エルバーラの奮闘7〈イレギュラー〉
読んでいただきありがとうございます。
エルバーラ視点、たぶんこれで終了です。
◆◇◆◇
それは、突然の悲報だった。
「モーグ侯爵夫妻が亡くなった!?」
先日パーティで見た堂々たるモーグ一侯爵夫妻の姿を思い出す。
メイドに急かされ私は喪服に着替えた。
フランチャスカ侯爵夫妻とジェムニールの4人で、公の場に行く初めての機会が、パーティやお茶会ではなく、モーグ家の葬式だということに、私は小さく震えた。
ーーゲームの物語どおり・・・。
『ギーヴィスト=フィン=モーグは若くして、両親を失い、学院在学中の16歳で、侯爵の地位を継ぐ』
『ギーヴィストは両親の秘密、義務で産み育て愛されてなかったことを、二人の死で知ることになるのだ』
『傷ついたギーヴは学園に入園しない』
そのことが彼が隠れキャラになる要因の1つとなる。
葬儀で会ったギーヴィストは確かに暗く沈んでいた。
「大丈夫?・・・まだーー傷ついてる?」
ーーもう傷ついてる?まだ傷ついてる?傷ついて学園には入学しないの?
私は確かめたくて仕方なかった。
だって、もしギーヴが傷ついたまま、学園に入園しなければ。
『結末はお前が選ぶのではないーー神が定めた存在が選ぶのだ』
そう言ったのは、人ならぬ存在、黒髪の騎士だ。
『お前が足掻こうと足掻くまいと、〈神の遊戯〉は進む』
ーー私がどんなに頑張っても、ゲーム通りに進む。
そう聞けば、この世界の〈エルバーラ〉として頑張ってきたことが全て無意味なことのように感じる。
抗えない世界の強制力に失望する反面、〈私〉にとっては、3人が必ず助かるならば味気ない人生も受け入れてみせる、と考えさせられるような、そんな返答だった。
『じゃあ、私が何もしなくても、〈神の遊戯〉どおりに現実が動いて、〈契約〉は達成できるということ?』
『そうであるならば、私はここに居らぬ』
ーー〈契約〉を改変しうる存在、イレギュラー。
〈私の契約〉に干渉しようとしたギーヴの行動は〈神の遊戯〉に含まれるものなのか、それともイレギュラーな存在ゆえの行動なのか。
ーーそれに、この〈契約のペンダント〉をエルバーラが持つこと自体、イレギュラーなはずだ。
『神は意味あるものを好む』
曖昧な言葉、曖昧な法則だ。
ーー同じように〈神の遊戯〉を変えうる存在、イレギュラーが存在するのか。それとも神が〈遊戯〉を改変しうるイレギュラーな行動を〈許す〉のか。
はっきりとした答えを与えられないまま、黒髪の騎士は〈契約の遵守〉だけを念押しして去った。
だから私は、葬儀でギーヴとジェムニールお兄様との会話に無理やり割り込んでまで、聞いたのだ。「ギーヴは学園に通わないの?」と。
「うん・・・僕も学園行きたいよ!お祖父様に頼んでみる」
ギーヴがそう答えた時、僅かな改変ぐらいは起こり得るのではないかと思った。
だってすでに〈私〉というイレギュラーが存在しているのだから。
だがーー。
ギーヴはやはり学園に入園しなかった。
そして〈私〉の光魔法は、ガルーダに封印されてしまう。
そして始まる〈乙女ゲーム〉の前ふりエピソードーーシャルモン殿下とエルバーラの仲に亀裂が入る最初の事件が、起こるのだった。
エルバーラの視点は、ギーヴの行動の裏話になるので、暗いし入れ子で分かりにくい話なので、読み飛ばしても大丈夫ですので。




