17.逆転の兆し?
「この調子で、近々やってくる魔王軍も、倒しちゃいましょう」
「え? あれで終わりじゃねーのかよ!」
ウンケルの明るい声に、驚きのあまり無駄に声を張って質問をする。
は? 魔王サイドの攻撃ってあれで終了なんじゃないのか?
「そんなわけないでしょ。あれはただの雑魚。偵察がてら暇つぶしで私達を襲おうとしたんじゃないの? 実際、そのようなケースで被害にあった人間もいたし」
「ひっどい話だな。もう少し懲らしめてやればよかった」
ちえっと指をパチンと鳴らす。こりゃ、そんなクズを従える魔王には更なるお灸をすえてやらねばな。
「一人当たりの戦闘力とその人員から推測するに、本来なら昨日襲ってきた魔王軍の傘下がこの国を滅ぼすはずだったんだけど、竜ちゃんが皆殺しにしちゃったから、向こうの計画はかなりくるっていると思うわよ」
「でもそれって、更に強い敵が来るってことだろうな」
強い敵を倒すと、更に強い敵が向かってくる。更にその強い敵を返り討ちにすると、また強い敵が動いてくるという無限ループ。きりがなくないか。
「そうね。私が予想している通り、勇者と魔王がこれまで戦ってきた国の順番に滅ぼさないといけないという規則がるのなら、ずっとこの国は狙われ続けるでしょうね。魔王軍に」
「おいおい……ずっとだなんて無理じゃないか」
「だから、魔王が来るまで勝つしかないの。元々、私はそのつもり」
アイルンは自信満々な笑顔を俺に見せてきた。相変わらずスケールが大きい。
「俺はできれば他の国に逃げたいけどな。命がけの勝負なんてこれ以上やりたくねえよ」
げっそりとした顔でフォウズが割って入ってきた。フォウズ君、俺も賛成だよ。まだレベルも上がっていないのにいきなりボス戦とか信じられない。
これがゲームでいう負けイベントだったらなんとかなるが、この世界は現実だ。イベントではなく、負けた時には死し構っていない。
「はあ……なんだか地球に帰りたくなってきたな」
これをウンケルに聞かれると泣きながら止められるため、できる限りの小さい声で呟く。
他人に気を使わないといけない点がオンゲそっくりだ。これがオフラインだったらシステム外とみなされて無反応で済むというのに。
「ん?」
オフラインゲームで思い出した。今回の戦いで得た経験値は、当然 完全武装に蓄積されているはずだ。今度はどんなアイテムが追加されているのだろうか。
「ウソだろ!」
追加されていたのは武器の欄だけだったが、とんでもない数だった。
麻痺弾百個。毒薬百個。計二百もの武器が加わっている。しかも、俺が欲しがっていた以上効果が出る種類のアイテムだ。
「きたな……勝てる」
俺自身はこんなアイテムに頼らなくと、も地球で扱ってきたゲームの道具を完全武装で復元すれば問題ない。
しかし、復元できるものは一つだけという縛りがあるから、チーム全体で共有できないのだ。
地球での武器は無理だが、これはみんなで分けて使えることができる。
魔族の体に、こんなものが効くのかは――昨日やり合った魔王の傘下の将軍には効いたがあれは地球のゲームの武器であって、この世界の麻痺弾ではないからわからない――、定かじゃないが、魔力を管理するタンクなら話は別だ。
刃に毒薬、弾丸に麻痺弾を装填すれば、俺等は確実に勝てる。
「みなぎってきたあああああああ!!」
バカみたいな雄たけびを上げる。このテンションは、初めてゲームをクリアした時と同じ感覚だ。
「どうしたんだよ気持ちわりい」
フォウンヌがゴミを見る目でいった。女の子に言われると胸がドキドキするけど、野郎に言われると本当にそう思われている気がして傷付き、そしてむかつく。
「魔王軍を駆逐できる武器を手に入れたぞ! さっそく会議だ。作戦を練ろう」
「本当なんですか!」
二パアと笑うウンケルに、俺も笑顔で首肯する。
「ああ、相手の急所にこれを当てれば、もう余裕よ」
確実とはまだ断言できないが、可能性は間違いなく高い。下手に切って攻撃をするよりも、一気に片をつけてしまった方がいいに決まっている。
まあ、オフラインではレベリングのためにコツコツ倒すのが決まりだが。
色々課題はあるが、一応安定した戦いができそうだ。
ーー魔王サイドーー
「なるほど…」
小型の監視カメラで、彼の動向を探っていた。口から放たれる言動や、その仕草をじっと凝視している。
そのかいもあって、わかったことがいくつかあった。
まずひとつ、彼等に結構危険な武器がてに入ったということ。
ただでさえ我等が魔王軍の肝である魔力の弱点が割れているんだ、そこに麻痺やら毒などの要素が加われば魔法よりも恐ろしいものになる。
速やかに対処するしかない。
そして、もうひとつわかったことがある。こちらのほうが、我々には大きかった。
「彼は……地球と言う星から来て、しかも帰還を願っているのか」
ひとりでに、嗜虐的な笑みを漏らす。
ならば、お望み通り帰らせてやろう。




