以上の謹慎処分になるよね?」


「お前なぁ〜校則いちいち覚えてんのかよっーー折ったのは俺じゃねぇぞ。ソイツだそいつ!普通は俺の誘いを喜んでも、断ったりしねぇんだよ!それを露骨に嫌がりやがって、自分で腕1本折ってお断りしてきたんだよっ」


 僕はびっくりしてアレクを見る。

「うわぁ〜アレクってモーグ突然変異の武闘派筋肉族?ーーでも、そんなに嫌われてるジェムはなにしたの?学園の黒幕?生徒会の魔王?恐怖支配は長くは続かないんだよ〜?」


 僕が首を傾げて本気で忠告すると、ジェムニールが眉を跳ね上げた。3年前なら問答無用で拳が出ていたジェムニールも今は腕を組む。チッと舌打ちをして気持ちを鎮めたようだ。


「あのな、俺は真面目に学園の生徒会長やってんだ。有望な奴をスカウトして、後進を育てんのも役割の1つなんだよ!」


「おぉ〜思ったより真っ当な理由だった。すごいね、立派な生徒会長でセンパイなんだね。なのにアレクはなんで断ったの?」

「生徒会希望の生徒は他にもいます」


「入りたくなかったんだ」

「そうとも言いますね」

「腕折ったのは?」

「終わりにしたかったもので」

「あぁ、勧誘しつこかったんだ?ジェムって強引だし」


「こらソコ、悪口言うならそれなりの覚悟があるんだろうなぁ?あぁぁ!?」

「やだぁ〜なぁ、センパイ。編入生は、分からないことだらけなんです!きっちり確認しておかなきゃ」

「お前、いない間にますますイイ性格になったんじゃねぇか。ーー代わりにお前が生徒会に入れ」

「書記ですか?」

「副会長補佐でいいぞ」

「副会長補佐?」

 ジェムニールがそこでニヤリと笑う。


ーーそういえば、ジェムニールってそろそろ卒園だよね・・・。


 学園は7歳から12歳まで在籍でき、その成績を元に14歳から学院に進学する。

 普通、上級貴族や裕福な下級貴族は学園から進学するが、それができない者は、13歳の間に実施される3度の試験のうち、どこかで合格しなければ、学院に入学できないという仕組みになっていた。


「・・・会長の後任は?」

「シャルモン殿下だ」

「・・・」

アイツ(・・・)も付いてくるぞ、どうだ?興味出ただろう?」

 からかう気満々で、肩に腕を回してくるジェムニールは、本質は変わらずイジメっ子のままだ。いや、こちらの反応を確認しようとしているのか。


ーーさて。どうしよう。エルバーラに会いたい・・・けど、直接会って僕は理性を保てるかなぁ。


 実は戻ってきてから、〈遠見〉の魔導具でエルバーラの姿を何度か盗み見ていた。


ーーフランチャスカ侯爵家に弱みを握られた事にしてもいいけど、近づき過ぎるのも問題かな。〈神の遊戯〉終了と同時にフランチャスカ侯爵家には没落して貰わなくっちゃいけない。


ーーでも、落ち着いたらジェムにも接触するつもりだったし、学園の間くらいいいよね・・・どうせ本番は学院だ。それにジェムはあと数カ月でここを卒園だもの。短い期間だ。


「入会はお断りだけど、生徒会の見学はしてみたいかも」

「よっし!」

 そのあと手合わせしようぜ、と言うジェムニールは、やっぱり武器マニアだった。学園の練習用の剣がいかに鈍らで折れやすく役に立たない武器か、文句をつらつら語りだす様子は、以前と寸分も変わらない。


「一緒に飯食おう」

 最終的に昼食を誘われて、集団で食堂へ向かいながら、僕は取り巻きのひとりを横目で捉える。


ーーイジル侯爵家嫡男ソルベルト。〈僕の遊戯〉のターゲットのひとりだった。




◆◇◆◆



ーーこれが〈識る能力〉。


『名前 ソルベルト=イジル

 属性 12歳 人間族 男性 〈侯爵家〉

 弱点 〈妹シファン〉と〈弟ジルベルト〉 父親の宰相職

 特記 『〈乙女ゲーム〉の攻略キャラその2の〈兄〉』

 運命の轍 『〈弟〉に苛立つ兄』『ジルベルトの〈心の傷〉』


  〈イジル侯爵家の呪い〉を受けた〈妹〉を不憫に思い、その妹に嫉妬して、幼い頃から幼稚な行動ばかりを繰り返す〈弟〉を、何かと疎ましく苛立ちを持って見下げている。〈兄〉からの指導として、事あるごとに〈弟〉へ冷たい態度、言葉を投げかける』



 王都に戻って少ししてから、〈神の遊戯〉に関係のある人物を見ると、情報が頭に流れ込んで来るようになった。まるでAIの回答のようにつらつらと、だ。


 だがその能力は妖精たちの〈識る能力〉よりも狭く、あくまで〈神の遊戯〉である〈乙女ゲーム〉に特化した情報のみを知ることができるだけだ。


 そしてそのキッカケとなったのが、やっぱりエルバーラを〈遠見〉していてだった。


ーーエルバーラを覗き見しているようで、罪悪感いっぱいだよ。実際はずっと盗み見してるけど、さすがにゲームの詳細さが日常に及ぶと複雑な気分になる・・・。


 というのも〈〉の中に意識を集中させると、ゲームに関連する設定ーー行動記録やキャラの心情がかなり詳しく見えるからだ。


ーーソルベルトの詳細は・・・うわぁ。



 本日の情報: 朝食時、スープの音を出したとして〈弟〉を叱責。

       朝食後、妹を見舞い、優しい言葉をかけて抱きしめる

       朝食後、妹に優しい言葉をかけなかったと〈弟〉を叱責

       登校前、〈妹〉の〈侍女〉に〈医者〉を呼んで診察させるよう指示

       登校前、試験の結果が悪すぎる、イジル侯爵家の恥、と〈弟〉を罵倒する。


       登校時、馬車の中で〈弟〉に、生活態度が悪い、落ち着きがない、イジル侯爵家の恥、〈第二王子〉の〈側近〉として自覚を持てなど、説教を繰り返す。

 

 』


ーーなるほど。『ジルベルトの〈心の傷〉』ねぇ・・・。〈運命の轍〉は変えられない。でも〈心の傷〉の作り方はプラスできそう。


ーー悪いけど〈僕の遊戯〉の実験第1号になってね、ソルベルトセンパイ。




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