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25.炎使いにはマントを

「でっけえ……」

 危機的な状況にもかかわらず、思わず声に出してしまった。


 俺の二倍はあるだろう身長に、全てを射抜くような鋭い視線。大きな口の中には視線と同様に鋭利な牙が生えていた。


 黒光りした皮膚は鋼のように固そうで、どんな攻撃も跳ね返せそうだ。


 背の高い野郎は序盤に出てくる場合は雑魚キャラと決まっているが、こいつはどうなんだろうか。たまになかなかの強キャラがでてくるからな。

紅蓮弾マグナム・ガン


 全身から赤い光を放出してきた。ドロドロとマグマのような液体が一直線に五人の方へと向かってくる。凄まじい熱気が全身を襲きた。

「ちょ……」


 直撃したら死んじまう。俺は咄嗟に体を動かし、右方向へと回避する。それに続いてアイルン、フォウズフォウンヌも同じく回避を図るが、ウンケルだけがその場で硬直していた。


「……あっ。あっ……」

「あのバカ!」


 選択し③の【味方を操作】でウンケルの体を強引に操る。

 あと一秒というギリギリのところで、どうにかウンケルを炎の弾から回避させる。


「あ、ありがとうございます……俺さん」

 大粒の涙を流しながらウンケルは俺に抱き付いてきた。やめろよ。この緊迫とした場でこういうことしたら、照れちゃうだろぐひいいいい。


「ふん。次はそうはいかんぞ」

 炎の弾は壁に直撃し。大きな当たり一面を溶かし始めている。液状となった壁を見ていると、俺達もあの攻撃を避けていなかったらこうなっていたんだなと考えてしまう。


 不意に、全身から鳥肌が立った。死への瞬間が急速に近づいた気がした。

「……どうする竜二郎? 何とか、魔力を溜めるタンク封じる手はないか? 場所は返られたけど、サングラスで見ればお前ならまた攻略できるだろ?」

「どうだろうか……」


 俺はサングラスをかけ、相手の魔力と、それを溜めるタンクを可視化させる。

 魔力のタンクは、右手の五指に全て集められていた。前までの両肩両足腹部とはかなり範囲が狭くなっている。魔力の速度もかなり早い。


 五つの指を正確に叩くのだけでも至難の業だ。相手の魔法を封じるには、そこから更に高速の魔力のリズムに合わせるという技術が要求される。

 そんなこと、世界レベルの音ゲーマーでも無理だ。

「……」


 目を瞑り、思考を開始する。

 敵は炎を使う魔法使い。

 対して俺等は無力な五人組。

 先へ突破するにはこいつが持っている鍵を奪わないといけない。

 周りにあるのは机と椅子だけ。


 こんな展開のゲームが今までなかったか?

 仲間を守りながら、不利なフィールドで炎使いを倒す展開のあるゲームを、俺は地球でプレイしてきたはずだ。


 あのゲームは……確か。

「……おお。でもな、これは危険な賭けだ」

 思い出した。これと酷似しているゲームを、俺はやったことがある。

 ゲームの名前は【セルヘムの希望達】という見ての通りセルヘムという国が舞台のゲームだ。


 圧倒的な敵を前になす術を無くした主人公が出した武器は、確かどんな攻撃でも三回だけ跳ね返すことができる【ベクトル・アクション】というマントのような武器だ。

「そうか……」


 俺は静かに呟くと、完全武装で(オールウェポン)で復元をする。敵に気付かれぬよう、復元した黒色のマントをポケットに入れた。


「まあ、次はもっとでかい攻撃をしよう。これで貴様らも終わりだ」


 先程よりも大きい規模の光の弾が放出された。熱量も桁違いだ。直に触れていなくても火傷をしてしまいそうだ。

 しかし、俺はその光の弾の方へと悠然に走る。確かにこの攻撃は恐ろしいが、俺が今から出す武器にとっては格好の餌食でしかない。


「自分の攻撃にやられろ。いけ! 【ベクトル・アクション】」

 パラリと黒色のマントが開かれる。

 瞬間。激しい光が俺と敵の間で展開された。

 両手には、なにかを弾く感覚が伝わる。


 あのでっかい攻撃を見事跳ね返したのだ。

「……え? なんだ! この武器はああああああ!」

 見たことのない武器に驚く暇もなく、相手は自らを焼き尽くそうとする炎に飲み込まれる。


 炎にその身を焼かれ、肉も骨も跡形もなく存在を消していく。


 焦げ臭い匂いが空間に充満している。嗅いだこともない激臭が鼻を伝わる。

人間とは体のつくりが違う魔物だからこそ、このような匂いになるのだろう。生ごみを更に腐らせたような悪臭だ。


 敵の姿が肉塊と化した瞬間、天井からキュインという効果音が聞こえてきた。

「鍵?」


 綺麗なオレンジ色の鍵がゆっくりと俺の頭上に振ってきた。


「聞いたことがあります。これは代償の魔法です。自分の命の代わりに、ある道具を天に捧げるんです。そうすることで、天に捧げた道具は自分の命が尽きるまではずっと誰の手にも渡らず、守られていくと。恐らく、敵の方は自分が死なないことで、この鍵を天に隠し続けてきたんでしょう。魔王の命令のために」


 ウンケルが鍵を見つめながら解説をしてくれた。

 自分の命を天秤にしてまで守りたかったものがあったのか。

 そうまでして、どうして魔王に服従するのかはわからない。

 でも、その覚悟は敵ながら天晴だった・


「……さあ、行くぞ。あと三つの鍵を手に入れるんだ!」


 掴んだ鍵をギュッと握り、俺はゆっくりと燃え続ける炎に背を向ける。

 あと三つ。

 それは、あと三回同じような死闘をするということだ。今回はたまたま俺に軍配があがったが、いつ黒星を引いてしまうか知れたことじゃない。


 一人の死くらいで心が揺らいでいたら、こっちが死んでしまう。

次で三階は終わらせます!

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