葉桜も桜
やる事のない2週間を、ぶちぶちと愚痴りながら過ごしておりました。
ミラーランゲージと言うそうですが、英語と日本語を鏡合わせよろしく同起源の言語だと言って、英語教育のあった高校生の時分に喜んでいたりしませんでしたか?「so」と「そう」とか、「name」と「名前」、「owe」と「負う」とか、そんなやつです。英語が分からんから、こういう事をやったんです。清水義範という人の小説作品で認出来るのですが、作品発表当時のリアル高校生つまり私たちは、本当にそんな事をやって遊んでおりまして、「プロの作家が俺たちと同じ事をやっとる」と思ったものです。ああいえ、世の中には、「呉須色」といって、オオタカの背中みたいに見えなくはない色があるんですが、御存知でしたか?「蒼鷹」と書くくらいですから、本当にそんな風に思えてきます。いや、本当にあるんですよ。日本語で「同輩」と言いますが、同意語で「友烏」とも言う。おお、これは「Friends」のことだ、日本語でも「S」を付けて複数形にしとるがね~(!)とか?
つまり、清水義範さんというのは愛知県の人でして、当時の話ですが「東の千葉、西の愛知」と言われたくらい管理教育がキツかったのが私らの世代でした。もう記憶の中だけくらいの話になってしまいましたが、他校でこの人の本を読んでいる生徒にぶち切れた生活指導の教師が(「低俗な!」とか、そんな理由だったみたいですが、そういう性質の本ではないよ)、この人の本を取り上げて焼却炉に放り込んだという事件が報道された事があったのです。「俺の書いた本が郷里で焚書にあっている」とか、そんなコメントを本人が残した事に、私の記憶の中ではなっております。あの頃は、思い返してみても暗い時代でしたね。
夢というのは願望か妄想か、大概は記憶の整理を脳がやっている間に発生する泡みたいな物だと思っておりますが、薬の影響か目覚めても記憶に残っている夢をちょくちょく見る様になったのは、以前にも述べたとおりです。なんでだか私はホラー映画にでも出て来そうな清潔な洋風の部屋を借りて暮らしておりまして、どうしてだか蛙を飼い始め柴犬を飼い始め、周囲にばれない様に管理しておりました。ある雨の気配のする日、薄暗い夜、ふと気付くとみんな何処かに行って居ない。どうにも見付けられない。私は、「あたりまえのことだ」と呟きながら、そいつらを探して外に出てウロウロしているところで、目を覚ましました。未明、暗闇の中、繋留されている鷹の尾羽に結ばれた鈴板がカタカタと揺れる音が聞こえました。
――――――私は、現状を把握しました。
大した話ではないのです。大きな手術は回避してしまいましたが、原因療法が出来るでなし、毎月皮膚科に通う度に、薬がちっとも減らないまま、急性間質性肺炎の増悪により「今月死ぬか来月死ぬか」という話を聞かされます。皮膚筋炎にも色々あるのですが、私の抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎というのは、そういうことになっている膠原病なのです。体調としてオカシイ所はないのですが、検査の数値は危険レベルのまま下がらずに、気が付けば半年なんかとっくに過ぎてしまいました。血液腫瘍内科の医師たちは「20年くらいは生きる」と口を揃えて言いますが、これはトラブルの中身が腫瘍だけだった場合の話です。受診科が違うだけで、これほどの温度差が生まれます。
私は未練たらたらで鷹だけは手放さずにやっておりますが、犬や猫を飼うのは諦めております。昔の野島伸司作品の中で、「猫は誰でも飼える。犬は駄目だ」とやっていたものがありました。「常に愛を欲しがるからだ」というのです。言い得て妙だなと思ったので覚えているのですが、アタッチメントの強い傾向のある生き物ほど、飼い主が変わると、よろしくないのです。猫だって大概ですが、犬は顕著にそういう事があります。また、私が好んで飼う犬種が、そんなのばっかだったのです。主に北海道犬ばかり30年以上飼い続けておりましたので、今さらそうでない犬を扱う気にならない。いえ、毎月途中でリタイアする可能性について言われ続けて1年以上になりますから、ちょっと犬だけは飼う気になりません。
種明かしをしてしまえば、蛙というのは、その気になれば手の平に乗る小さなカップでも飼える生き物です。毎日、中にある水を入れ替えるだけでかなり衛生的に飼えないことはない。今どき北海道犬は稀少犬種で、入手難易度の低い日本犬と言ったら柴犬です。病的と言われても仕方がない、清潔な環境で過ごさねばならなくなったのは私の事情。理屈から言えば、皮膚筋炎の患者は夜なら犬の散歩をしてもいい。暗くなかったら外にも出られない。そんな情報が夢になって現れたらしい。そういう話です。
ステロイド誘発性精神障害といいますが、私に言わせれば「ステロイド誘発性脳障害」です。減薬につれてましに成ったのは自覚しているものの、解消した訳でもなく、長期使用によって「どうしても」現れてしまう。その一例が、こういう夢の記憶なんです。「脳」のトラブルです。脳の働きに影響が現れた事による障害であって、精神病とは違うところがミソなんですが、本当にくだらないでしょう?駐車場に駐めた車の位置が車から離れて3分もしたら思い出せなくなるとか、長年当院を利用している方で顔は分かっても名前が思い出せないとか、初期の痴呆症の症状みたいな異常を頻繁に体験します。味覚の異常と同じで、気付いてしまう異常だから厄介です。ああいえ、昔、もう亡くなってしまった老獣医の所でよく似た話がありまして、私は当時亡くなった後の片付けを手伝っているのですが、その時の経験から薬の箱などに用途や薬用量が書き込まれる様に成りました。いえ、私、その方に「追い付いて」しまいましたわ。
シロツメクサならぬムラサキツメクサです。
参考文献
清水義範, 蕎麦ときしめん, 講談社, 1989
清水義範, 国語入試問題必勝法 新装版, 講談社, 2020
←私が学生の頃に読んだのは,この2冊だったみたい.




